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ランブリング!!

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【RB1】
  【RB第三話】

 入学式も平穏に終わり、各科は各々一年間世話になる教室へと案内される。

 窓側の一番前の席――陽当たりのいい席がクルスの席だった。

 席順は名字順、だからか男女別ではなく男女混合の席という仕組みだった。

 陽当たりはよくても一番前の席――自分の名字を恨みながらも席へと座った。

 流石に初日という事もあり、新入生の大半は緊張した面持ちで担任の先生を待っていると――教室の開閉式スライドドアが開いた。

 現れた担任――スラッとした脚線美、黒のスーツに程好く主張する乳房、髪はミディアムカットで色は日本人らしく黒。

 凛々しい顔立ちで美人と――クラスの男子を興奮させるのに充分な色気も醸し出していた。


「おはよう諸君。今日から一年間、君たちの担任を任された佐久間弥恵(さくまやえ)だ。君たちライダーズに教える事になっている。カリキュラムの内容だが午前は基本的な動作、RBモジュールの説明やRBバトルの説明、午後からはRBを使用した実習がメインとなる。何か質問のある者はいるか?」


 朝の挨拶から自己紹介、カリキュラムの流れを一通り喋り終えた佐久間先生に、生徒一同の印象は《出来る女性》といった印象だった。


「あ、あの……」

「何か質問があるのかね、加川有栖」

「は、はい。午後からのカリキュラムですがRBを使用した実習って先生が言いましたけど……き、今日からですか?」

「勿論だ。午後から早速君たち全員訓練用RBに乗ってもらう」


 入学式からいきなりのRB実習訓練に、流石に教室内にどよめきが巻き起こった。

 初めて乗る人間が多いのだ、色々心持ちとかもあるのだろう。

 だが佐久間先生は表情を変えずに手を叩き、注視させた。


「いきなりで緊張するのはわからなくはない。だがライダーズ志望の君たちには習うより慣れろの方がいい。それに、操作方法に関しては君たちも驚くほど簡単だからな」


 僅かに微笑を溢した佐久間先生は。


「さて、他に質問がある生徒はいるか?」

「は、はい!」

「君は……山田貴司だな」

「はい! 自分達が搭乗するRBはどの社の物でしょうか!」

「成る程。それは知っておいた方が良いかもしれない。日本の四ツ橋重工が開発した【火影・壱式(ヒエイ・ヒトシキ)】だ」


 投影ディスプレイに表示される【火影・壱式】――ボディーモジュールはバイザー式で腕部モジュールには四ツ橋重工が開発した【飛将】及び【地陰】が装備されている。

 飛翔はRBバトル用の単発式ライフル、地陰はRBバトル用のシールドという基本セットであり、入門用としても広く慕われている機体だ。

 バイザー式の頭部はバランスがよく、どんな場面でも活躍が出来るため様々な企業も取り入れている。

 脚部は基本的な二脚タイプ――特徴は無い分安定性は確りしている。

 脚部モジュールには他にも多脚型、車輪型、無限軌道などがある。

 オプションモジュールは備わっていないが、訓練するにはうってつけの機体といえる。


「まあこんな所だろう。いい忘れていたが諸君、本日のカリキュラムが終われば君たちには【クレジット】が支払われる。支給されるクレジット額は十五万だ」


 その言葉に更にざわめく生徒――クレジット額十五万というのは安値のRB一機を買える金額だ。


「そのクレジットの使い方は君たちに任せる。それを使って自分専用の機体を購入し、次回の訓練から使うも良し、逆に使わず貯めるのも良しだ。だが注意してほしいのは自分が購入した機体のモジュールが破壊されても自分達で修理費を出さなければいけないことだ。修理費も勿論クレジット払いだが、クレジットが無ければ当然修理は出来ない」


 これに関しては自分の機体なんだから自分で責任持てという事だろう。


「後はクレジット支給に関して、本日のカリキュラムは十五万クレジット支払うが次回からは勿論減らされる。一週間のカリキュラムを終えたら各人に一万クレジット、これが一年間、月に四万クレジットが支払われる。それと訓練に使用する機体にも貸し出し用にクレジットを払う義務がある。これらは一週間の貸し出しで五千クレジットだ。その代わり各モジュールを壊しても弁償という事は無いから安心してほしい」


 一見むちゃくちゃな様だがクレジットはあくまでも架空のお金だ、勿論現金に換える事も出来るがレートは良くない。

 機体貸し出しに五千という事は実際支給されるクレジットも五千。

 とはいえ仮に壊しても弁償しなくていいのは大きいだろう。

 逆に自分の機体を使って壊したら――自分の責任という事だ。

 大人しく聞いているクルスだが、その実はそんな説明に飽き飽きしていた。


「ふむ。有川来栖、退屈そうな表情をしているがどうしたのかね?」

「……退屈そうなじゃなく、退屈なんだよ」

「成る程。確かにこの話は退屈といえよう。では、そろそろ授業を始めようか。本来であれば自己紹介等もあるのだろうが、それらは各々各人に任せるとしよう。早速だがRB操縦マニュアルの五頁を開いてもらおう」


 質問タイムが唐突に終わる――火影が映し出されたディスプレイも今はRBの操縦に関する記載を映し出していた。

 内心で舌打ちし、クルスは退屈な一時限目の授業を渋々と受けた。

 そして――一時限目の授業の終わりを告げるメロディが校内全体に鳴った。


「以上が基本的な操縦だ。他にも脚部モジュールによって操作方法に差異は出るが、そちらも午後からの授業でわかるだろう。では一時限目の授業を終わりとする」


 授業の終わりが告げられ、束の間の休み時間――一息入れる生徒もいれば自己紹介をし合う生徒もいる中――。


「フッ、君は他の生徒に自己紹介をしないのかね?」

「あん?」


 担任の佐久間弥恵がクルスに話し掛けてきた、クルスの前に教員用の机があり、佐久間弥恵とは対面する形になっている。


「……別に自己紹介とか、する気はねぇな」

「成る程。それも有りだろう。……授業はどうだった」

「……俺は頭が悪いからな。あんなマニュアル読んだからってわかんねぇよ」

「フフッ、君は実践派といった所かな? 今は我慢してくれ、退屈でもカリキュラムとして組まれている以上は授業をしなければいけないのでな」

「…………」


 クルスは答えなかった、退屈なのは事実だし早く実践する方が退屈しなくてすむ。


「まあ次の授業が終われば、一度君たち全員にFRBB《フリーランブリングバトル》を見てもらおうと思っている」

「……それなら退屈しなさそうだな」


 授業を聞くよりはいいと思ったクルス――休み時間終了のメロディが鳴り、生徒一同皆自身の席へと着席した。


「では二時限目の授業を始める。二時限目の授業は機体の各モジュールについての説明だ――」


 二時限目の授業、それさえ終わればランブリングバトルを見ることが出来る。

 少なくとも退屈な授業から脱却出来るのはクルスにとって願ったりかなったりだった。 
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