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グランドソード~巨剣使いの青年~

作者:清弥
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第3章
2節―”神殺し”を追い求めて―
  望むもの

 ソウヤが走り抜けた先にあったもの、それは”巨大な樹”だった。
 とてつもなく大きく、人目で100m以上ありそうに見える。

「…こんなデカイ樹、さっきまでは全く見えなかったんだが」

 結局それも魔法で収まるのがファンタジークオリティ。
 それについては考えるのを放棄したソウヤは、真上を向かなければ見えないほど巨大な樹に近づいていく。

 ―…ここに、”神をも殺せる力”が眠っている。

 ソウヤは目の前の樹を見た。

 ―どう見てもこの樹が怪しい。

 ゲーオタ当然の考えをして、ソウヤは巨大な樹の目の前で立ち止まる。
 ゆっくりと樹に触ろうと手を伸ばした。

 冷たくもどこか暖かい感覚がソウヤに走る。
 まるで、生命の鼓動を感じているようだった。

 この暖かさを急にもっと深く感じたくて、眠るようにソウヤは目を閉じ――




「お前は何を望む」




 ――脳に響く声が聞こえ、ソウヤは一瞬にして身体を覚醒させた。

「ッ!」

 今まで声の主に気づかなかったことに驚愕しながらも、後ろに下がり…気付く。

「……どこだ、ここ」

 そこは、神殿の祭壇に似ていた。
 ソウヤを中心として、大理石が円状に敷き詰められ柱がそれを支えるように佇んでいる。

「お前は何を望む」

 同じセリフ・同じ声が今度は明確に聞こえソウヤは声のする方へ身体を向けた。
 そこには炎のように純粋な赤の髪を持つ巨体の男がいる。

 そして無意識に雪無を携えている左腰に手を当てて……そこに何もないのに気が付いた。
 慌てて身体を見てみれば――

「なんで…」

 ――ソウヤは最低限以上のものを身に着けていなかった。

「再度問う」

 驚く時間をソウヤに与えず、現象は次々に襲いかかっる。

 次は優しげな声が響いて、その方へ向くとハワイの海を思い出す鮮やかな色をした髪をした女性が炎と共に現れる。

「お前は何を望む」

 次の瞬間、今現れた2人合わせて合計で6人もの男性と女性がソウヤの周りに現れた。

「のぞ…む?」


 まるでソウヤの問いに答えようとせず、炎のように赤い髪の巨体の男性が――

全てを壊す力(破壊)か」

 ハワイの海のように鮮やかな髪をしたお淑やかな女性が――

全てを癒やす力(癒し)か」

 身長が子供のように小さく、だが威圧がすさまじい男性が――

全てを守る力(守り)か」

 お転婆そうな黄緑色の髪をした少女が――

全てから開放される力(自由)か」

 気の強そうで、鋭い目をした金色の髪をした女性が――

全ての世界の理の力(自然)か」

 黒髪黒目の、この中でもっともソウヤに似ている容姿をした男性が――

全てを創りだす力(創造)か」

 最期に、全員の声が合わさり――

「お前は何を望む」


 そのセリフを全て聞いた後、ソウヤは悟った。
 試されているのだ…と。

 ―……ただ、俺にとっては関係のないことだけど。

 途中から悟っていたソウヤは、とっくに答えは決まっていたのだ。

「俺は――」

 大きく息を吸い、これに反応してくれるか半信半疑になりながら小さく、されど覚悟の決まった声でそれを言った。

「――全てを望まない」

 ソウヤが出した答えは、破壊・癒し・守り・自由・自然・創造全ての力を拒否するものだった。

 沈黙。

 反応を示してくれないので、ソウヤが判断をしくじったかっ!?と思い始めたその時、赤髪の男性が口を開く。

「お前の望み。確かに聞きとった」
「その心意気は良いでしょう」
「だが、小僧は望まくしてどう戦う」
「あたし達の力無しに」
「妖精よ、あなたは戦えるのですか」
「何も出来ないお前に」

「――一体、何が出来る」

 順に炎・水・土・風・木・鋼の人々はソウヤに問う。
 ――力を拒否し、何が出来るのかと。

「――じゃあ、言わせてもらうよ。俺の望み」

 それに答えるようにソウヤは口にする。
 ソウヤには破壊も、癒しも、守りも、自由も、自然も、創造もいらない。
 大体、そんな力を手に入れてどうするというのか。

「俺の望みは1つだ」

 ソウヤは不敵な笑みを浮かべる。

「創造神を倒して元の世界に帰る…叶えてみろよ」

 挑発的なソウヤの言動に、周りの人々は静かに殺気立つ。
 それを「はっ!」と弾き飛ばしたソウヤは鋭い視線を全員に交わす。

「俺はそれしかいらない。俺は――」

 故にソウヤは否定する。

「――俺は、妖精の力なんていらない」

 今の今まで自身を助け、最強たらしめてきたその力を。

「――――――――」

 予想外だったのだろうか、ソウヤを囲む人々は答えることは出来なかった。
 力を欲しがるどころか、拒否するなんて夢にも思わなかったのだろう。
 だが、しばらくの沈黙の後、炎の人はソウヤに語りかける。

「……お前の望み、確かに受け取った。お前に力を託そう」

 こいつ、俺の言葉を聞いていなかったのだろうか。
 炎の人から出た言葉はソウヤをそう思わしても仕方のない事だった。

 それを理解しているのか、水の人は笑う。

「安心して。今から託すのは、妖精の力じゃない」

 やれやれと土の人は肩をすくめる。

「流石にあれだけ言われりゃ渡せねぇよ」

 風の人は呑気に空中に身体を寝かせながら面白そうに笑った。

「それにしても変だよネ、君ってサ」

 木の人は全くだと苦笑いを浮かべる。

「どれかを選ぶか全てをくれなんて言うと思ったんだが」

 鋼の人は呆れたように、だがどこか嬉しそうな複雑な表情。

「まぁ、これで僕達の役目は終わった。最期に力を化すことは出来ないからね」

 炎・水・土・風・木・鋼の人々はソウヤに手を差し伸べると、言った。

「汝に、力を託そう。汝に相応しき力を――」

 ――ソウヤの視界が揺れてゆく。

 ―…意味、わかん…ね、え……。

 そう愚痴りながらソウヤは意識を落とした。




「――いやぁ、それにしても彼。本当に面白かったネ」
「それには賛同するよ、シルフィア」

 彼が消えた後、風の総神(シルフィア)は無邪気に笑いながらそう言った。
 それに賛同するように木の総神(エルフィア)は頷く。

「全てを拒否するとは思わなかったな」
「なんか、逆に”全てくれぇ!”とか言うと思ってたぜ」

 炎の総神(ガルフィア)は驚いたことを隠せない様子だ。
 小柄な地の総神(グルフィア)は両手を頭の後ろで組んで自分の思ったことを言う。

「渡した力…。あの青年は大丈夫でしょうか?」
「問題無いだろう、アイツは喜ぶはずだ」

 水の総神(ウォルフィア)は心配そうに呟くが、それに鋼の総神(ヒューマフィア)は安心させるように小さく呟いた。

「にしても、まさかあの神さんが容易してるとは思わなかったなぁ」
「あぁ、あの力ですか?」
「確か、名前ハ――」

 ガルフィアがびっくりしたように呟くと、ウォルフィアが賛同する。
 さきほど頭に入ったばかりの名前を一生懸命掘り出そうとするシルフィア。
 そこに、ヒューマフィアが仕方なさそうに呟いた。

「――全てを拒否する力(人間)だ」

 その後しばらくの間、世界全ての気候を操る炎・水・土・風・木・鋼の6神はその祭壇で話していた。
 殆ど、ソウヤのことについて…だが。




「――ッ!!」

 ソウヤは意識が覚醒するのを感じ、目を一気に開ける。
 周りの景色は、さきほどと違い木々に覆われた森だ。
 ソウヤの目の前には巨大な樹がずっしりと立ち構えていた。

 不意に、ソウヤは身体中に違和感があるのに気付く。

 身体はまるで重りが無くなったかのように軽くなっているのだ。
 そして、ソウヤ自身の身体の中から”魔力”が感じなくなっていたのである。

「どういう…。ステータスはどうなっている!?」

 ソウヤはステータスのことを思い出し、ステータスを見つめ…絶句した。

「MP…0?魔法の類も無くなっている…」

 ステータスは、魔法という概念がソウヤから無くなったことを知らせている。
 ただ、それと同時に別の物も増えていた。

「空間操作と…”全てを拒否する力(人間)”…?」

 あまりに多くのことが怒号のように起きたため、ソウヤは大半の頭をショートさせていて――

 ――突然鼓膜を揺らす凄まじいほどの重低音と地震かと思うほどの地面の揺れ。

「っ!?そういやルリたち…!」

 ―力手に入れたのか?入れられてないのか?説明ぐらいいれろよ馬鹿野郎っ!

 樹に触れる前との違いは3つ。
 1つは身体が異常に軽い。
 次は魔力がソウヤから無くなり、それにより魔法が使えなくなった。
 最後に空間操作と”全てを拒否する力”がステータスに増えたこと。

「一応、力を手に入れたと思っても良いんだな!?クソッ!」

 ソウヤは悪態を吐きながら、雪無を抜き放ち一歩踏み込み――

「ッ!?」

 文字通り、身体が吹っ飛んだ。
 今までとは比にならないほどのスピードがソウヤを支配する。
 刹那もかからない内に、ソウヤはゴーレムの目の前にいた。

 そのゴーレムは剣を振り下ろそうとしている最中で、ソウヤは無我夢中に

「らあっ!」

 雪無を振るった。

 ――音が、無かった。

「は?」

 ――感触も、無かった。

 気がつけば――

 ―…意味、わかんねぇ。

 ――あれほど傷つけられなかったゴーレムの剣を、ソウヤは切り裂いていた。

 考えている暇は無いと、すぐに今の光景に対する思考を消去してソウヤはゴーレムに構える。
 そして、脳が混乱しながらも――

「…ただいま」

 ――ゴーレムと相対する。 
 

 
後書き
――彼が望むのは、世界の規則を”拒否する”こと。


ソウヤの現ステータス。
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ソウヤ 19歳 種族…人間

ランク…B 次ランクまで…90依頼
装備品…雪無 龍鱗の軽鎧 王の靴
二つ名…『均等破壊《バランスブレイカー》』
    『幻想騎士《ファンタジアナイト》』
    『英雄《ブレイヴァー》』
称号…瞬死の森の主を倒した者 全ステータス×2
   亡霊を扱い解放した者 亡霊解放によって上がるステータス×2
   魔族に恐れられし者 魔に対してステータス×3
   神域の剣術者 剣を扱うとき全ステータス×3
希少能力…無し
特殊能力…黄の紋章 HP残り半分になると全ステータス×5
     特殊能力記憶《エキストラスキルコピー》 タイ捨流派
メインスキル…剣神 下級(20/10000)
サブスキル…肉体強化 王級(3473/12000) 体術 達王級(2689/7000)
      剣術 王神級(MAX)  常時HP回復 王級(8937/10000)
      異常状態無効 王神級(MAX) 空間操作(MAX)
      神剣術 下級(20/30000) 生活術 王神級(MAX)
      全てを拒否する力(人間)(MAX)
残りスキル…月文字騎士《ルーンナイト》 中級(1000/3000)
魔法使い 上級(120/1500) 
     戦士 王神級(MAX) 
      英雄剣士《ブレイヴァー・ソーカル》 下級(0/1500)
HP7254万 MP0 攻撃力908万 防御力739万 素早さ2030万 魔法力867万 腕力1万
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