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ランブリング!!

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【RB1】
  【RB第八話】

 次の日の午後の授業。

 昨日と同様、校庭に集まるライダーズの生徒。

 訓練機である火影・壱式が並んでる中、ちらほらと散見して見える火影・壱式――昨日のクレジットで購入した機体だろう、工業的な灰色ではなく、派手な赤や黄色、迷彩柄と塗装されていた。

 だがそれよりも目立つのは――本来ここにあるはずのない最新型のRB【火影・五式】が其処にあることだろう。


「うわっ、四ツ橋重工の最新型じゃん!?」

「何でこんな所に――てか誰か買ったのかよ!?」

「てかスゲー!? バイザー型って言ったらテレビとかアニメとかでもやられ役なイメージの機体だけど、この五式はカッコいいよな!!」


 わりとヒロイックなデザインのボディモジュール、レッグモジュールも最新の二脚。

 アームモジュールも最新型だが量産を前提とした作りになっていた。

 量産型とはいえヒロイックなイメージに似合うライフルモジュールとシールドモジュールが映えて見える。


「やっぱ話題をかっさらいましたね、畠山くん!」

「やったっすね! 海!」

「まあやっぱ最新型だしな。これなら流石に天使も見て――」


 そう言い、チラッと横目で加川有栖を見るのだが当の本人は確かに見てはいる……だが。


「クルス? あの機体だけ皆と違うけど何て機体なの?」

「……火影・五式だ。俺らが訓練で使う壱式の最新型があれって訳だ」

「ふーん。でも……あんまりわからないかな、あたし」


 といった感じでクルスの隣にいるアリスを見てまた静かに涙を流す海。


「諸君、今日も昨日と同様基礎訓練を行う。昨日同様滑走路の向こう側まで移動――だが今回は更に反対側の滑走路まで行った後にここまで戻る事だ。各員、自身が搭乗するRBに乗り込め!!」


 手を叩き、搭乗を促す佐久間弥恵。

 急いで訓練機及び購入したRBに乗り込むライダーズ。

 クルスの機体は昨日と同様の一号機、球体コアが最適化され、一歩歩く。


『悪いが、今日は先に行かせてもらうぜ!』


 そう言ったのは五式に乗る畠山海だった、訓練で最新型を使う畠山海は一躍注目の的だった。

 佐久間弥恵もまさか最新型が来るとは思っていなかったらしく、少し面を食らっていた。

 先陣を切る五式に続く様に滑走路の向こうを目指す壱式の軍団。

 大半は灰色だがやはり塗装された機体は目立ち、それが自身に繋がってるのか訓練機より前に出た。

 宛ら総大将を筆頭に進む軍団といえるだろう。

 一方クルスは――。


『今日は二人とも大丈夫そうだな』

『ええ。兄さんの手を煩わせたのは昨日だけです』

『うんうん。それにランブリングの基礎だもん、躓いてられないよ!』


 並走するように二機はクルスに着いてきていた。

 先陣を切っていた畠山海は――。


『見ててくれてるか、我が天使よ!』

『はあ? 天使って誰の事だ? 俺か?』


 五式の後ろを着いてきてたのは迷彩柄の壱式のパイロット、林孝太だった。


『違うし! 加川有栖の事だ!』

『あぁ……。あの子なら有川来栖と並走してるぞ、ほら。あの一号機の奴だよ』


 アームモジュールのマニュピレーターで指差す先にいる一号機――並走する二機の内一機が加川有栖の機体、五号機だ。


『っ……普通なら最新型ってだけで話しかけてくるのに!』

『あー……。多分あの子は無理な気がする。俺もあの子可愛いから昨日の夕食ん時に遊びに誘ったんだけど断られたし』

『何!? 俺より先に誘うなんて……』

『いや、先も後も声かけなきゃ損じゃん? ライダーズであんだけ可愛い子って後は有川由加とB組の――』

『チックショー!!』


 謎の遠吠えを残して脱兎の如く滑走路の向こうへ消えていく畠山海、新型の機体性能の高さといいたいが――。


『てか俺の話聞いてからいけよな……』


 残された林孝太は一人ごちり、ペースはそのままで歩いていった。

 三十分後、往復を終えた生徒はそのまま佐久間弥恵との軽い模擬戦が行われる。

 アームモジュールに非致傷製の剣――通称ワックスソードを持たされる。

 互いに被弾したらアウトの一発勝負――とはいえ、剣で斬られても装甲に塗料が塗られるだけだが。

 佐久間弥恵の乗るRBも火影・壱式――まず最初に走り終えた畠山海が立ち向かう。


『さて、かかってくるといい』

『うっしゃーっ!! 最新型の性能、見せてやんよ!!』


 意気揚々とワックスソードを構え、振るう五式。

 縦に振るう袈裟斬りだが、空を斬り、滑走路にワックスの破片を撒き散らせて辺りを青く染めた。

 その一瞬の隙をつき、佐久間弥恵の駆る壱式は畠山海の五式のボディモジュールを突く。

 ワックスソードの破片が五式のボディをピンクに染めた。


『畠山海、お前は最新型に乗って油断しすぎだ。ランブリングバトルは最新型だろうと初期型だろうとやられる時は今みたいにあっさりやられる。わかったらワックスで汚れた滑走路をモップ掛けしろ、わかったな』

『は、はいぃ……』


 言われるがまま、立て掛けられたRB用巨大モップで滑走路を掃除し始めた畠山海。

 それを他所にライダーズ生徒の訓練機をワックスソードの一刀の元に倒していく佐久間弥恵、機敏な動きかつ無駄を省いた足取りで佐久間弥恵の駆る壱式は未だに被弾はなかった。

 一方やられた生徒はモジュールについたワックス塗料をモップで落としていく。

 中には派手に塗りたくられた機体もあり、それらはRBで大まかにワックスを落としてから人の手で残りを落とす。

 一見罰ゲームにも思えるモップ掛けだが、細かな動作訓練としてはこれほど効率の良いものはなかった。

 DMSがあるとはいえ、RBと人間の身体では違うのだ。

 そして――。


『次、来い』

『けっ……先生の無双記録もここまでだな』

『ほう、次は有川来栖の番か。自信があるなら来い』


 新たなワックスソードをアームモジュールで掴む弥恵、クルスもワックスソードを二刀構える。
 一刀でも二刀でも扱えなければただの扇風機――カモメの鳴く声が聞こえた刹那、クルスが動いた。

 左手モジュールで持ったワックスソードを投擲――予想外の行動だが弥恵はワックスソードを空高く切り上げた。

 だがクルスのワックスソードはもう一刀ある――横に薙ぎ払う一撃が直ぐに迫ってきた。


『なっ!?』

『フフッ』


 ガクンッと膝から屈み、ワックスソードの横一文字斬りを避けた弥恵――負担の掛かる屈み動作に、レッグモジュールが軋みを上げるが一回や二回ぐらいで壊れていては失格だ。

 そのまま立ち上がるのと同時に逆袈裟懸けで斬り上げ、クルスの一号機はピンクの塗装に塗られた。


『奇襲としては中々良かったが、生憎と二刀流を扱うもので左手の刀を投げる刀剣術は山ほどあるのでな。ほら、RB綺麗にするのだな』

『けっ……』


 無双記録を阻めなかったクルスは仕方無くモップを持ち、汚れた滑走路をモップ掛けしていく。


『あーん、クルス、やられちゃったー』


 言いながら近付く五号機――アリスの機体だ、派手にピンクの塗装が掛かっていた。


『あ、アリスさん! 僕が貴女の機体のモップ掛けしてあげます!』


 そう言って近付く五式――畠山海だ、これを機会に御近づきになろうと思ったのだろう。

 だが……。


『ありがとう。でもあたしなら大丈夫、クルスが落としてくれるから』

『なっ!?』

『けっ……何でわざわざ俺がやんなきゃなんねぇんだよ』

『良いじゃん。幼なじみなんだし』

『チッ……』


 渋々といった感じでアリスの五号機をモップ掛けしていくクルス、一方の畠山海は――。


『ち、チクショー!!』


 そう言って脱兎の如く逃げ出した畠山海に、ライダーズ全員首を傾げた。

 嫌でも目立つ最新型の五式が逃げ出したのだ、注目もすれば気にもなる。

 クルス達ぐらいだ、気にも止めなかったのは。

 結局ライダーズ全員の機体はピンクの塗料を塗られ、午後の授業がモップ掛けする事態となった。 
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