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猫可愛がり

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第三章

「だから太ってもいいけれど太り過ぎにならない様にね」
「せめてなのね」
「そうしないといけないのね」
「そうしましょう、とはいっても」 
 目の前のソファーで寝ている猫達を見てだ、真澄は苦笑いになって言った。
「難しいかも知れないわね」
「太り過ぎにならない様にするのも」
「そのことも」
「だって甘やかすことに変わりはないから」
 だからだというのだ。
「そうなることもね」
「一応お父さんに言ってみる?」
「そうする?」
 娘達はこうも言った。
「ここは」
「そうしてみる?」
「そうね、一応そうしてみようかしら」
 真澄も娘達の言葉を受けて言った。
「多分変わらないと思うけれど」
「一応ね」
「そうしてみよう」
 娘達はまた母に言った、そして佳正が家から帰るとどうしたものかと実際に話をした。だが佳正は真澄の予想通りのことを言った。
「今のままでいいんじゃないか?」
「やっぱりそう言うわね」
「確かに太り過ぎはよくなけれどな」
 猫にとってもだ、佳正もこのことはわかっていた。
「けれどな」
「それでもっていうのね」
「別に猫達も困ってないだろ」 
 そのミミ達を見ての言葉だ、食事を摂りながら真澄と話をしているがそのテーブルのところに来て三匹共テーブルの上で丸くなっている。
 その猫達を見つつだ、妻に言うのだった。
「多少太り過ぎになっても」
「だからいいのね」
「確かに三匹共太ってきたけれどな」
 だがそれでもというのだ。
「太り過ぎになってもな」
「いいのね」
「そう思うけれどな」 
 ここでミミの腹を触る、するとすぐに前足を出してきて主の手を軽く引っ掻いてきた。
「僕は」
「やっぱりそう言うのね」
「あまり太り過ぎたら問題だけれど」
「普通の太り過ぎなら」
「別にいいじゃないか」 
 ミミは今度は噛んできた、だが佳正はそのミミを笑顔で見つつ妻に話した。
「それ位は」
「やれやれね」
「甘やかしてもいいじゃないか」
 挙句にはこう言った。
「そうしても」
「本当に猫に甘いんだから」
「だって好きだから」
「そういうのを猫可愛がりっていうのよ」
「ははは、文字通りに」
「そうよ、何処まで猫が好きなのよ」
 呆れた笑顔でだ、真澄は夫に言った。
「じゃあミミもペコもシロもなのね」
「太っていてもな」
 太り過ぎてもというのだ、ミミの前足の肉球を触りつつの言葉だ。
「いいじゃないから」
「猫だからなのね」
「特別に悪いことをしなくても」
「それでその特別に悪いことをしたら?」
「ちょっと怒るさ」 
 その場合はというのだ。 
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