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魔法少女リリカルなのはエトランゼ(異邦人) 再構築

作者:南條 綾
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2部 P・T事件
4章 海上決戦
  突入

 一方、なのはとフェイトの戦いを見届けた
リンディ、クロノ、エイミィたち管理局メンバーは、先ほどの攻撃から一気に騒がしくなっていた。

「ビンゴッ! 尻尾掴んだ!」

「座標は?」

「もう割り出して送ってるよ!」

 クロノはもらったデータを見つめる。
今回の事件の元凶であるプレシア・テスタロッサの居場所である《時の庭園》の座標が記されていた。
クロノは視線をリンディ・ハラオウンへと向ける。
リンディはクロノの視線に頷きを返し、声を上げる。

「武装局員、転送ポートから出動! 

任務はプレシア・テスタロッサ、及び、ゼロの身柄確保です!」

「はっ!!」

 リンディの言葉を聞き、部下の局員達が時の庭園へと転移し、内部へと突入していった。

「第二小隊転送完了。続いて、第一小隊突入開始」

 ブリッジ内、オペレータが現状を伝える声が響く。
リンディがオペレータの報告を聞きながら、そう考えていると、
ブリッジになのは、ユーノ、フェイト、アルフの四人が入ってきた。
なのははバリアジャケットから普段の制服へと着替え、フェイトはぼろぼろになったバリアジャケットから囚人が着るような真っ白な服を着ており、
両腕には念のためにと手錠がされていた。

「お疲れ様。それからフェイトさん、初めまして」

「…………」

 しかし、フェイトは待機状態へと戻ったバルディッシュを握り締め俯いたまま、何も答えない。
その反応にリンディは少しだけ悲しい表情をすると、映し出されているモニターを見ながらなのはへと念話を送る。

[流石に母親が逮捕されるところを見せるのは忍びないわ。
なのはさん、どこか別室へフェイトさんを連れて行ってもらえるかしら?
綾さんは医療室で治療を受けているから]

[あ、はい]

 リンディの言葉に、なのはがフェイトを連れ出そうとしたが、それとほぼ同時に、管理局員たちがプレシアのいるところに着いてしまったのだ。

「総員、玉座の間に進入! 目標を発見しました!」

 なのはたちがブリッジから出て行く前にオペレータから報告があり、リンディは僅かに表情を歪めるが、もうフェイトが出て行くことはないだろうと思い、モニターへと意識を集中させる。

「プレシア・テスタロッサ。
時空管理法違反、及び、管理局艦船への攻撃容疑であなたを逮捕します!」

 プレシアを捕縛に向かった管理局員の一人が、そう言い放った。だが、プレシアの表情に変化はなく、椅子に深く腰掛け管理局員たちを静かに見つめていた。
管理局員たちは、そんなプレシアの態度に警戒しながら辺りの捜索を行っていった。
そして、管理局員たちはある一室へと足を踏み入れると、そこには――

「こ、これは……!?」

 それを見つけた管理局員の一人が声を上げる。
皆、一様にそれを見て、おどろいていた。
 
「……えっ? あれは……」

 フェイトは驚きに目を見開き、モニター越しに映っている。
自身と姿が瓜二つの少女を見つめる。
全てにおいてフェイトと瓜二つである少女の違うところは、
培養液に入っており、目を閉じ、眠っているかのようであった。

「ぐはっ!?」

 フェイトが呆然とモニターを見つめている中、
その培養液に触れようとした管理局員の一人が叫びとともに吹き飛ばされた。

「私のアリシアに近寄らないでっ!」

 それは、先ほどまで黙っていたプレシア・テスタロッサ、その人だった。
今までの表情が嘘であったかのように、管理局員たちを憎しみを込めた瞳で睨みつけていた。
そんなプレシアに、管理局員のリーダーが声を上げる。

「ちっ、まだ抵抗するのか。今の攻撃を敵対行為とみなし、少々荒っぽいが、魔法で気絶させて連れて行く!」

 その声と同時に、他の管理局員たちがデバイスを一斉にプレシアの方へと向ける。
そして、魔力弾が一斉にプレシアへと放たれたがプレシアの防御を貫けず
逆に跳ね返されたように武装局員は衝撃を食らった。

「がはっ!?」

「ぐはっ!?」

「――エイミィ、すぐに局員達を戻してちょうだい」

「了解ですっ!」

 局員たちが無残にやられてしまう光景を見て、リンディは僅かに表情を歪めたが、艦長として気丈に指示を出した。
エイミィはリンディの指示通り、
すぐさま局員たちを転送し、アースラへと帰還させた。
すると、今まで黙っていたプレシアが培養液で
眠っているようなアリシアを愛おしそうに見つめながら口を開く。

「もう駄目ね、時間が無いわ。
たった九つのジュエル・シードで
アルハザードに辿り着けるかわからないけどでも、もういいわ・・・」
淡々と、皆に聞かせるようにプレシアは話を続ける。

「この娘を失ってからの暗鬱な時間も、そして代わりの人形を娘扱いするのも・・・」

「っ!?」

 プレシアの言葉を聞き、フェイトはびくりと体を震わせる。
なのはもはっとした表情となり、
プレシアの言葉を聞くフェイトを心配そうに見つめる。

(やめてよっ! それ以上は、やめて……っ!)

 なのはは心の中で叫ぶが、それでプレシアが話を止めるはずもない。

「聞いていて? あなたのことよ、フェイト。せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ……」

 プレシアの言葉に、フェイトは辛そうに顔を俯かせ、カタカタと震えていた。
目に涙を溜め、フェイトは思考の暗闇へと落ちていく。それでも、プレシアは話すのをやめない。

「やはり駄目ね、結局上手くはいかなかった。
失ったものの代わりにはならなかった」

 プレシアの言葉に、なのはの表情は悲しみに歪み、
クロノの表情は隠し切れぬ怒りが浮かんでいた。

「だから、あなたはもういらないわ。どこへなりとも消えなさい」

「っ!?」

 堪えきれなくなったフェイトは、その瞳から涙を零した。
その体は震え、顔色までも青くなっていっているように感じられた。

「っ!? お願い、もう、やめてよっ!」

 フェイトが苦しんでいることがつらく、なのはも瞳に涙を浮かべながらプレシアへと叫びを上げる。
だが、プレシアは話すことをやめず、止めとなる言葉を紡いでいく。

「ふふふ、いいことを教えてあげるわ。
フェイト、私は、あなたが大嫌いだったのよ」

 プレシアの言葉を聞き、フェイトは手に持っていた待機状態のバルディッシュを持っている力もなくなり、それを地面へと落としてしまう。
そして、その瞳からも力がなくなり、
糸が切れた人形のようにその場へと膝を着いてしまった。
 そんなフェイトへと、なのは、ユーノ、アルフが慌ててフェイトへと駆け寄っていく。
リンディは悲しい表情でそれを見届けると、モニターへと視線を戻す。
すると、そこには思わぬ表情となっているプレシアの姿があった。

「……っ!? 大変、大変! ちょっと見てくださいっ!
屋敷内に魔力反応多数っ!」

「っ!? 何が起こっているっ!」

 エイミィの声を聞き、皆がモニターを見る。そこには、
傀儡兵と呼ばれる人型機械が大量に召喚されている光景が映し出されていた。
傀儡兵はランクによって強さも決まっており
ここにいるのはAクラスの傀儡兵であった。
そのような多くの傀儡兵の姿を見たリンディたち管理局員は戦慄していた。

「屋敷内に魔力反応多数っ! いずれもAランク相当っ! その数――六〇」

「プレシア・テスタロッサ! いったい何を考えているのっ!」

 オペレータの焦った声を聞きながら、
リンディは薄く笑みを浮かべているプレシアへと叫んだ。
その声を聞き、プレシアは両腕を広げながら声を上げる。

「私たちは旅立つのよっ! 忘れられし都アルハザードへ。
そして取り戻すの……全てを!」

 すると、プレシアの周囲を浮遊していたジュエル・シードが光を放ち、強烈な魔力が放出され始めた。
その余波はアースラまで届き、艦内を激しく振動される。

「ジュエル・シードの魔力暴走です! 次元震が起き始めています!」

「ディストーションシールドを張って、速度を維持しつつ影響の薄い空域に移動しなさいっ!」

 局員の叫びに、リンディは的確な指示を出していく。

「……アルハザード、そんなものが本当にあるのかな?」

「馬鹿なことを……! 死んだ人間は甦らないっ!
どんな魔法を使ったって、過去を取り戻すことなんかできやしないっ!」

 エイミィの呟きにクロノが叫ぶ。
その叫びはプレシアへの怒りであった。。

「ゲート開いて! 僕が行って止めてくるっ!」

「わ、わかったっ!」

 そう言うと同時にクロノはブリッジから走って出て行った。
一方、なのはは未だに意識を失っているフェイトを抱きしめたまま医務室に向かっていた時に、
なのはとユーノ、アルフはクロノと合流した。

「そうか。僕はこれから現地へ向かい元凶を叩く。君たちはどうする?」

「わたしも手伝うっ」

「僕もっ!」

「アルフさんはフェイトちゃんをお願いします」

「あぁ」

「了解した。では、急ごう!」

 クロノはそう言うと同時に走り出し、なのはとユーノも慌てて後ろをついていく。
そして、クロノ、なのは、ユーノの三人は、転送ポートから時の庭園へと移動した。
そして今、なのはたちの目の前には、大量の傀儡兵の群れが門の前を固めていた。

「い、いっぱいいるね」

「まだ入り口だ。中にはもっとたくさんいるはずだ。
……それに、ゼロ
やつが現れていないのが気にかかる」

「うん、先ほども途中から消えていたんだって」

「おそらく、プレシア・テスタロッサの近くにいるのだろう。まるで黒子のように。
僕はそちらに向かう」

「でも」

「なのはには駆動炉の暴走を止めてほしい。あちらも傀儡兵が多くいるはずだから、かなり厳しい戦いになるだろう。」

「じゃ、じゃあ、行くぞっ!」

「うん!」

「行こう!」

クロノの言葉に、なのはとユーノが元気よく返事をし、
三人は魔力をチャージしながら傀儡兵に向かって突っ込んでいく。
 
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