| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第2章
戦闘校舎のフェニックス
  第14話 転校生は幼馴染みでした!

 アーシアに代わって契約を取りにいったイッセーだったが、結果は契約を取れなかった。
 ちなみに依頼主がどういう人物だったかをイッセーから聞いたが、ミルたんという名の魔法少女の格好をした筋骨隆々の巨漢だという。そして依頼内容は「魔法少女にしてほしい」だという。・・・・・・いろいろ言いたいことはあるが、気にしないでおこう。
 当然、イッセーに叶えられる願いではないため、契約は取れず、魔法少女のアニメの全話マラソンをして終わったらしい。ただ、アンケート評価は好評だった。
 ま、この話はもういいだろう。
 現在、教室で朝のホームルームが始まる直前。クラス全体がそわそわしていた。
 理由は昨日、担任から告げられたもう一人の転校生のことだ。
 そして、その転校生が女子だということもあって、男子たちはいまかいまかと待ち遠しそうにしていた。

「えー、昨日も言った通り、今日もこのクラスに転校生が来ます」

 先生の言葉に男子たちはさらにテンションを上げる。

「じゃあ、入ってきて」

 先生に促され、一人の少女が教室に入ってきた。
 身長が高めで、珍しい青毛の長髪の少女。どこかのんびりそうな雰囲気を放っていた。

『おおおおおおおおおッ!』

 少女を見た男子たちは歓喜の声をわきあがらせる。
 少女は黒板に自分の名前を書き、自己紹介を始める。

「風間鶫で~す。皆、よろしくね~」

 のんびりとした口調で言う少女──風間鶫。
 少女を見てから唖然として硬直していた俺はさらに驚愕する。
 見ると、イッセーも同じ反応をしていた。
 少女はイッセーを視界に捉え、パァァァッと目を見開いて嬉しそうな表情を作ると──。

「イッセーく〜ん! ひさしぶり〜!」

 少女はイッセーのもとに駆け寄り、イッセーに抱きつく。
 それを見て、周りの生徒たち、特に男子たちは驚愕の叫びをあげ、俺はこれから来るであろう質問責めを想像して、ため息を吐くのだった。
 この少女──風間鶫は、実は俺たちの幼馴染みなのであった。


―○●○―


「「どぉぉぉういうことだああああっ! イッセェェェッ!?」」

 ホームルーム終了後、松田と元浜が血の涙を流さんばかりの勢いでまくし立てながらイッセーに詰め寄る。

「ああ、いや、これは──ムグッ!?」
「わ〜い! イッセーく〜ん!」

 答えようとしたイッセーだったが、鶫によって再び抱き締められたため、胸に顔を(うず)められてしまう。
 それを見て、松田と元浜から再び叫び声が上がり、周りの男子たちはイッセーに殺気まがいの視線を送る。

「はぅぅぅっ! 明日夏さん! これは一体!?」

 アーシアはアーシアで、涙目で俺に問い詰めてきた。

「鶫。そろそろイッセーをはなしてやれ」

 俺は鶫にそう促すと、ようやく俺に気づいたのか、鶫が話しかけてくる。

「あ〜! ひさしぶり〜、明日夏く〜ん!」
「ああ、ひさしぶりだな。そしていい加減はなしてやれ。苦しがってるぞ」

 胸に顔を押しつけられてしまっているので、イッセーは呼吸がしにくいのか、苦しそうだった。

「あ〜ッ! ゴメン、イッセーくん!?」

 俺に指摘されてようやく気づいた鶫は慌ててイッセーをはなす。

「ああ、大丈夫だよ、鶫さん・・・・・・むしろ、あれで死んだとしても本望だったというか・・・・・・」

 ぼそりとらしいことつぶやくイッセーに呆れながら、俺は鶫に訊く。

「まさか転校生がおまえだとはな。おまえがいるってことは──」
「うん。燕ちゃんも来てるよ〜」

 燕──鶫の妹の風間燕のことだ。

「おーい、イッセー?」
「そろそろ説明してほしいのだが?」

 不気味な笑顔で訊いてくる松田と元浜。・・・・・・目が全然笑ってないし、殺気がダダ漏れだった。

「えーっと、この子、鶫さんと俺たちは幼馴染みなんだよ」

 そう言った瞬間、松田と元浜から、周りの男子たちから一斉にさっきまで以上の殺気がイッセーに向けられる。
 それを感じ取ったのか、イッセーは一瞬だけビクッと震え上がる。

「イッセーく〜ん」
「ちょっとお話しようか〜」
「いやこえぇよ!?」

 松田と元浜のあまりに不気味な誘いに、イッセーは即座に断る。
 だが、松田と元浜・・・・・・というか、クラスの男子全員が有無を言わせず、イッセーに詰め寄る。
 それを見て、イッセーは身の危険を感じ取り、一目散に逃げ出した。

「「待てゴラァァァッ!」」

 松田と元浜も逃がすまいとイッセーを追いかける。

「イッセーくんたち、どうしたんだろ〜?」

 この事態の原因の一端である鶫は、そんなこともわからず、首をかしげていた。


―○●○―


「つ、疲れた・・・・・・」

 放課後、オカ研の部室で俺は机に突っ伏していた。
 あのあと、アーシアのときと同様、いや、アーシアの件があったからこそ余計に休み時間のすべてをクラスの男子たちに追いかけ回され、鶫さんのことで問い詰められたもんだから、もうクタクタだよ。
 結局、一年に転入したという燕ちゃんに会いに行けなかったし(行けたら行けたで、さらに追いかけ回されたかもしれないが)。

「大変だったみたいね?」

 部長が苦笑いしながら言う。
 まったくですよ。ここは、鶫さんに抱き締められたときに顔に感じた鶫さんのおっぱいの感触でも思い出そう!
 鶫さんのおっぱい、柔らかかったなぁ・・・・・・危うく窒息しかけたけど、おっぱいで死ねるなら本望──いやいや、やっぱり、エッチなことをしないと死ねない!

「・・・・・・イッセー先輩。顔がいやらしいですよ」

 あぅぅぅ。小猫ちゃんの容赦のないツッコミ。
 それにしても──。

「二人が帰ってきたのは驚いたよなぁ」
「そうだな」
「でも──」

 大丈夫なのか、と続けようとすると明日夏に遮られる。

「おまえの心配はもっともだ。だが、二人のあの噂をあれ以来聞いたことあるか?」

 うーん、そう言われてみればそうだけど。

「噂?」

 俺たちの会話を聞いていた木場が訊いてくるけど、途端に俺たちは苦虫を噛み潰したような複雑な表情を作ってしまう。
 それを見た木場は慌てて謝る。

「ゴメン! あんまり触れてほしくないことみたいだね・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
「まぁな・・・・・・」

 鶫さんと燕ちゃんと出会ったのは、俺たちが小学生になってから二年ちょっとぐらい経った頃かな。
 実は当時、二人は周りからひどいいじめを受けていたんだ。
 原因は二人の母親。どうにも、男遊びが激しいヒトだったみたいで、それを怒った二人の父親がそのヒトと離婚したんだけど、さらに二人の父親は二人のことをそんなヒトから産まれたからって理由で勘当してしまったんだ。
 そして、そんな母親の悪評の噂が広まっていて、そのせいで二人は周りからいじめられていたんだ。
 当時の二人といったら、本当にひどい状態だった。
 鶫さんは人間不信になっちゃってたし、燕ちゃんは感情というものをなくしたような状態だった。
 でまぁ、いろいろあって、二人とは仲良くなって、だけど、いじめはひどさを増す一方だったため、二人はこの街から去ってしまったということだ。

「・・・・・・ひどい話ね」

 二人の説明を聞いて、部長がそうつぶやく。部室内の雰囲気も暗くなりつつあった。

 コンコン。

 すると唐突に部室のドアをノックされた。

「はーい」

 部長が返事をして、入るように促す。

「こんにちわ〜」
「・・・・・・・・・・・・」

 入ってきたのは、さっきまで話題になっていた鶫さん! そして、鶫さんの隣に一人の少女がいた。
 小柄な体型で、赤毛の髪をツインテールにしたキツそうな雰囲気を放つ少女──鶫さんの妹の風間燕ちゃんだった。


―○●○―


 突然来訪してきた鶫と燕の風間姉妹。

「ひさしぶりね。イッセー、明日夏」

 俺たちを視界に捉えた燕が話しかけてくる。

「ああ。ひさしぶりだな、燕」
「ひさしぶり、燕ちゃん。ゴメン。せっかく帰ってきたのに、会いに行ってあげれなくて」
「いいわよ。なんか大変そうだったみたいだし」

 そんなふうにイッセーと燕が話していると、部長が尋ねる。

「イッセーたちに会うためにわざわざ来たのかしら?」
「それもあるけど〜、せっかくだからイッセーくんたちと同じ部活に入ろうかな〜って」

 まぁ、二人が来る理由なんて、それぐらいしかないだろうからな。
 なぜなら、二人は千秋やアーシアと同様にイッセーに想いを寄せているからな。

「・・・・・・あたしは別にいいんだけどね」

 そんなふうに素っ気なく言う燕に俺は言う。

「相変わらず素直じゃねぇな」

 「素直」ってところをあえてわざと強調しながら言ってやる。
 それを聞いて、燕は少し慌てた様子を見せる。

「相変わらずも何も、昔からあたしは本当のことしか言ってないわよ!」
「どうだかな〜」
「・・・・・・何よその顔・・・・・・」
「じゃあ、おまえだけ入部しないんだな?」
「ちょっ・・・・・・別に入らないなんて・・・・・・ハッ!」
「やっぱりおまえも入部したいんじゃねぇか」
「ち、違っ・・・・・・!?」

 燕は最初のキツそうな雰囲気はもう見る影もなく、誰が見ても微笑ましい顔をしてしまうような雰囲気を放っていた。
 このように、燕はだいぶ素直じゃない性格をしている。とくにイッセーのことになると、露骨になる。
 「あぁ、久々に見たなぁ」なんて言っているイッセーに木場が訊く。

「・・・・・・イッセーくん。明日夏くんが妙にイキイキとしてるんだけど・・・・・・?」
「・・・・・・わりと明日夏って、誰彼構わずってわけじゃないけど・・・・・・人をいじくったりするの好きだったりするんだよ」

 別に好きってわけじゃないぞ。単なるストレス発散だ。燕はいじりやすいしな。

「・・・・・・ちょっと黒いです」

 塔城にまでそう言われてしまう。
 そんなやり取りをしている俺たちをよそに、部長が淡々と告げる。

「ゴメンなさいね。二人の入部は認められないわ」

 自分たちの裏の事情から一般人である二人の入部を認められないということだ。
 むろん、そう告げるわけにはいかないため、適当な別の理由を述べ、納得しなかったら、悪魔の力で引き下がらせようと考えているのだろう。
 だが──。

「部長。二人はすでに部長たちが悪魔だということを知っていますよ」
「えっ!?」

 俺の言葉に部長は一瞬だけ呆気に取られるが、すぐに持ち直して俺に訊いてきた。

「明日夏。彼女たちは一体・・・・・・?」

 その問いに答えたのは燕だった。

「あたしたちの兄が、そこですましてる兄妹とご同業っていうだけの話よ」
「それはつまり、あなたたちのお兄さんが明日夏たちと同じ『賞金稼ぎ(バウンティハンター)』だということ?」

 二人の兄──風間雲雀。兄貴たちと同様に鶫と燕を養うために賞金稼ぎ(バウンティハンター)になったヒトだ。兄貴と同年代のハンターで、兄貴の親友でもある。
 そのため、兄貴と雲雀さんはよく組んで行動することもあり、この町に留まっている俺たちとは違い、兄貴は二人とたびたび交流していた。
 部長たちやイッセーのことは当然兄貴たちに伝えているので、部長たちのことは兄貴から伝わっているのだ。
 むろん、二人のことも兄貴を通じて、近況はあらかた伝えられていた。
 ・・・・・・二人が帰ってくることは聞かされていなかったがな。・・・・・・大方サプライズってことなんだろう。
 そのことを部長たちに簡潔に説明する。

「・・・・・・まさか雲雀さんが。じゃあ、俺のことも・・・・・・?」

 イッセーが自身を指さしながら二人に問う。

「うん。イッセーくんが悪魔になっちゃたことも知ってるよ〜」
「ここにいるグレモリー眷属の一員になったこともね」

 当然だろう。イッセーのことは最優先で伝えられているはずだからな。
 ・・・・・・流石に一度死んだ事実は伏せられているだろうが。

「悪魔になったって聞いたときは驚いたけど、だからどうってわけじゃないけどね〜。イッセーくんはイッセーくんだし〜。ね〜、燕ちゃん?」

 振られた燕は頬を赤くしながらも頷いて返す。

「ありがとう、鶫さん、燕ちゃん」
「お礼なんていいよ〜。それにこれは、イッセーくんが私たちにしてくれたことだもん」
「? イッセーがあなたたちに何をしたの?」

 イッセーが二人にしたこと──それはいじめられていた二人を庇ったことだ。
 当時、俺は二人と知り合う前から二人のことを把握していた。・・・・・・把握していながら、俺は二人を見て見ぬフリをしていた。
 そのころの俺は、俺と千秋を養うために稼ぎに出ていた兄貴たちの代わりに千秋を守るためと、だいぶ切羽詰まった思考しており、千秋やイッセーにいらぬ被害を被らないようにとなるべく他人の問題には関わらないようにしていた。むろん、二人にもそのようにさせていた。
 そのため、鶫と燕のことは気の毒に思いながらも、他人というそれらしい建前を作って見捨てた。
 そんな中、イッセーは偶然にも鶫と燕に出会う機会ができてしまった。だが、そのときにはすでに人間不信になっていた鶫はイッセーを拒絶し、感情をなくしていた燕は相手にもしなかった。
 それを知った俺はイッセーに、もう関わるなと言い聞かせていたが、結局そのかいもなく、イッセーは二人がいじめられている場面を目撃し、二人を庇った。
 それから俺たちは二人と交流するようになり、鶫と燕は二人を受け入れたイッセーに心を開き、見捨てた見捨てられたの間柄であり、そのことに罪悪感を持っていた俺も、最初こそは溝もあったが一応はそれなりの仲になった。
 俺たちと二人が幼馴染みになった経緯はそういう感じだ。
 その旨を鶫は部長たちに話す。

「そう。イッセーと出会えたことで、いまのあなたたちがいるのね」
「うん」
「・・・・・・まぁね」

 部長の言葉に鶫は嬉しそうに頷き、燕も顔を赤らめながらも頷く。
 ちなみに、二人はそのときにイッセーに好意を寄せるようにもなったのだ。

「それにしても・・・・・・雲雀さんが明日夏たちと同じ賞金稼ぎ(バウンティハンター)だったなんてな。二人が悪魔のことを知ってたのはそういうわけか」

 イッセーの言葉に俺は首を振る。

「いや。三人はもっと前から、俺たちと出会う前からすでに異能、異形のことは知っていたぞ」
「えっ!?」

 俺の告げたことに、イッセーは今日何度目かの驚愕をあらわにする。

「明日夏。それはつまり、彼女たちは異能力者、もしくは異能力関係の家系の者だということかしら?」

 部長の問いに答えたのは燕だった。

「そんな大それたものじゃないわ。ただの異能、異形の存在を知っていた、忍の一家ってだけよ」
「えっ!? 忍って、つまり忍者ってこと!?」

 イッセーの言う通り、忍──つまり、忍者。三人は忍者の家系の出身なのだ。それも、異能、異形の存在を専門とした諜報、暗殺を生業とした一族なのだ。
 ふと部長を見ると──なんか瞳を爛々と輝かせていた。

「NINJAですって!? あなたたち、もっと詳しく話を聞かせてちょうだい!?」
「わ〜!?」
「ちょっ!?」

 ひどく興奮しながら食いつく部長に鶫も燕も慌てだした。
 俺は慣れた様子で苦笑している木場に訊く。

「・・・・・・おい、木場。部長ってもしや・・・・・・」
「うん。部長は昔の日本の文化、特に侍や忍者なんかがとても好きなんだ」

 やっぱりか。外国人によくある日本の文化の愛好家か、部長は。

「あたしたちは勘当された身なんだから、家のことなんてそんなに詳しく知らないし、技術なんて、護身術程度にしか身につけてないわよ! ていうか、なんで外国の人はただの諜報員集団にここまで情熱を寄せるのよ!? イッセー! あんたなんとかしなさいよ!? あんたの主でしょ!」
「イッセーく〜ん! 助けて〜!?」
「ええっ!? 俺!?」

 二人はイッセーに助けを求めるが、若干、いや、完全に暴走している部長を止めるには荷が重かった。

「明日夏も明日夏よ! NINJAの知り合いがいたのなら、なんで黙っていたのよ!?」
「ちょっ、それ理不尽過ぎませんか!? おい、木場! 塔城でも副部長でもいいから、部長を止めてくれっ!?」

 こんな騒動もあったが、なんとか部長を宥め、鶫と燕はオカ研へと入部することができた。まぁ、その後も鶫がイッセーに抱きついたりしたせいで、千秋とアーシアとで修羅場になりかけたり、その光景を見て悶々としている燕をいじくったりと、別の騒動が起こったんだがな。
 ちなみに、二人はイッセーの(うち)に住むことになった。 
 

 
後書き
オリキャラのページに鶫と燕の情報を記載しました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧