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真田十勇士

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巻ノ九十三 極意その一

                 巻ノ九十三  極意
 望月は立花の修行を受け続けていた、そうして日に日にもっと言えば刻一刻と強くなっていた。その中で。
 気を自在に操られる様にもなっていた、全身に力を溜めて気を放ちそれで巨大な岩も一撃で砕いてみせたが。
 その望月にだ、傍らで見ていた立花は厳しい声で言った。
「まだじゃ」
「間合いが近いですか」
「百歩離れていなければじゃ」 
 そうでなければというのだ。
「駄目じゃ」
「左様ですか」
「今の気の大きさでな」
 己の身体程の大きさでというのだ。
「百歩じゃ」
「その間合いで、ですな」
「あれだけの岩を砕けぬと駄目じゃ」
「では」
「そう出来るようになる為にな」
「より、ですな」
「修行じゃ」
 それを行うべきだというのだ。
「それを続けようぞ」
「わかり申した」
「気を出せるだけでは駄目じゃ」
 そして岩を砕けてもというのだ。
「わかったな」
「では百歩で砕ける様に」
「そうなる、しかしな」
「はい、この気はですな」
「戦の場ではそうは使えぬ」
 そうしたものであることもだ、立花は望月に話した。
「気を練るだけの余裕はない」
「まさに生きるか死ぬかの場ですからな」
「一瞬でな」
「だからこそ」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「ここまで練る余裕はない、しかしな」
「気を使うことはですね」
「覚えよ、気を練るのもより速くしてじゃ」
「戦の場に使うのですな」
「そうじゃ、そして身体自体もじゃ」
 体術そのものもというのだ。
「存分に使うのじゃ」
「これまで以上に」
「一人で多くの者を相手にするにはな」 
 このことは望月だけではない、幸村にしても十勇士達にしてもだ。彼等の戦は少数で大勢を相手にするものだからというのだ。
「速く気を練り体術もな」
「素早く確実にですな」
「攻めて倒すのじゃ」
「ですな、それでは」
「これまで以上に速くなり強くなれ」
「はい、では」
「次はじゃ」
 立花は望月をさらなる修行に連れて行った、そこには幸村もいてだった。実質三人での修行を続けた。そうしていってだった。
 望月は陸奥に来る前よりも見違えるまでに強くなっていた、そしてその強さはまさに鬼の様になっていた。その彼にだ。 
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