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ライフワーク

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第一章

           ライフワーク
 フェリペ=カサロヴァは連合のパラグアイで生まれ育ってきている漫画家だ。彼はあるサイトに小説を書き続けている。これまで幾つかの作品を書いていたがその中でもそのサイトに執筆をはじめた時から書いている作品がある。 
 その作品についてだ、カサロヴァはよく友人達にこう言っていた。
「もうこの作品は僕自身というか」
「かなり大事な作品だね」
「もう命と言っていい」
「そこまでの作品だね」
「まさに」
「ライフワークだよ」
 カサロヴァはこう言うのだった、褐色の肌にラテン系の明るい彫のある顔立ちで髪の毛は赤く縮れた毛だ。サイトの広告収入とは別に本職の酒屋でいつも力仕事をしているので背は連合では普通位だが筋骨隆々としている。目の色は濃い灰色だ。
 その彼がだ、友人達にその作品について言うのだ。
「漫画を描きはじめた時から書いていてね」
「今も書いていて」
「結婚をして家庭を持っても書いていて」
「随分長いね」
「中学の時からだからね」
 その執筆をはじめたのはだ。
「一年も」
「もう二十年か」
「本当に長いね」
「ウェブ漫画でも相当に長いよ」
「途中で作者が放り出す作品も多いのに」
「フェリペのあの作品は違うね」
「二十年描き続けている」
「凄いよ」
「若しもだよ」
 カサロヴァはこうも言うのだった。
「あの作品が終わったら」
「ワイフワークが終わったら」
「その時は」
「もう漫画を描かないかな」
 そうなるだろうというのだ。
「多分だけれどね」
「そんな作品なんだ」
「君にとってはそこまで大きいんだね」
「二十年以上も描いている」
「じゃあその作品を描き終わったら」
「完結したら」
「もう描きたい作品は全部描いた感じだし」
 このこともあってというのだ。
「描かないかな」
「漫画を描くのを止める」
「そうするんだ」
「多分ね、まあ終わるまでは」
 二十年以上も描いているその作品も必ず終わる時がある、その時はというのだ。
「まだ時間があるから」
「それじゃあだね」
「まだ漫画を描くのは止めないんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、まだだよ」 
 その時はというのだ。
「描き続けるよ」
「うん、じゃあ描いていくんだ」
「最後の最後まで」
「そうするんだ」
「そうするよ、僕はね」
 自らライフワークだという作品を描いていくというのだ、そう話してそのうえでだった。彼等は。 
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