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タガメ

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第二章

「昔はね」
「そうなんですか」
「ただね」
 それでもとだ、枝織はさらに話した、
「その田んぼにもね」
「今はですか」
「いないわね」
「タガメは」
「タガメ以外の虫もね」
 微妙な顔は変わらない。
「水にいる虫は」
「ええと、ミズカマキリとかタイコウチとか」
「そうした虫はね」
 水生昆虫達はというのだ。
「山の虫は一杯いても」
「カブトムシとか」
「山の方にはいても」
「水の虫はですか」
「先生が子供の頃にはもういなかったわ」
 夏樹に残念そうな顔で話すのだった。
「悪いけれどね」
「あの、お水が奇麗になれば」
「そう、そうした虫は奇麗なお水が好きだから」
 両親と同じことをだ、枝織も話した。
「そうなればね」
「僕達もですね」
「見られるわよ」
「タガメが」
「他の虫達も」
「そうよ、ミズカマキリとかタイコウチもね」
「それじゃあ街のお水を奇麗にすればいいですね」
 夏樹は家で両親に言ったことと同じことをだ、枝織にも言った。
「そうですね」
「それはそうだけれどね」
「じゃあ街のお水を奇麗にしましょう」
「難しいわよ」
 枝織は眉を曇らせてだ、夏樹に答えた。
「実際にそうするとなると」
「そうなんですか」
「六道君だけじゃね」
 現実からだ、枝織は話した。夢ではなくそちらから話した方がいいと思ってそれでそうしたのである。この辺りは彼女mの判断だ。
「それこそ街全体でしないと」
「街で、ですか」
「そうしないと駄目よ」
「街でそうするにはどうすればいいんですか?」
 夏樹は諦めなかった、最初からその考えはなかった。それでこう問うたのだ。
「僕が」
「そうね、市長さんになれば」
「市長さん?」
「この街で一番偉い人よ」
 枝織は夏樹にわかりやすく話した。
「その人になればね」
「街を奇麗に出来ますか」
「そうなの」
 実際にというのだ。
「それが出来るわ」
「じゃあ僕市長さんになります」
 すぐにだ、夏樹は枝織に言った。
「そうなります」
「じゃあ市長さんになって」
「はい、僕この街のお水を奇麗にして」 
 目を強く輝かせてだ、夏樹は枝織に言った。 
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