機動戦士ガンダム0091宇宙の念
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宇宙編
月決戦編
第46話 憎しみの光
「たった今伝令が入りましたっ!!目標の座標を変更するとのことです!」
「馬鹿な!!もう発射準備はできているのだ!この機を流せというのか⁉︎」
「伝令が続きます…!目標は、基地ではなく艦隊だそうです…!グラフィー軍総司令部の座標データが送られてきます!!」
「何故そんなデータが、我が軍に…?それは確かなのか⁉︎」
「間違いありません!」
先ほどミラーパネルの展開が完了したばかりだった。
今から座標の変更となると、再び時間がかかる可能性もある。
「座標の変更にかかる時間は?」
「変更だけなら約15分程度で」
「艦隊の脱出には充分な時間だな…」
「え?」
彼は事態の筋を悟ったように目を瞑り、そして声をあげた。
「座標の変更を行う!!目標はグラフィー軍旗艦、グワンバンだ!!!」
「おい、メアリー!!しっかりしろ!!!」
虚ろな目のままのメアリーの生命レベルは次第に低下していった。
「く…フィンドラまで、あと少しだ…!」
「隊…長…」
「どうした⁉︎」
ゆっくりと手を伸ばし、肩を掴まれた。
「光が…来る。見…える…」
「光、だって?」
デブリをかわしながら、フーバーのリゲルグは加速を続けた。
莫大な推力を持ってグイグイと機体を推し進めていく。
「こちら、フィンドラ。フランクリン・フーバー少尉だな?」
「そうだ!部下が負傷している、手当の準備を頼む!」
「了解、着艦を許可する」
円形で独特な形のエンドラ級巡洋艦に着艦するリゲルグ。
「手当を急ぐ。少尉は報告を急いでくれ」
「…わかった!」
初めて訪れる艦にしては、思ったより自分は馴染んでいる。
ブリッジに向かうと、副官のジゼル大尉が艦長の椅子に座っていた。
「あなたが、フランクリン・フーバー…?」
「はっ!」
「かしこまらなくていいわ。少佐から事情は聞いています。今はわたしたちを取り巻く情勢はすこぶる悪いと」
「…っ」
フーバーは言葉を失ってしまった。
「少佐は?」
「はっ…少佐は現在、グラフィー軍旗艦グワンバン及びその艦載機と交戦中です」
「あなたの味方と戦ってるのよ?わかってる?」
「…把握しています…。それが正しいことだと判断した上で、ここにきました。それに…」
「それに?」
「大切な部下を、こんなことで無駄死にさせるわけにはいきません。部下を守るためなら、行動できました」
「部下のためであって、あくまで自分に責任はないと?」
「違います!!…いえ、責任は私が受けます。彼女に罪はありません、隊長である私に非はあります」
ジゼルはまっすぐとフーバーを見つめていた。
「その目、少佐にそっくりだわ」
「はっ…、目?」
「戦いに私情を挟むな。それが少佐の口癖だった…。それなのに、あなたを私情でもってこちら側へと引き入れた」
「…」
「覚悟がいるわよ。今日からあなたの味方はここだけ。世界の全てが敵になるわ」
「…この戦いを、終わらせるためです。覚悟はできています」
「そう。本当のようね。…地球連邦から見ればグラフィー軍もただのテロリスト。軍法会議なんてのは開かれないでしょうね。戦いを続ける以上、勝っても負けても地獄を見るわ」
「自分は、確固たる意志の上にいます。この命に代えても、戦いを終わらせてみせます」
「あなたの志は受け取りました。けど覚えて起きなさい。命に代えられるものなんてないのよ。あなたの命は、あなたの中で一番大事にしておくことね」
「はっ!」
「でなきゃ…とてもこの宇宙を生き抜いていけないわ」
「大尉!!!月の部隊からの連絡です!」
「なにか?」
「月面軌道から、多数のミラーパネルを観測したと報告が」
「ミラーパネル?…まさか…?」
「ジゼル大尉?」
ジゼルはうつむき、何かを一人でに考えている。
「だとしたら、目標はグラフィー…レーモ…いや…」
「旗艦…グワンバン…?」
「どうしたのです?」
フーバーがジゼルに問うた瞬間。
宇宙が光り輝き出したのを彼らは見た。
宙域のデブリごと、熱の光がグワンバン、MSを焼いていく。
ソーラ・システム。
太陽に炙られた機体群はみるみる爆散していくのがモニターに映し出されていた。
憎しみの光が、宇宙を焼いていくのを彼らはただ見ていることしかできなかった。
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