マイ「艦これ」「みほ2ん」
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第42話<波状攻撃>(改)
前書き
司令の運転する軍用車は鎮守府目指してひたすら南下を続ける。
一方、大淀艦隊は、かなり苦戦中。そして司令は鎮守府を目前にして……
(私は、ここで死ぬのかな?)
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第42話 <波状攻撃>(改)
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立て続けに2機を撃墜して喜んだのも束の間。
私はサイドミラーに機影を確認した。
「日向! 後ろだっ」
思わず叫ぶ。銃座の日向が振り返ると同時に敵機の突起部分が不気味に光る。私は反射的に急ブレーキを踏んだ。
キキッ! ……というタイヤがこすれる音と共にガクンという前方への激しい衝撃が車体に加わる。
深海棲艦(大井・仮)や私はシートベルトをしているから大丈夫だが日向も中腰の姿勢で機銃を抱えたまま何とか踏ん張った。さすがだ。
次の瞬間、日向の頭上をかすめた敵の攻撃が軍用車前方の道路をえぐった。何かが溶けるような音を立てて敵の光線が前のほうへと移動していく。
私たちを攻撃し損なった敵機は、そのままの勢いで軍用車の上を通り過ぎて前方へと飛び出した。
「貰った!」
中腰で伏せていた日向は、すぐさま上体を起こすと機銃を構え直して攻撃を再開。
激しい銃撃音と共にバラバラと飛び散る薬莢。停車している軍用車は反動で振動する。前に居る私たちの所にもキンキンと音を立てて薬莢が飛んでくる。
車の左右からは瑞雲も攻撃に加勢する。敵機は瞬く間に前方の上空で火花に包まれ破壊された。私は軽く頭を押さえて衝撃波や爆風と共に飛んでくる破片をやり過ごした。
「やれやれ」
ホッとする間もなく遠くからゴオオという重低音が響く。停車しているから良く分かるな。
「司令!」
日向が海を見ながら叫ぶ。
美保湾を見ると、その方向から数機の黒い機体が編隊を成して向かって来る。
「新手か?」
私は直ぐにシフトレバーを入れ直して車を発進させた。目の前の道路には先ほど墜落した敵機の残骸が火花を散らしながら横たわっていた。
「通れないな……」
呟きながら私はハンドルを切って反対側、つまり逆走する車線へと移った。幸い今は非常時だから向かってくる車はない。
「今日は逆走ばかりだなぁ」
独り言と共に左の海側の敵を何度かチラチラと見た。しかし車体が揺れるのと弓ヶ浜の松林が邪魔をして、なかなか数えられない。
思わず私は叫んだ。
「日向っ、敵機を確認!」
「……3、4、全部で5機です!」
さすが日向、確認が早い。
「敵もしつこいな」
だが確認すると同時に連中は遠くから攻撃をしてきた。
「クッ」
構える間もなく車の前後を敵からの光線が幾重にも走リ抜け、周りの道路が次々と破壊されていく。その度にアスファルトがめくり上がり激しい振動が襲う。
狙いが外れて道路沿いの松林に入った敵の光線は容赦なく枝をなぎ払う。一部からは火の手が上がっている。
私は必死にハンドルを保持しながら走り続けた。
だが敵が海側(真横)から来ているので反対車線で逆走している私たちには都合が良かった。幹線道路の中央分離帯が、ちょうど敵機からの目隠しになって照準が僅かにズレている。何が幸いするか分からない。
しかし敵の攻撃パターンから、連中は捕虜の安全は全く考えていないように感じられた。
さっきはこいつを救出する艦隊を出したようにも思えたのだが……気のせいか。結局、こいつを救出するつもりは無いのか?
この執拗な攻撃は、この道路で深海棲鑑と私たち諸共消しし去るつもりだろうか? そんな印象もある。
日向が叫ぶ。
「司令、残弾僅かです!」
「そうか」
機銃の威力が相当あるとはいっても、日向もかなり撃ち続けている。お昼にタマの補充はしたが敵も波状攻撃を仕掛けてくる上に数も多い。
私は鎮守府周辺の地理を思い出す。
「鎮守府まで、あと僅か……弾はギリギリか?」
恐らくネックになるのは埋立地に入る交差点……減速する瞬間だ。
オマケに今は逆走しているから国道から埋立地へ曲がるためには逆走している車線分だけ減速する区間が長くなる。そこを狙われる可能性は高い。
「まずいな」
機銃のタマに余裕があれば、ある程度を行き過ぎてから応戦するという戦法も取れた。だが残弾が少ない今の状態で逃げ回るのは得策ではない。
「悩んでいる暇はないか」
もう交差点は間近だ。
無線からは、かなり苦しい声が入る。
「もぉお、ばかぁ……」
ガリガリ
「今のは夕立か?」
恐らく誰かに艤装を借りてでも戦っているのだろう。そういう根性だけはある子だ。
(でもムリするな夕立)
ジジジ
「大淀、沈みはし……」
ザザザザ
「まずい、大淀さん被弾か」
……かなりヤバそうだな。
ビリビリ
「この……がやられるなんて……」
ガーガー
日向も受信しているはずだが時おり応戦しつつも黙っている。まだ艦隊から轟沈という報告は無いが無線の雰囲気から切羽詰った状況だ。
各艦娘も気になるが一番心配なのは何も語らない寛代だ。もともと口数が少ない子であるが……無事なのか?
「まさか日本海に、そのままズリ落ちたりしないよな」
先に逝くなよ! 寛代。
無線からは断続的に叫び声が入る。
「……した! 直撃ではないが……」
ガガガ
「ヤバいな」
もうそろそろ限界か。これ以上、敵の攻撃を受けたら誰かが沈むのは時間の問題か?
私たちの車は、ついに鎮守府入口の交差点に来た。曲がり角は目の前だ。ハンドルを握る手が緊張する。
「うおぉぉ」
珍しく叫ぶ銃座の日向……彼女は全弾を撃ち尽くす如く全方位へ向けて激しく応戦した。その結果、上空の敵機が一瞬、私たちから距離を取って離れた。
「しめた!」
私は、その隙に反対車線から鎮守府の埋立地へ向けて左折して一気にアクセルを踏み込んだ。
交差点を走り抜けて埋立地に入る。松林の間の道路を通過して直ぐに鎮守府手前の交差点からは右手に司令部の赤いレンガの壁が見えてきた。
少しホッとした私は一瞬アクセルを離して減速させた……だがその一瞬の油断がまずかった。敵はそれを狙っていたようだ。
「司令!」
日向が叫ぶ間もなく離れていた数機の敵機が、あっという間にその交差点に向けて攻撃を仕掛けて来た。
「!」
私と日向は思わず緊張した。
いや正直、これで終わりか? ……思ったのだが意外にも敵の攻撃目標は軍用車ではなかった。
連中は交差点の直前にある小さな橋へ集中砲火を浴びせた。私たちの目の前に一瞬、大きな火柱が上がり激しい煙が立ち上った。
減速していたとはいえ60キロは出ている車だ。直ぐには停まれない。
「あ!」
叫ぶ間もなく軍用車は壊れた橋へと突っ込んだ。
私は瞬時に思い出す……確か交差点を渡って直ぐのところに十数メートルの小さな橋があった。普段は全く意識しないほど小さいものだが、その下には美保湾からの海水が流れ込む水路になっていた。
(迂闊だった。ここに橋があったんだ)
そう思ったが後の祭り。しかも私は今日、美保では初めて軍用車を運転している。
敵は鎮守府周辺の細かい地理や、こちらの状況を実に良く調べていることを悟った。悔しいが情報戦で負けた気がした。
だが、こちらには捕虜も居る。そこまでの情報取得能力があるなら当然、捕虜のことも考えているはずだが?
解せない。先ほどの幹線道路での攻撃を思い出して疑問が湧く。
(やはり見殺しなのか?)
いろいろ頭を巡る。
(いや、もしかしたら……)
アレコレ考えいていた時間は、ほんの一瞬だったに違いない。
3人を乗せた軍用車は交差点へ入る手前の水路へとジャンプ。一瞬、体が浮くような感覚があって、そのまま水路へと落下して激しい水しぶきを上げた。
シートベルトはしていたが落下の衝撃で私はフロントガラスかどこかで頭を強打した。同時に意識が遠のく。
それはかつて訓練や戦場で死に掛けた際に感じた、何かが切り離される感覚に似ていた。
(私は、ここで死ぬのかな?)
「司令!」
最後に聞いたのは日向の叫び声。そして差し出された掌が見えた気がしたが……あとの記憶は途切れた。
後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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