英雄伝説~灰の軌跡~
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外伝~メンフィル・エレボニア戦争の和解調印式~ 第9話
~空中庭園~
「”エイドス様が果たすべき目的”………?」
「それに”この時代”という言葉も気になりますね………」
「まるで”空の女神”自身がこの時代にいる存在ではない言い方に聞こえるな………」
(!まさか……ミントちゃんがエイドス様をこの時代に……!?)
(せ、先輩。もしかして”既に亡くなっているはずの空の女神が生きてこの時代に現れる事ができた”のって………!)
(どう考えても未来、過去、現代と時空を自由自在に駆ける事ができるミントにこの時代に連れてきてもらったのでしょうね……はあ………あの娘は一体何を考えて、”空の女神”をこの時代に連れてきたのかしら?)
エイドスの答えを聞いたユリア准佐が不思議そうな表情で首を傾げている中エルナンとカシウスの会話を聞いて”本来この時代に存在していないはずのエイドスが存在している”理由を察したクローディア姫は血相を変え、クローディア姫同様心当たりがあるアネラスと小声の会話をしていたシェラザードは疲れた表情で溜息を吐いてある人物の顔を思い浮かべた。
(ふふ、相変わらず敏いな、”剣聖”。其方の推測通り女神は遥か昔にこの世を去っている為本来ならこの時代では生きていない。)
「な―――――」
「ええっ!?で、では今わたくし達の目の前にいる女神様は一体……」
レグナートの説明を聞いたカラント大司教が絶句している中アリシア女王達と共に驚いたアルフィン皇女は戸惑いの表情でエイドスを見つめた。
「………レグナートの言う通り、本来ならば”私はこの時代に存在してはいけない存在”――――”過去の存在”です。ですが私は時空を自由自在に駆ける事が可能な存在の導きによって、私にとって未来であるこの時代に降臨し、この時代での私の目的を果たす為に一時的に活動をする事にしました。」
「なっ!?と言う事は御身がこの時代に降臨する事ができたのは……!」
(やっぱり………でも、どうしてミントちゃんが………)
「じ、時空を自由自在に駆ける事ができる存在ですと……!?」
「そ、そんな女神様と並ぶ凄まじい存在がいるなんて………」
「レグナート、まさかとは思うがその時空を自由自在に駆ける存在とやらもお前と同じ”眷属”の仲間なのか?」
エイドスの説明を聞いて驚いたユリア准佐は心当たりがある人物を思い浮かべ、クローディア姫は複雑そうな表情でユリア准佐が思い浮かべている人物と同じ人物の顔を思い浮かべ、ダヴィル大使とアルフィン皇女が信じられない表情をしている中カシウスは疲れた表情でレグナートに問いかけた。
(ふっ、さすがに我が同胞達に女神と並ぶそのような非常識な能力を持つ者はいない。その者はこの世界で生きる事を決めた異界からの漂流者だ。)
「そうなるとエイドス様をこの時代に連れてきたその存在はこのゼムリアとは異なる世界――――メンフィル帝国の本国がある世界の出身者ですか………」
「シルヴァン陛下達はその存在をご存知なのですか?」
レグナートの指摘を聞いたエルナンが考え込んでいる中アリシア女王はシルヴァン達に訊ねた。
「我等の世界に存在する”時空”に関する存在なら心当たりはあるが、恐らくその存在ではないだろうな。その存在がわざわざ異世界であるゼムリアの為に動くとは到底思えん。」
「……参考までにその存在はどのような存在なのかお教え頂けないでしょうか?」
シルヴァンの答えが気になったカラント大司教はシルヴァンに訊ねた。
「その存在とは――――時空を操る女神―――”エリュア”だ。」
「フフ、最初に言っておきますがさすがに私自身は時空を操る事はできませんよ?」
「そ、”空の女神”でも不可能な事ができる力を持つ女神が異世界には存在しているのですか………」
シルヴァンに続くように苦笑しながら答えたエイドスの話を聞いたダヴィル大使は驚きの表情で呟いた。
「ですがレグナート殿のお話ですと、エイドス様をこの時代に連れてきた存在とは別の存在に聞こえますね………」
「”このゼムリア大陸で生きる事を決めた”との事ですからな……一体誰が、何の目的で”空の女神”を……」
「「「………………」」」」
アリシア女王とカシウスの会話を聞き、二人が気になっている存在が誰であるかを知っていたクローディア姫やユリア准佐、シェラザードとアネラスはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「話を戻します。肝心の私がこの時代で果たすべき私の目的ですが…………―――遥か昔に消滅した至宝と同じ存在を生み出すことに取り憑かれた一族の野望を阻止する事です。」
「”至宝”と言う事は”輝く環”と同じ”七の至宝(セプト=テリオン)”ですか………」
「し、しかもその”至宝”が既に消滅し、愚かにもその至宝と同じ存在を生み出そうとしている者達がいるとは………エイドス様、御身の怒りに触れたその愚かな一族とは一体何者なのでしょうか?」
エイドスの説明を聞いたクローディア姫が不安そうな表情をしている中カラント大司教は驚きの表情で呟いた後真剣な表情でエイドスに訊ねた。
「………今は話す時ではありません。いずれ貴方達七耀教会が知る時が必ず訪れます。ただその一族は既に消滅した至宝を見守っていたレグナートと同じ私の”眷属”である”神狼ツァイト”の話によると”D∴G教団”という組織を傀儡にしていたとの事です。」
「!!」
「”D∴G教団”だと!?」
「まさかかの”教団”の名がここで出てくるとは……そうなると”D∴G教団”の”真の目的”は皮肉にも彼らが否定していた存在―――”空の女神”が人々に授けたと伝えられている”七の至宝(セプト=テリオン)”と同じ存在を作り出す事だったようですね………」
エイドスの説明を聞いたアリシア女王は目を見開き、カシウスは厳しい表情で声を上げ、エルナンは真剣な表情で呟いた。
「数年前に”D∴G教団”が起こした悪行についてもエステルさん達から聞いています。そして私が阻止しようとしているその一族の野望はこのゼムリア大陸どころか、ゼムリア大陸にとって異世界であるディル=リフィーナのあらゆる存在、現象を歪める双界の危機。」
「何ですと!?」
「ゼ、ゼムリア大陸どころか異世界にまで危機が訪れようとしているなんて………」
「………!まさかエステル達はその一族の野望を阻止する為にエイドス様と共に行動しているのですか……!?」
エイドスの説明を聞いたダヴィル大使は驚き、アルフィン皇女が不安そうな表情をしている中ある事に気づいたカシウスは驚きの表情でエイドスに問いかけた。
「フフ、今までの話で私がエステルさん達と一緒に行動している事を察するなんてエステルさん達のお話通りとても聡い方ですね。」
「なっ!?」
「!それじゃあエステルさん達は今御身と御一緒に行動を……!?」
エイドスの説明を聞いたユリア准佐は驚き、クローディア姫は信じられない表情でエイドスに訊ねた。
「ええ。ちなみにお母様達もそうですが、”影の国”で出会った私とお母様の”先祖”達もその一族の野望を阻止する為に私同様私をこの時代に連れてきてくれた存在によってそれぞれの時代から導かれ、私と共にこの時代にいますよ。」
「ハアッ!?って事はアドルさん達までこの時代にいるって事じゃない……!」
「それどころか”空の女神”の”先祖”って事はナユタ君達もいるという事ですからナユタ君と常に一緒のノイちゃんも当然この時代にいるって事ですよね♪」
エイドスの話を聞いてある人物達までこの時代にいる事を察したシェラザードは驚き、アネラスは嬉しそうな表情をした。
「フフ………それと”影の国”に関わった貴女達にとってはある意味縁がある方達もこの時代に導かれ、私の目的を果たす助力をしてくれています。」
「ふえ………?」
「アドル殿達以外で我々と縁がある人物……?」
「一体誰かしら……?ヴァイスさん達もこの時代にいるし、もう”影の国”関連の過去の人物達でアドルさん達以外であたし達と縁がある人なんていないわよね?」
「あの……その方は一体どなたなのでしょうか?」
”影の国”に関わったアネラス達がそれぞれエイドスの話を聞いて首を傾げている中クローディア姫はエイドスに訊ねた。
「ルフィナさん、出番ですよ。」
「―――わかりました。」
そしてエイドスが背後へと振り向いて声をかけるとレグナートの背後からピンクブラウンの髪の騎士装束を纏った女性が現れた。
「君は……」
「え………あ、貴女は確か”影の国”の”紫苑の家”の地下に現れたリースさんの……!」
騎士装束の女性を見たカシウスとクローディア姫は驚きの表情をしたその時
「――――私の名はルフィナ。七耀教会封聖省”星杯騎士団”所属”正騎士”ルフィナ・アルジェント。以後、お見知りおきを。」
騎士装束の女性―――ルフィナは自己紹介をした。
「ルフィナ・アルジェント―――”千の腕”ですと!?」
「なっ!?と言う事は貴女がリース殿の……!」
「ちょ、ちょっと待ってください!ケビンさん達の話だとルフィナさんは数年前に亡くなっていますよね!?なのにどうして、今こうして生きてこの場に……」
「!まさか……貴女もアドルさん達同様、貴女が生きている時代からアドルさん達をこの時代に導いた”あの娘”の力によって導かれたの……!?」
ルフィナの名を知ったカラント大司教は信じられない表情で声を上げ、ユリア准佐は驚き、困惑の表情をしているアネラスの疑問を聞いてある事を察したシェラザードは真剣な表情でルフィナを見つめて問いかけた。
「―――そういう事です。ルフィナさんには正直な所、申し訳なく思っています。”歴史の流れ”を守る為とはいえ、エステルさん達と違って何の縁もない貴女まで私の事情に巻き込んだのですから……」
「御身が”星杯騎士”である私に対して罪悪感等を感じる必要は一切ございません。”星杯騎士・心得六箇条”の内容の内”その魂は空なる女神に血肉は七耀に捧げるべし。”と”三界の秩序と安寧を保つべし。 ”があります。ですから、私は ”星杯騎士”として当然の事をしたまで―――いえ、むしろとても光栄な事だと今でも思っております。御身が挑む”聖戦”に”守護騎士”でもない私如きが御身を助力する栄誉ある騎士の一人として選ばれたのですし、それに……………本来ならば叶える事ができなかった事――――成長したケビンやリースをこの目で見る事もできるのですから。」
シェラザードの推測に頷いた後申し訳なさそうな表情で見つめてきたエイドスにルフィナは静かな表情で答えた後優し気な微笑みを浮かべた。
「あ………………」
「…………………」
ルフィナの話を聞いたクローディア姫は辛そうな表情をし、カシウスは重々しい様子を纏って目を伏せて黙り込んでいた。
「それとこの場にはいませんが、今より遥か未来に生きるエステルさんのご息女であるサティア・ブライト・シルフィルさんもこの時代に導かれ、私の目的に協力してもらっています。」
「な―――――」
「なっ!?エ、エステル君のご息女に生まれ変わったサティア殿までこの時代に……!?」
「あ、あはは……冗談抜きでラピス姫達を除いて”影の国”の時のメンバーが私達の時代に勢ぞろいしちゃいましたね、先輩……」
「これも全て目の前にいる”空の女神”―――いえ、”ブライト家”の導きと言うべきかしらね………」
「それにサティアさんの名に”シルフィル”がついているという事は生まれ変わったサティアさんは間違いなくセリカさんとようやく結ばれる事ができたのでしょうね………」
エイドスの説明を聞いたカシウスが絶句している中ユリア准佐は驚き、アネラスは苦笑し、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、クローディア姫は冷や汗をかいてカシウスを気にしながら苦笑していた。
「カラント大司教。恐れながらケビ―――いえ、グラハム卿とシスターリースに伝言をお願いしてもよろしいでしょうか?」
するとその時ルフィナがカラント大司教の話しかけた。
「……私でよければ承ろう。」
「寛大なお心遣い、ありがとうございます。―――――『必ず私と貴方達が邂逅する時が来るわ。だからそれまで私の存在に囚われず自分達の為すべき事に集中しなさい。』―――そうお伝えください。」
「……了解した。必ず伝えよう。」
ルフィナのある人物達に対しての伝言を受ける事を決めたカラント大司教は静かな表情で頷いた。
「―――さてと、私達はそろそろ失礼させてもらいますが……その前にそちらの七耀教会の方、”ハーメル”の件とは別に教皇を含めた七耀教会の上層部達にお伝えして欲しい事があります。」
「御意。私如きでよろしければ、幾らでも伝言を承ります。教皇猊下達に何をお伝えすればよろしいのですか?」
「私は将来産む事になる私の子供を含めた私の子孫達は”普通の人”として生きる事を願っています。ですから私の子孫である”ブライト家”を特別扱い―――例えば”ブライト家”の人々を七耀教会の神輿として利用したり、七耀教会の要職に就いてもらう要請等する事は”空の女神”であるこの私自身が絶対に許さないとお伝えください。」
「それは…………」
「エイドス様………」
「………………」
「我々”ブライト家”の為にわざわざそのような念押しをしてくださり、ありがとうございます。」
エイドスの伝言の内容を聞いたカラント大司教が複雑そうな表情で答えを濁している中クローディア姫は驚き、アリシア女王は重々しい様子を纏って黙り込み、カシウスは静かな表情でエイドスを見つめて会釈した。
「貴方達七耀教会は私を崇めているとの事ですから、当然私の意向に従ってくれるのですよね?」
「……ッ!ぎょ、御意……!御身のご意向は必ず教皇猊下達にお伝えし、御身のご意向を必ず守る事をこの場でお約束致します……!」
膨大な神気を纏ったエイドスの有無を言わせない問いかけに息を呑んだカラント大司教は会釈をして返事をした。その後エイドスとルフィナはレグナートの背に乗った。
「――――それでは私達はこれで失礼させてもらいます。”私の目的”を果たした後、”影の国”でお世話になった方達にご挨拶とお礼を申し上げる為に”今度は”お父様達と一緒に改めてこの国を訪問させて頂きますね。――――レグナート。」
(承知。)
そしてエイドスとルフィナを乗せたレグナートはグランセル城から去っていった。
「行ったか………」
「まるで”嵐”のような出来事でしたね………」
レグナートが去っていく様子を見守っていたカシウスは静かな表情で呟き、エルナンは重々しい様子を纏って呟いた。
「さてと……色々あって話が混乱してきたが話を和解調印の件に戻させてもらう。アルフィン皇女、第六条については反論や緩和条件の嘆願等はなく、受け入れると言う事でいいのだな?」
「………はい。女神様にもお誓いしたのですから、”第六条”は反論等は一切ござい―――いえ、そのような愚かな事を望む等エレボニア皇族として失格ですわ。」
「皇女殿下………」
シルヴァンに問いかけられて決意の表情で答えたアルフィン皇女の答えを聞いたダヴィル大使は複雑そうな表情をしていた。
「―――これで後は我々が持ってきた和解条約内容の一部を変更した”和解条約書”を用意し、私とアルフィン皇女を含めたそれぞれの立場の代表者達が調印すれば完了と言う事でいいのだな、クローディア姫?」
「あ……はい。すぐに条約内容の一部を修正した正式な”和解条約書”の用意をさせますので、少々お待ちください。」
「……その前にいくつか訊ねたい事があります。シルヴァン陛下、一体どのような手段で”空の女神”と接触し、”空の女神”を今回の件に関わ―――いえ、まさかとは思いますが”空の女神”と何らかの取引をして、”空の女神”を味方につけてメンフィル帝国が用意した”和解条約書”をエレボニア帝国に呑ませる為に”空の女神”をこの場に呼び寄せたのでしょうか?」
シルヴァンの問いかけにクローディア姫が頷くとアリシア女王がシルヴァンに問いかけた。
「―――いくつか誤解があるようなので、その誤解を解く必要があるようだな。まず”空の女神”と接触した方法だが……”空の女神”自身が転移魔術等の類で突如父上―――リウイ・マーシルン大使の前に現れたとの事だ。」
「なっ!?で、では”空の女神”自らリウイ陛下と接触なされたのですか……!?」
シルヴァンの話を聞いて驚いたユリア准佐は信じられない表情でシルヴァンに訊ねた。
「はい。ちなみに”空の女神”がリウイ陛下と接触した時期は今回の両帝国の戦争が勃発する前日で、その際にメンフィルがエレボニアとの和解をせず、エレボニアを占領した際もエレボニアに”ハーメルの惨劇”を公表させる事を要請したとの事です。」
「エイドス様がリウイ陛下にそのような要請を………」
「……つまりどの道エレボニアは”ハーメルの惨劇”を公表しなければならなかったのですか………」
「………………」
セシリアの説明を聞いたアリシア女王は驚き、ダヴィル大使は疲れた表情で肩を落とし、アルフィン皇女は辛そうな表情で黙り込んでいた。
「―――父上も正直面喰ったとの事だ。何せ”空の女神”ときたら、父上に”ハーメルの惨劇公表”の件に加えて現代で活動する為に自分達の偽の戸籍の用意まで要請したとの事だからな。」
「なっ!?エイドス様がリウイ陛下―――いえ、メンフィル帝国にそのような要請までされたのですか……!?」
「”空の女神”は一体何の為に異世界の国であるメンフィル帝国にわざわざ偽の戸籍を作らせたのでしょうね……?」
苦笑しながら答えたシルヴァンの説明を聞いたカラント大司教が驚いている中エルナンは複雑そうな表情で考え込んでいた。
「さてな。それこそ言葉通り”女神のみぞ知る”だな。―――これで我等メンフィルに対する誤解は解けたかな、アリシア女王?」
「………ええ。それでは皆さん、正式な”和解条約書”の作成が終わるまでの間は客室でご休憩下さい。作成が終わりましたら、すぐにお呼び致します。」
その後―――――両帝国の和解交渉によってできあがった正式な”和解条約書”に両帝国を含めたそれぞれの代表者達が調印した事によって、”メンフィル・エレボニア戦争”は終結した。更に、和解調印式終結後アルフィン皇女は和解条約の第五条の実行の為にセシリアと共にバリアハート空港に停泊しているメンフィル帝国が占領した”パンダグリュエル”に向かう事となり、アルフィン皇女は帰国の前にアリシア女王達に別れの挨拶をしようとしていた。
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