老将
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第七章
「どうしても」
「そうしたタイプやな」
「はい、けれどです」
「優勝出来るチームにやな」
「していくことは出来ます」
「そやな、根本さんはそうした人や」
中内もそれがわかっていてというのだ。
「そやから監督にした」
「ダイエーを優勝するチームにする為に」
「急に優勝してもそこまでやったらな」
経営者としてだ、中内は話した。
「何にもならん、それこそ西武みたいにや」
「長い間優勝出来る」
「そうしたチームになってこそや」
そう思ってというのだ。
「根本さんに来てもらった。そして」
「はい、いよいよです」
「優勝狙えるか」
「時は熟しました」
根本は中内に確かな声で話した。
「今年はやってくれます」
「遂にうちが優勝か」
「人材が揃いました、王君がやってくれます」
「王君には晴れ舞台が似合うしな」
「わしはその下地を作るのが似合います」
「そういうことやな」
中内はまた笑ってだ、根本に応えた。
「ほな今年はな」
「期待していて下さい」
根本も中内に約束をした、これは一九九九年のことであった。だがこの年に残念ながら根本は。
急死してしまった、実の父の葬儀の時も泣かなかった気丈な王がだ。
泣いた、そして葬儀の後で選手達に言った。
「根本さんの為にだ」
「はい、優勝しましょう」
「今シーズンこそは」
「何があっても」
「そうしましょう」
「皆このチームに呼んでもらった」
王自身もだ、このことを自覚して言うのだった。
「ダイエーにな」
「根本さんに」
「そうしてもらったからこそですよね」
「根本さんの為に優勝しましょう」
「あの人が俺達をここに呼んでくれたんですから」
「根本さんは今年は優勝だと言われていた」
王は選手達にこのことも話した。
「なら絶対にだ」
「根本さんに優勝見せてあげましょう」
「絶対に」
「そうしてみせましょう」
「そうだ、やってやるぞ」
王自ら言ってだった、根本の遺影をベンチに飾りながらシーズンを戦った。このシーズンダイエーは勝ち進んでいき。
見事優勝した、その胴上げの時もだった。
選手達が交代で根本の遺影を掲げた、誰もが根本を讃えていて彼に捧げる優勝だと思っていた。
ダイエーは中日との日本シリーズにも勝ち日本一となった、王は日本一となってから言った。
「巨人にいた時はなれなかったがな」
「そうでしたね、あの時は」
「残念ですが」
「ダイエーでなれた、私が監督として日本一になれたのは」
まさにというのだ。
「根本さんのお陰だ」
「前にあの人が監督で」
「そしてフロントにいてくれてですね」
「チームを築いてくれたから」
「だからですね」
「そうだ、本当に根本さんのお陰だ」
王は心からこう言った。
「あの人がいてくれたからだ」
「若し根本さんがいなかったら」
「今のダイエーはないですね」
「そうだ、絶対になかった」
王は断言した、福岡において。
根本睦夫招聘がダイエーを優勝させ親会社がダイエーからソフトバンクになっても強豪であり続けられているのは根本招聘からだと言われている、彼がダイエーの監督になった時多くの者はもう年寄りではないかと思った。だがその年寄りが強豪チームを築いた。このことは球史にある通りだ。全ては一人の老将からはじまった。
老将 完
2016・12・24
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