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嗚呼三十三対四

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第七章

 藤川を降板させ桟原を送ったがロッテの攻撃は止まらなかった。
 西岡がさらなる追加点を挙げ堀が四球で出て再び満塁となった。
「また満塁かいな」
「敵のラッキーセブンやないかい」
「それで今度は福浦かいな」
「あいつ首位打者獲ってるしな」
「しかも一発あるで」
 そうしたバッターだ、ロッテの中心打者の一人である。
 そしてその福浦がだ、阪神にとってはよりによって。
 ホームランを打った、日本の虎党達は声にならない悲鳴をあげた。
 この回一挙七点だった、甲子園のスコアボードのその点数を観て思うことは。
「七回で七点やな」
「めっちゃ大きいな」
「相手は面白い位に点入るわ」
「こっちは一点か零点ちゅうのに」
「また打たれて」
「こっちはさっぱりや」
 流石にこの時は落胆した、そしてロッテの先発小林は六回を一失点に抑えてだった。 
 ロッテの伝統である見事な中継ぎ陣、阪神のそれにも匹敵する面々が次々に出てだった。阪神打線を抑えたのだった。
「小野、藤田、薮田かいな」
「ストッパーの小林雅出すまでもないか」
「この点差やしな」
「どうにもならんかったわ」
「また負けたわ」
 それこそというのだ。
「ロッテは三試合連続二桁得点かいな」
「シリーズ記録らしいで」
「対するこっちは二十五イニング得点なし」
「兄貴全然打ってくれんし」
 何とノーヒットのままだ。
「三連敗か」
「甲子園でも負けたな」
 ここまでは意気消沈だった、だが。
 流石は阪神ファンだ、彼等はすぐに気を取り直して言った。
「いや、やれるな」
「そや、こっから四連勝すればええんや」
「昭和三十三年の西鉄の再現や」
「六十一年の西武もそやったな」
 ここであの忌まわしい日本のスポーツ界ひいては全人類の永遠の敵である巨人の名前を出さないのは阪神ファンの矜持だ、何が侍ジャイアンツなのか。王者の風が俺を呼んでいるなぞ変節感も甚だしい。戦後日本はこの様なチームが正義であったことにその倫理観のどうしようもない腐敗が出ていると言える。
 その巨人の名前は出さずにだ、彼等は言うのだった。
「ロッテは十点しか取れへんしな」
「そやな、たった十点や」
「十点しか取ってないわ」
 彼等はこのことに気付いたのだ。
「たった十点しか取ってないしや」
「こっちは十一点取ればええ」
「そして勝ったたらええんや」
「兄貴もそろそろ目覚めるわ」
「そうした四連勝や」
「わし第七戦のチケット買ったで」
 マリンスタジアムで行われるそれのというのだ。 
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