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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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415部分:第三十三話 孫策、山越を討つのことその十一


第三十三話 孫策、山越を討つのことその十一

「読ませて頂きました」
「降伏するなら命は奪わないわ」
 まずはこのことだった。
「そして貴女達の風俗文化は一切禁じない」
「読ませてもらいました、それも」
「そしてね」
 孫策はさらに話した。
「貴方達は今度揚州に入り」
「そうですね」
「そして私が治める中に入れられるけれど」
「領地や財産もそのままだと」
「奴隷は解放してもらうけれどね」 
 それはだというのだった。
「私そういうの嫌いだから」
「承知しています」
「他の財産には一切手をつけないわ」
 そしてこうも話した。
「保障するわ」
「では」
「ええ、降伏を歓迎するわ」
 ここでまた微笑んでみせる孫策だった。
「宜しくね」
「御願いします」
 こうしてだった。山越族は孫策の陣営に加わった。孫策は父孫堅以来の宿願である彼等を下すことをだ。遂に果たしたのであった。
 戦後処理も終え建業に戻る。その時だった。
 周泰がだ。周瑜に対して尋ねた。
「あの」
「あのことか」
「はい、あの頑固な山越がです」
 周泰はその山越が実に容易に下ったことが信じられなかったのだ。それで今も周瑜に対して尋ねるのだった。どうしてもわからずにだ。
「ああも容易に」
「政だ」
「政といいますと」
「戦もまた政なのだ」
 こう話す周瑜だった。
「ここではそれを使ったのだ」
「といいますと」
「つまりだ。戦に勝ったな」
「はい」
「そしてそのうえで本拠地の城を取り囲んだ」
 それが第二の策のはじまりだったのだ。
「そのうえで敵に心理的圧迫を加えた」
「そして」
「そうだ、敗れた敵にそうしてだ」
 追い詰めたというのだ。
「これで敵は追い詰められるな」
「そうですね。困り果ててしまいますよね」
 周泰もこのことはすぐにわかる。
「本当に」
「ただでさえ飛翔と藍里が以前から戦の用意をしていたしな」
「あれも策のうちだったのですか」
「攻める動きを見せて敵の心を働かせたのだ」
「働かせた」
「休ませずにだ。それで疲れさせたのだ」
 そうしていたと。周瑜はまた話した。
「そこまでしてだ」
「そうして」
「寛大な条件を出す。これで話を決めたのだ」
「つまり私達は今回は山越の軍を攻めたんじゃないんですね」
「心を攻めたのだ」
 周瑜は断言した。
「それが我々の策だったのだ」
「成程、随分と深い策だったんですね」
「そういうことだ。我々はそれで勝った」
「ううん、深い戦いだったんですね」
「その通りだ。戦で兵や城を攻めるのはだ」
「はい」
「それは下策だ」  
 まさに孫子であった。
「しかし人を攻めるのはだ」
「上策なんですね」
「人の心を攻めることはだ」
 まさにそれだというのである。
 
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