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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第二十三話

 
前書き
どうも、紙面上の戦いから一旦帰宅してきました。取り合えず後一週間位でペースは戻せそうです。 

 
「俺の昔話を調べる為に俺に魚雷を教えてほしいとか、理論が色々崩壊してるだろ。」
 
木曾はなかなか冷たく言い捨てた。けっこう心に来るものがある。
 
だけどな、んなことぁわかってるさ。
 
「知らねぇよんなことは。俺が雷撃がクソ程苦手なのは事実だし、それを出汁にされて摩耶さんに追い返されたのも分かる。それを元凶に助けを求めるなんてもっての他なんてこともわかってる。」
 
「……なかなか口がわりぃなぁおい?」
 
木曾は少し頭に来たようで、顎を上げて威圧してくる。眼帯と合わさってなかなか怖い。
 
だけど、怖じ気付く訳にもいかない。

「だけど、雷撃を練習しなきゃとは思ってた訳だし、そもそも俺がこんなことに巻き込まれたのは、お前が俺にこんなことを言ったからだろ?」
 
「そりゃあ……そうだけどさ。」
 
実際にあの時、今回の件を提案したのは木曾だ。さらに言えばあそこで俺が入渠しているのに入ってきた木曾が悪い。 
 
「だけど、だからといって普通俺に頼むか?他にも雷撃が得意な奴いるだろ。」
 
ほほぅ?テメェは俺にあの北上や大井に教えてもらえと?会話事態が成り立つかどうか怪しいのに。
 
俺は少し頭に来たので、俺も木曾を睨み付ける。
 
「知ったことかよ。ただ、俺はそんなことは聞いちゃいねぇよ。」
 
「あ?」
 
木曾も怪訝そうに睨み返してきた。
 
「俺はお前に雷撃を教えて貰いたい。強くなりたい。摩耶さんに勝ちたい。」
 
「…………。」
 
「まだ着任してそんなに時間が経ってないけどさ、あんな感じで試されてる感じがだいっ嫌いだ。」
 
実は、ここに来る前に一回自分の部屋に戻って、ドラム缶に八つ当たりをしてから来たところだ。かなりムシャクシャしてた。
 
…………蹴りまくってたドラム缶から悲しそうな目をした妖精さんが出てきたときは本当に申し訳なかった。
 
「だから、他の奴じゃなくてお前のところに来たんだが……まぁ、それはどうでもいい。」
 
「…………?」

俺はここでの短い鎮守府生活の中で、確信していることが何個かある。その中のひとつだが……。
 
こいつは、頼まれたことは確実にしてくれる。
 
木曾はその立場にしろ実力にしろ、なかなか頼られることの多い奴だ。それらを全部こなしていたんだ。
 
天龍とのトレーニングから、球磨多摩とのスキンシップ(最早ペットを飼っている感覚らしい。)、提督からの事務作業か駆逐艦の世話まで。なんでもだ。
 
そんな木曾が、頼みを聞いてくれない訳がないと思ってここに来たんだ。
 
まぁ、その理由が半分で、もう半分は他の奴らが正直絶望的だったから。つまり、消去法だ。
 
ま、消去法だろうがなんだろうが、
 
「頼む木曾。俺に雷撃を教えてくれ。」
 
俺はこいつを頼ると決めたんだ。
 
再び頭を下げる俺。
 
「…………………………………。」
 
黙る木曾。恐らく自分のポリシーとかを考えてるんだろう。
 
迷って迷って考えて、
 
「わかったよ。ただし、神通よりスパルタで行くからな?」
 
結局、引き受けてくれた。
 
「おう、挑むところよ。」
 

……後に、俺は大人しく神通さんに教えて貰えば良かったと後悔するのだが……それはまた後で。
 
 
―練習海域―
 

「いや、なんで当たんねぇんだよ。」
 
不思議で仕方ないといった感じの木曾。そりゃそうだ。
 
「流石にここまで教えて一発も当たらないのはおかしい。」
 
あれから四時間。
 
俺は木曾と一緒に練習海域にて、魚雷の練習を始めた。
 
それで、とりあえず基礎から始めるということで、雷撃の基礎の基礎を木曾から教えてもらった。文字におこさねぇとわかりづらいなおい。基礎の基礎を木曾からて。
 
話を戻すが、木曾に教えてもらった通りに撃ってみているのだが…………何故か当たらない。途中で曲がったり、爆発したり、当たったかと思えば不発だったり。
 
「お前、多分なんか雷撃の神様に嫌われてるんだよ……でないとおかしい。」
 
木曾は元気をなくしたようだった。さっきも話した木曾の性格上、少しでも成果が出ないと落ち込んでしまうようだ。
 
教えてくれている木曾には申し訳ないが、しょんぼりした木曾も可愛いなー。普段の木曾って基本的にクールで格好いい雰囲気を醸し出しているから、こんな感じの木曾はかなりレアだ。
 
「……よし、ムシャクシャしたから一発殴らせろ。」

こいつはエスパーか。
 
……そういや前に、「敵艦隊は目で追うな、感じろ。」とか言ってたな…………どこのニュータイプだよ。もしくはドラゴ〇ボールか。
 
「嫌だね。艤装装備してる状態では殴られてみろよ。一発大破だぜ?」
 
俺は脳裏にあのラ〇ダーキックを思い出していた。本当にシャレにならない。
 
「こうなったら仕方ねぇ。撃ち方を変えてみよう。」
 
そう言うと木曾は、左膝をついて、艤装にある魚雷発射装置を外して、右手に持つ。そして、右肘を右膝の上に置く。
 
「その撃ち方って、確か北上の……?」
 
前に訓練している時に見た。大井も余裕があるときにしてたっけな。
 
「俺はこれを固定砲台法って呼んでんだけど、必ず砲撃できるようにしておくんだ。」
 
そう言いつつ、背中の砲門を伸ばす木曾。
 
「もしかしてだけどさ、砲撃と艦載機は撃ち落として、雷撃は相討ちさせてってことか?」
 
「おう、そーゆーことだ。」
 
「………………………………………。」
 
この人おかしい。
 
「だいたいさ、お前が艦娘になったときだって魚雷で相討ちしてたじゃねぇか。なんで今できねぇんだよ。」
 
「言うな。」
 
俺だってわかんねぇんだ。ほんと、なんで当てれたんだろ?火事場の馬鹿力か?
 
「とにかく、試してみよう。」
 
俺は木曾と同じ格好をする。うーん、なんだろうか。言葉に表しにくいあれがあるな。ほら、あれだよ、あれ。なんだっけあのしっくり来ないやつ。
 
「違和感とかあるか?」
 
「そうそれ!」
 
「?」
 
いや…………俺、違和感が出てこなかったのはまずいだろ………しかも木曾に「そうそれ!」………アホか。
 
「いや、なんでもない。違和感だったか?えっとな……変な感じがする。」
 
取り合えず取り繕うようにそう言った。
 
「だろうなぁ。これがしっくり来る奴何てそう居ないしな。」
 
少し怪訝そうな表情をしたものの、すぐにいつもの澄まし顔に戻った。
 
「ま、取り合えず一発撃ってみろよ。反動デカイから気を付けろよ?」
 
「了解。」
 
俺は発射装置の手動用発射ボタンを押した。
 

「ぐっ!?」
 
 
右肩にとんでもない衝撃が走る。右膝に肘をおいてる理由がよくわかった。ちょっとでも力を分散しないとヤバイ。
 
正直、腕がぶっ飛んだかと思った。
 
発射された魚雷はというと、ほぼまっすぐ進んでいって、的のそばを通り過ぎていった。
 
「お、なかなかいいんじゃねえか?」
 
「…………いや、右腕が無くなったかと思ったわ。」
 
俺は若干痛めた右肩をさすりながらそう言った。
 
「まぁな。俺もあんまりやりたくないんだけどな……。」
 
「あの二人はこんなのを受けきってたのかよ……。」
 
そう言えば、よく大井と北上は肩痛いとか言ってたな。肩凝りかと思ってた。
 
「これが、ハイパーズポーズっていうんだよ。」
 
木曾はそう言って、ニヤリとした。
 
…………ん?
 
「あれ、固定砲台法じゃ無かったっけ?」
 
「…………………………………………………………………………………。」
 
間。
 
間。
 
かなり間。
 
「み、見るなぁ!こっち見んじゃねえええええええええええええ!!」
 
木曾は顔を真っ赤にしながらそっぽを向いた。
 
「あれあれぇ?木曾ちゃーん?どうしたのかなぁ?いやいいよ?ハイパーズポーズでも?特に気にしないからさぁ。」
 
俺はすっごいニマニマしながら木曾の顔を覗きこんだ。ここまで弱味を見せた木曾は見たことないから、調子に乗って更に弄る俺。
 
「う、うるせぇよ!黙りやがれ!」
 
「いやいやぁ?もとはといえばそっちがいい間違えただけだしぃ?別に気にしませんよぉ?」
 
「黙りやがれっつってんだろおぉがぁああああああああ!!」
 
木曾は俺に背を向けた状態から、右後ろ回し蹴りを打ってきた。
 
「おわっ!?」
 
俺は顔面の近くに来た木曾の脚をギリギリでかわす。
 
「ちっ。」
 
舌打ちをする木曾。
 
「…………今日はネコちゃんパンツか?」
 
さっき木曾が脚を上げたとき、偶然見えてしまった。白を基調とした布のお尻のところにネコちゃんのイラストがプリントされていた。
 
「見るんじゃねえええええええええええええ!!」
 
木曾はまた脚を振り上げた……………ところまで見えた。
 
次の瞬間、俺は頭に強い衝撃を受けて、海の上に倒れていた。さっきまでの蹴りとは大違いだった。
 
「くっそ、多摩のやつめ………絞めてやる…………。」
 
俺はその木曾の呟きを聞いて、意識が闇に落ちていった。
 
…………あれ、前にもこんなことあったな…………。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。一体何人の人がこの作品を覚えていてくれているのかがこの一週間の不安でした。次回も同じくらい間が空きそうです頑張らなきゃなぁ。
それでは、また次回。 
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