マイ「艦これ」「みほ2ん」
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第45話<対抗意識>
前書き
美保湾の砲声は山城さんだった。青葉さんが解説する中、様々な想いが交錯する「みほちん」だった。
「対抗意識、燃やしているんですよ」
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第45話 <対抗意識>(改)
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私は改めて青葉さんを見て聞いた。
「山城さんは何を撃っているんだ?」
すると彼女は得意そうな顔をしながら解説を始める。
「えっとぉ、山城さんって、もともと海岸通りを南下する司令を海上から援護する予定だったんです」
「なるほど」
それを聞いて私は初めて秘書艦の作戦指示の意味が理解できた。なるほど、それで祥高さんは私に海岸通りへ出るように指示してきたのか。
そんな私たちの背後では、相変わらず山城さんの砲撃が続く。
しかし青葉さんも怯まない。さすが従軍記者だな……砲声音には慣れているのだろう。
「でも、ねぇ……」
彼女は、ちょっと勿体ぶったように表情を緩めてニタニタし始めた。
(なぜニタニタしている?)
私はちょっと疑問に思った。
すると青葉さんは、いつもの悪戯っぽい表情になる。
「司令と日向さんの連係プレーが、あまりにも見事過ぎたんですよねぇ」
「はぁ?」
そう言われても自覚は無いが。
彼女は、ちょっと真面目な表情に戻る。
「結論から言うとですね、山城さんが射撃体勢になったときには、もう落とすべき敵機が居なくなっていたんです」
「あ……」
それは何となく分かる。日向と瑞雲が、ほぼ百発百中で片っ端から落としていたからな。
その時、急に海が静かになって砲声がやんだ。
青葉さんは一瞬、美保湾を確認して……また、こちらを見た。
「でもね、司令……それ以前にですよ?」
「なんだ?」
何を念押ししているんだ?
彼女はニタニタして続けた。
「山城さんが駆け付けるよりも早く司令たちが、あっという間に鎮守府近くまで来ちゃいましたから」
「ああ、そういうことか」
よく分からないが相当ぶっ飛ばしたことは確かだ。
日向の見事な射撃と私も……そのパン○ラの影響で頭に血が上ったともいえるのだが。
そんな私の妄想を感じたのか青葉さんはチョッと肩をすくめた。
「結局……山城さん出遅れちゃったんです」
すると龍田さん。
「高速戦艦じゃないですからねぇ」
……余計なことを言う。
青葉さんは、いつものように後ろに手を組むと上目遣いになって、こちらを見詰めた。
「しかぁも!」
ワザとらしい言い方……嫌な予感がする。
「司令ってば! 日向とまぁ、イチャイチャ、ベッタリで」
「はぁ? ……な、何のことだ?」
ドキッとした私は慌てて誤魔化す。
だがふと思い出した。艦娘同士って互いの無線が聞けたりするんだよな……ってことは?
「おい、日向ぁ!」
私は思わず振り返った。
「……」
だが、そこに居た日向は、いつも通りのすまし顔だった。
(日向って、真面目な顔して実は確信犯なのか?)
戦闘能力が高い彼女だ。それはつまり頭が切れるということを意味する……だから日向は策略家ではないか?
いやしかし、あの一途さは、むしろ真逆とも言えるか?
……そんな悶々し始めた私に構わず、どんどん話を続ける青葉さん。
「まぁ山城さんにとっても日向さんって日頃から、すっごく対抗意識を燃やす相手ですから」
「へ?」
それは知らない。
すると龍田さんが加わる。
「山城さんと基本設計は同じなんですよぉ日向さんって……それが戦艦を通り越して航空戦艦でしょ?」
「……」
そういえば、そんな噂話を聞いたことがあったような。
青葉さんも腕を組んでしきりに頷く。
「だから、もう戦果から恋までメラメラ対抗意識が……あ、でもこれは美保鎮守府では有名な話ですからオフレコではありません」
「なんのこっちゃ」
私は半分、呆れた。
彼女は白い歯を見せて悪戯っぽく笑った。
「だからぁ別に隠す必要はありませんってば」
「何だ、どういうことか?」
よく分からないが、呆れると同時に急に美保の艦娘たちの背景がボンヤリと見えてきたような気がした。
「そりゃ山城さんも、ちょっと考え過ぎだろ?」
……私の言葉にニタニタしている青葉さん。
そして不思議な笑みを浮かべている龍田さん。
……当事者の日向は少し距離を置いて瑞雲を調整しながらポーカーフェイスのままだ。
でも艦娘も繊細だよな。
「山城さん……このままだと、ヤバくないか?」
私の心配する言葉に顔を見合わせた青葉さんと龍田さん。
二人は『大丈夫だから心配ない』といった感じだったが、さすがに気になるよ。
私は軍用車に近寄ると龍田さんに双眼鏡は無いか聞いた。
スローテンポで縄梯子を片付けていた龍田さんは「どこかしら」と言いながら双眼鏡を探す。
「ありました……はい」
龍田さんから双眼鏡を受け取った私は鎮守府の脇から埠頭の向こう……
大山の下の海面にピントを合わせた。
薄い大山と埠頭が見える……あ、山城さんが海の上で泣いている。
私の横に青葉さんが来て続けた。
「あと司令が作戦中止命令を出されましたよね?」
「ああ」
……やだな。泣いている山城さんの姿に落ち武者のような鬼気迫るオーラが感じられるぞ。
山城さんの映像に青葉さんの声が被る。
「そこで一矢報いようと意気込んでいた山城さん、結局最後には司令にまでトドメ刺されちゃいました」
……私はハッとした。
「違う、そんなつもりじゃ……」
私が顔を上げると青葉さんがウインクをしている。
「お……」
何かを言いかけた私を制するように青葉さんは唇の前に指を立てた。
「分かってますよ! ……そ・ん・な・こ・と」
「おいおい」
私は脱力した。
「ちょっと、記事風に言ってみただけ!」
まったく、もう青葉さん……趣味が悪いよ。
すると、ようやく私の横に日向も来た。それまでの私と青葉のやり取りは全く気にしないように彼女は言った。
「あいつらも悔しいだろうな……」
日向の視線の先には山城さんか。その方角を私は再び双眼鏡で覗いた。
山城さんの側に、やっぱり泣いているらしい第六駆逐隊の面々が群がっていた。
……あ、一緒に泣いている。
あの姿を見ると私も悪かったと思えてきた。
……そうか、よほど悔しかったか。
だが、あの深海棲艦はどうなったかな……。
私の想いを受け継ぐように日向が呟いた。
「司令、大丈夫です。過去の事情は私も何となく存じ上げておりますから……」
私は「え?」と日向を振り返る。彼女は真顔だが少し微笑んでいた。
「司令があの深海棲艦を誰だと思われているのか、過去の経歴も含めて伺ってますので」
「君には詳しく話した事は無いはずだが……あれ?」
日向の後ろで青葉さんがブイサインを出していた。そうか彼女が情報源か。
「あぁっ!」
私は肝心なことを忘れていた。
「結局、大淀艦隊は、あれから大丈夫だったのか?」
「……」
そこで何かを受信した日向が言った。
「司令、秘書艦がお呼びです。一緒に参りましょう」
「ああ……」
私たちは直ぐに軍用車に乗り込むと鎮守府の正面玄関へと向かった。
良くも悪くも日向は一途だ。私は彼女の横顔を見てそう思うのだった。
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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