恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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25部分:第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその十二
第二話 張三姉妹、太平要術を授かるのことその十二
「あんたも元気そうだな、こっちの世界でも」
「まあのう。しかしビリーよ」
その老人リー=パイロンはビリーの言葉に応えながら話す。
「どうやら他の者も大勢この世界に来ておるようじゃな」
「へえ、そうなのか」
「そうじゃわし等だけではない」
そうだというのだ。
「どうやら何か賑やかなことになっておる」
「じゃあテリーもいるんだな」
ここでビリーの顔が少し鋭いものになった。
「あいつも」
「そうじゃろうな。しかし今のわし等はじゃ」
「そうだな。同じ窯で焼いたパンを食う仲になったな」
「うむ。ここでは米が多いようじゃが」
それでもそういう仲になったというのである。
「宜しくのう」
「ああ、それじゃあな」
「ふむ」
アクセルはここでもう一人来たのも見た。それは金髪で丸々と太った人相の悪い男である。一見するとまるで熊である。その男も来たのだ。
「確かジャック=ターナーだったな」
「そういうあんたはローレンス=ブラッドだったな」
ジャックは首を左に傾げさせながらローレンスに返した。
「あんたの話は聞いてるぜ。天才闘牛士だったな」
「向こうの世界ではな。そして貴殿は」
「今はここで飯を食わせてもらってるさ。とはいっても誰にも仕えているつもりはないけれどな」
それはないというのである。
「それでもここにはいるさ」
「そうか。では同僚ということでいいな」
「そう思うならそれでいいさ。しかしサウスタウンとはまた違ってな」
ジャックはここで周囲を見回す。そのうえでの言葉であった。
「ここもここで面白いみたいだな」
「その様だな。それではだ」
「ああ、これからもな」
「宜しく頼む」
こう話してであった。今はその会合を楽しむ彼等だった。だが大きな謎はそのままだった。袁紹は自室に戻ってから。一人の少女に対して言うのであった。
「どう思いますの?」
「彼等ですか」
「ええ、そうですわ」
その彼女に顔を向けての言葉だった。赤いロングヘアで青地で白いフリルの多い膝までのスカートの服と水色のストッキングの少女だ。青い目は澄んでいて純朴な印象を見る者に与える。そうした少女だった。
その少女に顔を向けたまま。また言ってきた。
「審配、どう思いまして?」
「真名で御呼び下さい」
審配と呼ばれた少女は静かにこう返してきた。
「いつもの様に」
「わかりましたわ。それでは神代」
「はい」
「貴方はどう思いまして?あの者達は」
「人間としてはです」
その少女審配はここでまた言ってきた。
「武勇が特にですが」
「凄いものですわね」
「はい、それにです」
さらに言う審配だった。
「どの者も頭の回転も悪くはありません」
「いい人材なのは間違いありませんわね」
「謀反の心配もないかと」
次にこのことについて話すのだった。
「そうした野心は見受けられません」
「しかしそれでもですわね」
「はい、問題はです」
審配の顔が曇った。
「それではありません」
「何故この世界に来ているかですわね」
「その通りです。それがわからないのです」
問題はそれなのだった。
「彼等の話によりますとこの世界とは別の世界から来た」
「そんな世界がありますのね」
「そのこと自体が信じられません」
審配の言葉はまた怪訝なものになっている。
「世界が複数あるのでしょうか」
「わかりませんわ。華琳、いえ」
ここで言葉を訂正させた。
「曹操のところにも何人か来ていますし」
「そうですよね。なぜここで急に何人も出て来たのでしょうか」
「これまでなかったというのに」
彼等はとにかく今の状況が理解できなかった。
「どうしてでしょうか」
「全くわかりませんわね。ただ」
ここでさらに話す袁紹だった。
「彼等自身もわかっていませんし。これからのことは」
「はい、これからは」
「まずは彼等はそのまま迎えますわ」
そうするというのである。
「このまま」
「はい、それではその様に」
こう返す審配だった。話はとりあえずはそれで終わった。
だが謎は解き明かされはしない。そのまま残っていた。そしてそれを解くことは今は誰にもできなかった。だが大きなうねりが生じ続けていた。それだけは間違いなかった。
第二話 完
2010・3・22
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