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第二章

「ギャンブルも悪い遊びもしてないです」
「ヒーローに相応しい」
「そうした風になってます、まあ酒は好きですがね」
 笑ってまたこのことを言いはした。
「それでもですよ」
「まあお酒位はいいけれどね」
「はい、けれど本当に俺はヒーローだって思うと」
「生活もだね」
「しっかりします、あの初代さんみたいに七十五を過ぎても」
 老人と言うしかない年齢になってもというのだ。
「ああした引き締まった身体でいたいですね」
「あれで七十代だからね」
「それも半ばですから」
「信じられないね」
 立石もこう言う。
「本当に」
「全くですよ、ですが」
「あの人を目指すんだね」
「そうします」
 何としてもというのだ。
「俺も」
「そこまで言うのなら」
「これからもですね」
「そう、頑張るんだよ」
「そうします」
 徹也は確かな笑みで答えた、そうしてだった。
 ヒーローというそのことに自分も律するものを感じながらだ、そうして俳優生活を続けていた。声優の仕事をしている時もだ。
 彼に女性声優達がにこにことしてだ、収録現場で言うのだった。
「あの時の撮影大変だったんですよね」
「アクションとか凄かったですし」
「よく怪我しませんでしたね」
「けれど物凄く格好よかったですよ」
「素敵でしたよ」
 小柄で可愛らしい若手声優達が彼に言う、女性声優は高音の人が多いせいか小柄な人が多い。人は高音ならば小柄に低音ならば大柄になるというが声優も同じであろうか。
 その小柄な彼女達がだ、一八六の徹也に言うのだ。徹也はその彼女達の頭のつむじを見下ろしつつ応えるのだった。
 そしてその中のだ、金子唯と優木夏織には特にだ。共演する度に言われていた。
唯はあどけない細面で可愛い感じの目をしていてまゆの形もその目に従う感じだ、髪型も黒のロングヘアで小柄である。
 夏織は何処か男性的なもののある整いを見せている顔で口元もしっかりとしている。髪の毛は唯と同じく黒だが彼女よりは短い。背も幾分か高い。
 その二人は徹也と共演する度にだ、彼を見上げて言うのだった。
「柿屋さん背高いですよね」
「特撮ヒーローって背も必要って本当ですね」
「スタイルもしっかりしてて」
「ヒーローだけはありますね」
「強そうで格好よくて」
「見ていて惚れ惚れします」
「いやいや、それはね」
 いつも困った笑顔になってだ、徹也は二人に返すのが常だった。
「何ていうかね」
「何ていうか?」
「っていいますと」
「俺は運がよかったんだ」
 実際にそう思っていて言うことだ。 
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