英雄伝説~灰の軌跡~
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第19話
同日、17:10――――
レンとの邂逅から4日後、オリヴァルト皇子達はメンフィル帝国との和解に向けて情報収集等をした後、和解交渉の為にメンフィル皇族と面会する為にバリアハートに訊ねたが、17時以降でなければ面会できないという返事が来た為17時まで待った後再び”カレイジャス”でバリアハートに向かい始めると、突然通信が来た。
~カレイジャス・ブリッジ~
「艦長、通信が来ています。」
「何?―――どこからの通信だ?」
通信士の報告を聞いたアルゼイド子爵は眉を顰めて通信士に訊ねた。
「少々お待ちください。………………え。」
訊ねられた通信士は端末を操作して通信相手を確認すると呆けた声を出した。
「通信相手はどこからだったのだ?」
「そ、それが……………現在こちらに通信をしている相手は貴族連合軍の旗艦である”パンダグリュエル”です……!」
「何ですって!?」
「一体どういう事だ!?バリアハート近辺はバリアハートを占領したメンフィル軍が哨戒しているのに、何で貴族連合軍の旗艦がバリアハート近辺に現れたんだ!?」
アルゼイド子爵の問いかけに答えた通信士の報告を聞いたその場にいる全員が血相を変えている中サラ教官は驚きの声を上げ、トヴァルは信じられない表情で声を上げた。
「まさかバリアハートを奪還する為に貴族連合軍がメンフィル軍に対する反撃を始めるつもりなのでしょうか……?」
「確かにその可能性も考えられますが、何故貴族連合軍にとって”敵”である我々に連絡を…………」
シャロンの推測にクレア大尉は同意しつつも困惑の表情をしていた。
「………殿下、どうなさいますか?」
「―――ちょうど良い機会だ。カイエン公達”貴族連合軍”ともメンフィル帝国との戦争について話し合いたいと思っていたんだ。すぐに繋げてくれ。」
「御意。―――スクリーンに転送を。」
「イエス、キャプテン。」
オリヴァルト皇子の意志を確認したアルゼイド子爵が通信士に指示を出すとスクリーンがアリサ達の前に現れた後スクリーンにはカイエン公達貴族連合軍の関係者ではなく、何とレンが映った!
「へ…………」
「彼女は確か4日前オレ達の前に現れたメンフィル皇女の………」
「………”殲滅天使”。」
「な、何で”殲滅天使”が貴族連合軍の旗艦にいるの~!?」
スクリーンに映っているレンを見たアリサは呆けた声を出し、ガイウスは目を丸くし、フィーは警戒の表情でレンを見つめ、ミリアムは混乱した様子でレンを見つめながら声を上げた。
「うふふ、御機嫌よう♪さて、問題よ。何故貴族連合軍の旗艦である”パンダグリュエル”にエレボニア帝国と戦争をしているメンフィル帝国の皇女たるレンがいるのでしょう♪」
「!!まさか………”パンダグリュエル”までメンフィル帝国軍に占領されたのですか!?」
レンの問いかけを聞いてすぐにある事を察したクレア大尉は信じられない表情でレンに訊ねた。
「大正解♪今から3日前―――12月6日にレン達メンフィル帝国軍は”パンダグリュエル制圧作戦”を行って、貴族連合軍の旗艦である”パンダグリュエル”を占領したのよ♪」
「ええっ!?き、貴族連合軍の旗艦までメンフィル帝国軍に占領されたんですか!?」
「12月6日………アタシ達が”殲滅天使”と邂逅した翌日だから、”殲滅天使”が言っていた”次の作戦”は貴族連合軍の旗艦を占領する作戦だったみたいね………」
「そう言えばレン皇女殿下は私達を訊ねたその日の翌日にリウイ陛下を始めとした多くのメンフィル皇族の方達まで参加する大掛かりな作戦を行うと仰っていたわね………」
「その作戦がまさか貴族連合軍の旗艦である”パンダグリュエル”の占領だったなんて………」
レンの答えを聞いたエリオットが驚いている中厳しい表情で推測を口にしたセリーヌの推測を聞いてある事を思い出したエマとジョルジュは不安そうな表情で呟き
「ま、待ってください!確かレン皇女殿下は私達にその作戦内容の一部は貴族連合軍の重要人物の殺害もしくは捕縛も含まれていると仰っていましたよね!?と言う事は貴族連合軍の重要人物の誰かの身に何かあったのですか……!?」
「うふふ、さすがトワお姉さん。中々察しがいいわね♪――――12月6日に行われた”パンダグリュエル制圧作戦”にて貴族連合軍の重要人物――――”総参謀”ルーファス・アルバレアの殺害に成功したわ♪」
「!!」
「な―――――」
「ええっ!?それじゃあ、アルバレア公爵達に続いてルーファスさんまでメンフィル軍に殺されたんですか!?」
「まさかあのルーファス殿まで討たれるとは………」
「そんな……ルーファスさんまで亡くなったという事はユーシスさんは家族全員失った事に………」
「ユーシス…………」
「………………」
トワの推測に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたオリヴァルト皇子は目を見開き、アルゼイド子爵は絶句し、アリサとラウラは驚き、悲しそうな表情で呟いたエマの言葉を聞いたガイウスとマキアスはそれぞれ辛そうな表情でユーシスの顔を思い浮かべていた。
「クスクス、それともう一つオリビエお兄さん達に良い知らせがあるわ。」
「……その良い知らせとはどういうものなんだい?」
レンの話を聞いたオリヴァルト皇子は真剣な表情でレンに訊ね
「以前”アルゼイド家”の宝剣をレンが返却しに行ったときに教えたでしょう?――――メンフィル軍の中で今回の戦争―――メンフィル・エレボニア戦争を和解へと持って行く為にこの戦争に参戦している人がいる話を。」
「確かにその話も口にしていたが何故このタイミングで………―――!まさか……ルーファス君を討った人物は今回の両帝国間の戦争を手柄をたてる事で和解へと持っていこうとしていた人物なのかい?」
レンの問いかけに戸惑いの表情をしていたオリヴァルト皇子だったがすぐに察しがつき、驚きの表情でレンに訊ねた。
「またまた、大正解♪その人物が貴族連合軍のナンバー2であり、知恵袋であった”総参謀”を討つという大手柄をあげた事で、今回の戦争による今までの手柄も合わせてエレボニア帝国侵略の為のメンフィル軍を率いている”総大将”であるパパ――――リウイ・マーシルン大使に直々に表彰と同時に”褒美”である両帝国間の戦争を和解へと持っていく事を叶えてもらったのよ♪」
「ええっ!?それじゃあ、本当にメンフィル帝国はエレボニア帝国との和解に向けて動く事になったのですか……!?」
レンの答えを聞いてある事を察したトワは信じられない表情でレンに訊ねた。
「うふふ、和解に向けて動くも何も、”既にエレボニア帝国との和解調印も完了しているわよ♪”」
「和解調印も既に完了しているですって!?一体どういう事よ!」
「エレボニア帝国の代表者であるユーゲント皇帝陛下もいないのに、どうやって和解調印を完了したんだ……!?」
「エレボニア帝国の代表者……そう言えばメンフィル帝国は貴族連合軍によって幽閉されているユーゲント皇帝陛下を含めたアルノール皇家の方々の居場所も掴んでいるとレン皇女殿下は仰っていましたわよね?」
「!まさか………メンフィル帝国は”パンダグリュエル制圧作戦”か、その後に行われた作戦で貴族連合軍によって幽閉されていた皇帝陛下達の中のどなたかを捕虜にして、メンフィル帝国が用意した和解条約書に調印させたのですか!?」
レンの説明を聞いたサラとトヴァルは驚きの声を上げ、シャロンが呟いた話を聞いてある事を察したクレア大尉は厳しい表情でレンに訊ねた。
「うふふ、その件も含めて今回の戦争の結末についての説明をちゃんとしてあげるから、”パンダグリュエル”の甲板に来てもらえるかしら?甲板に着陸した後は案内の人がオリビエお兄さん達をパンダグリュエル内にいるレンがいる場所まで案内してもらう手筈になっているわ。」
「ハハ……よりにもよって貴族連合軍の旗艦であった”パンダグリュエル”に”カレイジャス”を着陸させるなんてね………わかった。ちなみに”パンダグリュエル”は今どこにいるんだい?」
レンの話を聞いて疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子だったがすぐに表情を引き締めてレンに訊ねた。
「現在はバリアハート空港に停泊しているわ。そっちも知っていると思うけど、”パンダグリュエル”の甲板なら余裕で”カレイジャス”も着陸させて停泊する事も可能な広さだから、そのまま”パンダグリュエル”の甲板に着陸して大丈夫よ。」
「わかった。―――子爵閣下、すぐにカレイジャスをバリアハート空港に向かわせてくれ。」
「御意。」
その後オリヴァルト皇子達を乗せたカレイジャスはバリアハート空港に向かい、バリアハート空港に到着すると空港に停泊しているメンフィル帝国軍が占領した貴族連合軍の旗艦―――”パンダグリュエル”の甲板に着陸し、オリヴァルト皇子達はカレイジャスから甲板に降りたった。
~パンダグリュエル・甲板~
「こ、これがメンフィル帝国軍に占領された貴族連合軍の旗艦だった戦艦――――”パンダグリュエル”………」
「こうして改めて見ると滅茶苦茶大きい船だよね………」
仲間達と共に甲板に降り立ったマキアスとエリオットは驚きの表情で周囲を見回し
「……多分だけどアンちゃんの叔父さんが横流しした鉄鉱石は”機甲兵”にもそうだけど、この船にも使われているんだろうね……」
「第一製作所の取締役でログナー侯爵の弟でもあるハイデル・ログナー取締役か………」
「あ…………」
トワとジョルジュの会話を聞いたアリサはかつての事を思い出して呆けた声を出し
「もしかしたら横流しされた鉄鉱石の大半はこの戦艦に使われているのじゃないかしら?」
「横流しされた鉄鉱石の量は少なくても10万トリム――――”アハツェン”2000台分ですから、恐らくサラ様の推測は当たっているかと。」
「そして貴族連合軍が何年もエレボニア帝国の目を盗んで横流しして作った戦艦がメンフィルに奪われて利用されているなんて、皮肉な話だね。」
「鉄鉱石もそうだが、この戦艦を作るのにミラも滅茶苦茶かかっているだろうから、カイエン公達が平民達から徴収した税金もこの戦艦につぎ込まれていたんだろうな……」
「それは………」
サラの推測にシャロンは頷き、フィーの話とトヴァルの推測を聞いたラウラは複雑そうな表情をし
「………正直な所、”パンダグリュエル”が奪われた事はエレボニア帝国にとっても痛い話なんだよね………不当な方法で開発されたとはいえ、これ程の大規模な船なら戦争以外にも色々な使い道はあっただろうしね……」
「どうせメンフィルに奪った”パンダグリュエル”を返して欲しいって頼んでも、せっかく手に入れた戦艦を返してくれるなんてありえないしね~。」
オリヴァルト皇子は溜息を吐き、ミリアムは疲れた表情で呟いた。
「―――その通りだ。この”パンダグリュエル”も今回の戦争でメンフィルが得た”戦利品”。エレボニア帝国から返還の要請をされてもその要請に応える義務はない。」
するとその時レーヴェがオリヴァルト皇子達に近づいてきた。
「!!」
「あんたは……!」
「あ………っ!」
「ケ、ケルディックの時の……!」
「………”剣帝”。」
レーヴェに気づいたクレア大尉は目を見開き、サラは厳しい表情で身構え、エリオットとマキアスは不安そうな表情でレーヴェを見つめ、フィーは警戒の表情でレーヴェを見つめて呟いた。
「ええっ!?そ、それじゃああちらの銀髪の方がエリオットさん達がケルディックで戦ったという元結社の”執行者”なんですか………!?」
「貴方がケルディックでエリオット達を阻んだ………」
「………なるほど。教官とクレア大尉の加勢がありながら、エリオット達が敗北した話も頷ける。こうして相対するだけでも、貴方が尋常ならざる使い手である事が感じられる。」
「ああ。恐らく彼の実力は私とそれ程変わらない―――いや、もしかしたらそれ以上の実力の持ち主かもしれないな。」
レーヴェの事を知ったエマが驚いている中ガイウスは真剣な表情でレーヴェを見つめ、ラウラとアルゼイド子爵はそれぞれレーヴェの実力を感じ取った。
「ほえ~っ!?”光の剣匠”以上って、”剣帝”ってどんな滅茶苦茶な強さなの~!?」
「エステル達はよくそんなとんでもない相手を2度も退ける事ができたな………」
「ハハ、しかもエステル君達の話によるとどちらの戦いも彼は”本気”を出していなかったそうだよ。」
アルゼイド子爵の推測を聞いたミリアムは驚き、トヴァルは疲れた表情で溜息を吐き、オリヴァルト皇子は苦笑していた。
「フッ、少なくてもヨシュアとの一騎打ちの時は”本気”で剣を振るったがな。それと………話には聞いていたがまさかお前が放蕩皇子達に手を貸していたとはな――――執行者No.Ⅸ、”死線のクルーガー。”」
オリヴァルト皇子の言葉に対して静かな笑みを浮かべて答えたレーヴェはシャロンに視線を向け
「へ………シャ、シャロンさん、そちらの人とお知り合いなのですか!?」
「知り合いどころか、”仲間”なんじゃないのかしら?何せ、同じ結社の”執行者”なんだからね。」
「シャロン…………」
レーヴェの言葉を聞いたマキアスは驚いてシャロンとレーヴェを見比べ、ジト目でシャロンとレーヴェを見比べて呟いたサラ教官の推測を聞いたアリサは複雑そうな表情でシャロンとレーヴェを見つめていた。
「うふふ、お久しぶりですわね、レーヴェ様。”今の私”の”愛”と”献身”はお嬢様と会長―――”ラインフォルト家”に捧げられているのですから、私がお嬢様達と共にこの場にいるのも当然の流れですわ♪」
「フッ、相変わらず喰えない女だ。………それにしても以前会った時と比べると随分と珍妙な恰好をしているな?」
シャロンの答えを聞いたレーヴェは静かな笑みを浮かべてシャロンに問いかけた。
「まあ、心外ですわ。私は”ラインフォルト家”のメイドなのですからこの服装を身に纏っていて当然ですわ。第一レーヴェ様は私の今の姿を珍妙な格好と仰いましたが、私を含めたレーヴェ様を知る方々からすればレーヴェ様の今の格好の方が私よりも珍妙な格好なのですから、私の服装を”珍妙”と評価したレーヴェ様のお言葉、そっくりそのままお返し致しますわ♪」
レーヴェの問いかけに対して目を丸くした後微笑みながら答えたレーヴェに対するシャロンの指摘を聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「………確かに服装に関しては俺も他人の事は言えないな。」
「ハッハッハッ!まさかあのレーヴェ君から一本取るなんて、さすがはあのイリーナ会長の秘書を務めているだけはあるね♪」
「お褒め頂き、ありがとうございます♪」
レーヴェが口元に笑みを浮かべてシャロンの指摘に同意するとオリヴァルト皇子は声を上げて笑ってシャロンに感心し、オリヴァルト皇子の賛辞に対してシャロンは笑顔で会釈し、その様子を見守っていたアリサ達は冷や汗をかいて脱力した。
「やれやれ、この状況でありながらも道化を演じるとは………カンパネルラよりもお前の方が”道化師”の二つ名に相応しいのではないのか、放蕩皇子?」
オリヴァルト皇子の様子に呆れたレーヴェは静かな笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ
「いや~、私はその”執行者”とは会った事はないけど”執行者”と同列にされるなんて、ある意味光栄だね~。」
レーヴェの言葉に対して動じることなくいつもの調子で答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサ達は再び冷や汗をかいて脱力した。
「ああもう!このままじゃ話が進まないじゃない!それで、アンタが”殲滅天使”の話にあった案内人なのかしら?」
「セ、セリーヌ。」
呆れた表情で溜息を吐いたセリーヌは気を取り直してレーヴェに訊ね、セリーヌの言葉を聞いたエマは冷や汗をかいた。
「ああ。――――レン皇女がいる場所まで案内する。俺の後について来るがいい。」
セリーヌの問いかけに頷いたレーヴェはオリヴァルト皇子達に背を向けて歩き出し、オリヴァルト皇子達はレーヴェの後を追って行った。
~貴賓区画~
「な、何ここ………」
「ここって、本当に船の中なの……?」
「ほええ~……船の中とはとても思えない豪華な区画だね~。」
「四大名門の城館―――いや、バルヘイム宮と比べても遜色がない煌びやかな区画だな……」
「貴族連合軍はこの区画を作るのに平民達から絞り取った税金を一体どれ程注ぎこんだんだ……?」
貴賓区画に到着し、周囲を見回したアリサとエリオット、ミリアムは呆け、ラウラは真剣な表情で呟き、マキアスはジト目で周囲を見回していた。
「この区画は”貴賓区画”。カイエン公を含めた貴族連合軍の上層部達や貴族連合軍に協力している結社を始めとした”裏の協力者”達が休むために作られた区画だったそうだ。」
「カイエン公達が………」
「と言う事はこの区画は貴族連合軍のVIP達が休む為の区画だったようですね……」
「道理で船の中とはとても思えない豪華な区画にしている訳だな……」
「”裏の協力者”と言う事はゼノ達もここで休んでいたことがあるんだ………」
レーヴェの説明を聞いたガイウスは真剣な表情をし、クレア大尉は推測を口にし、トヴァルは呆れた表情で溜息を吐き、フィーは静かな表情で呟いた。そしてレーヴェは区画の一番奥にある扉へと向かい、扉の前で立ち止まった。
「―――この先にレン皇女がいる。俺の案内はここまでだ。」
「……わかった。わざわざここまで案内してくれて感謝するよ、レーヴェ君。ちなみに君がここにいるという事はプリネ姫やツーヤ君もこの艦にいるのかな?」
レーヴェの言葉に頷いたオリヴァルト皇子はレーヴェに感謝の言葉を述べた後ある事をレーヴェに訊ね
「フッ、その疑問については俺が説明しなくても後でお前達も知る事になるのだから、わざわざ答える必要はない。」
オリヴァルト皇子の質問に対して静かな笑みを浮かべて答えを誤魔化したレーヴェはその場から去っていった。
「ったく、本当にメンフィルがエレボニアと和解したんなら、そんな大した事のない情報くらい教えてもいいでしょうに。」
「うふふ、相変わらずですわね。まあ、”蒼の深淵”はレーヴェ様のああいう所にも惹かれていたのかもしれませんわね。」
去っていく様子のレーヴェをジト目で見つめながら呟いたサラ教官に続くようにシャロンは微笑みながら呟いた。
「え………ヴィ、ヴィータ姉さんが先程の”執行者”に惹かれていたというのは本当の話なんですか……!?」
「ええ。レーヴェ様に心を寄せていた”蒼の深淵”は御自分がレーヴェ様に振り向いてもらえるように様々なアプローチを行っていましたわ。――――最も”蒼の深淵”に興味がないレーヴェ様は彼女のアプローチを鬱陶しがっていましたが。」
驚きの表情をしているエマの質問にシャロンは苦笑しながら答えた。
「先程の”執行者”がヴィータ姉さんが心を寄せていた人だったなんて………」
「もし、クロチルダさんのファンの人達が知ったらショックを受けるだろうね……勿論僕も今ショックを受けたけど。」
「あ、当たり前だろう!?あの”蒼の歌姫”自身が心を寄せている羨ましすぎる男性がいたなんて話をファンが知ったら今もショックを受けている僕のようにみんな、ショックを受けて、下手したら失神する人が出るかもしれないんだぞ!?というかあの”蒼の歌姫”自らのアプローチを鬱陶しがるなんて、罰当たりすぎだろう!」
「ヴィータの正体を知ってもなお、よくそんな呑気な反応ができるわね、アンタたちは………」
「ア、アハハ……”蒼の歌姫”は帝都ではとても有名なオペラ歌手だったから、帝都出身の二人の反応も仕方ないと思うよ?」
シャロンの説明を聞いたエマは信じられない表情で呟き、トワは苦笑しながらエリオットとマキアスの呑気な反応に呆れているセリーヌに指摘した。
「フッ、これは良い事を聞いたね♪……―――さてと。いい加減レン君も待ちくたびれているだろうし、そろそろ部屋に入ろうか。」
「一体どんな話を聞かされる事になるんでしょうね………?」
「……ここで問答をしても意味は無い。――――殿下。」
オリヴァルト皇子に続くように不安そうな表情で呟いたジョルジュに指摘したアルゼイド子爵はオリヴァルト皇子を促し
「ああ。」
アルゼイド子爵の言葉に頷いたオリヴァルト皇子は扉をノックした。
「うふふ、ようやくレンのお話を聞く覚悟が決まったみたいね。――――鍵は開いているからそのまま入っていいわよ。」
「――――失礼する。」
扉の内側から聞こえてきたレンの許可を聞いたオリヴァルト皇子が扉を開けてアリサ達と共にパーティーホールに入るとパーティーホールには会議用のデスクと椅子が置かれてあり、そしてレンが一番奥の席に座り、オリヴァルト皇子達を迎えた―――――
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