焚書
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第三章
「私は」
「そうですか」
「何を読んでもいいのが自由で民主主義だからな」
この考え故にというのだ。
「読むよ」
「それじゃあ」
店主は織部に漫画も紹介した、彼は戦争が終わり内地に戻り復職してまずは様々な本を読みはじめた。その中には漫画もあり。
何とか手に入れた漫画を家に持って来て子供達に渡して言った。
「読むか」
「あっ、漫画なんだ」
「買って来てくれたの」
「面白いから買った」
息子の智和にも娘の聡美にも話す、智和が兄で聡美が妹だ。
「お父さんは読んだから読め」
「うん、それじゃあ」
「後でね」
「順番を決めてよね」
兄妹でというのだ。
「いいな」
「そうするね、そういえば」
ここでだ、息子の智和がこんなことを言った。小学五年で父によく似た大柄で成績優秀な少年である。
「最近手塚何とかって漫画家いない?」
「ああ、聞いてる」
織部もその名前を聞いて言った。
「最近結構見るな」
「その人の漫画は?」
「今度面白いのを見付けたら買って来る」
こう息子に答えた。
「待ってろよ」
「私のらくろ好き」
娘の聡美はこちらだった、妻の麻美によく似た楚々とした顔立ちだ。ただ麻美の髪の毛は長いが聡美はおかっぱだ。
「田河水泡さん」
「その人のも面白かったら買って来る」
「それじゃあね」
「うちは本はある」
何しろ織部自身が読書が趣味だからだ、酒以外はこちらにしか金を使わない男なのだ。煙草は吸わず博打もしない。
「何でも読め」
「漫画以外も?」
「そうしていいの」
「読みたいならな、読みたい本はだ」
それこそとだ、彼は子供達にも言った。空襲を免れた自宅で。
「読めばいい」
「それじゃあね」
「私達も読むわね」
「何を読んだら駄目だの言うのはな」
それこそとだ、織部はついこの前までのことを思い出して言った。
「間違ってるからな」
「じゃあ漫画もね」
「読んでいくわね」
「そうしろ」
子供達にこう言ってだ、彼もまた漫画を読んだ。漫画もまた面白く彼は戦争直後の荒廃している時代でも本を読んだ。
そして日本自体が戦争の傷跡から復興していく中で本も多く出る様になっていた、その中で漫画の割居合がかなり多くなっていたが。
その中でだ、織部は会社の中でこんな話をl聞いた。
「漫画がかい?」
「はい、何かです」
部下の鳥谷浩史がだ、会社の経理部長になっていた織部に話した。
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