【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。
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0053話『とある艦娘と提督との噂』
前書き
更新します。
……昨日の神通さんとの訓練なんだけど、私…陽炎はどこか神通さんが手を抜いているような気がしたんだ。
でも普段通りだし気のせい程度だと思っていたんだけど不知火に試しに聞いてみると、
「そうですか? いつも通りの神通さんでしたが…」
「そうよね…。あなたってそう言う所には疎い子だったわよね」
「むっ…なんですか陽炎。不知火に喧嘩でも売っているのですか?」
「あ、そうじゃないのよ。ただ昨日の訓練では神通さんが少し様子がおかしかったからどうしたのかなって思ってね」
「そうでしたか…さて、どうしたのでしょうか?」
それで不知火と一緒に悩んでいると黙って私達の会話を聞いていた黒潮と親潮が、
「黒潮さん、ここは青葉さんにでも聞いてみませんか? あの方ならなにかご存知ではないかと」
「そうやね。それになんか面白い匂いがするんよ。提督がらみで」
「そうなのですか…?」
「うん。こういう時に限って言えばうちのセンサーは敏感や。楽しゅうなりそうやね」
黒潮も乗り気なのでちょうどいいので青葉さんの部屋へと四人で向かう事にした私達。
そして青葉さんの部屋の前に到着してドアをノックしてみると中から、
『はいはーい! ちょっと待ってくださいね!』
中にいるのだろう青葉さんの声が響いてくる。
と同時に『ドシャー!』という何かが崩れる音と『あわわ!?』という青葉さんの慌てる声が聞こえてきて少し不安になってドアを開けてみると部屋の中は色んな資料が崩れて散乱していた。
黒潮が「これはあかん…」と額を抑えていて親潮と不知火は片づけを手伝いそうな空気を纏っている。
「あの…大丈夫ですか?」
「なんとか平気です…後で片づけをしませんとねー」
青葉さんは今は片づけを諦めたのだろう、散乱している部屋の椅子に座って、
「…さて、どうしました? 青葉になにかご用ですか? 情報提供なら良い値で買いますよ」
いつも通り記者魂が逞しいなと思いながらも相談をしてみる。
「その、昨日なんですけど神通さんの様子が少しおかしかったんです」
「ほう…? それでそれで?」
「それは少しの違和感だったんですけどどこか浮かれているような感じでしたね」
「なるほどなるほど…。はい、なかなか面白い話ですね。
水雷戦隊の演習では一切手を抜かない鬼教官の神通さんが訓練中に浮かれていると感じたんですね?」
「は、はい…その私が依頼したってばらさないでくださいね?」
「はい、わかっていますよー。ただ面白い内容でしたら是非青葉新聞に書かせていただきたく思っていますので少し調査しますね」
それで青葉さんはニタァ…という恐怖の笑みを浮かべて取材を開始するみたい。
「青葉はん! うちも取材手伝ってええか? なんか楽しそうや!」
「いいですよー。それでは二人でこの謎を解明しましょうか!」
「はいな!」
ああ…黒潮がおそらく後で神通さんに折檻コースを受ける権利を自ら名乗り出てしまった…。
まぁ、私はただ聞いてみただけだから恐らく大丈夫…よね?
これがフラグにならない事を切に祈りたい。
それから青葉さんと黒潮が色々な場所に取材をしているらしい。
けど中々いい情報は掴めないらしくてついには姉妹の那珂ちゃんさんに話を聞きに行ったという話。
それで面白い話をキャッチしたという。
そしてあらかた情報が出揃ったのか私達は再び青葉さんの部屋へと招かれていた。
「それで…青葉さん。なにかわかったんですか?」
「はいー、それはとても甘酸っぱいほどに面白い内容でしたね」
「うちも少しドキドキしてもうたで」
青葉さんは満面の笑みで、黒潮も顔を赤くして思い出しているのだろう髪を指で弄っている。
この子の癖が出るという事は相当だ。
「…それでどうだったんですか?」
「少しお待ちを親潮さん。皆さん、誰にもつけられていませんよね?」
「…はい。不知火が感じられる範囲では誰も着いては来ていませんでしたが…それが?」
「もしこの捜査がばれていたら青葉新聞が発行できないではありませんか。それは困ります」
という事らしい。
青葉さんはいつもここぞという情報を一気に鎮守府中に開示するから中々強かな人なのだ。
それでこんな中途半端なところでご破算になったら目も当てられないという所だ。
「そうですか。では話しますね。実は―――…」
それで青葉さんの口から話された内容はこうだ。
まず那珂ちゃんさんからの情報によると、
『神通ちゃん…? うん、なんか提督が寝込んでいるみたいで看病するって言ってその夜は帰ってこなかったよ』
らしい。
そしてその内容通りに一昨日にとある事情で具合が悪くなった提督を看病するために神通さんが提督の寝室に同衾して夜通し看病して朝になって一緒に部屋から出てきたそうな…。
その少ない目撃情報から二人はとても仲良くなっていたという。
なぁるほど…。
確かにそれは面白いわね。
「青葉、そんな面白…いえ素晴らしい情報を掴めていなかったなんてジャーナリストの端くれとして情けない限りです…」
と、青葉さんは嘆いているがその口元は弧が描かれていたのを見逃さなかった。
確かに面白い内容だけどなんか純粋にデバガメしているみたいで神通さんに悪いなぁ…と思いながらも青葉新聞作成の手伝いをしてしまっていた。
そして翌日になってその青葉新聞は掲示板に掲載されて当然大体いつもの被害者であるおなじみ提督の『青葉ーーーーーッ!!』という叫びが上がったという。
司令官、ごめんねー。でも楽しかったから。
「いやー、とても面白かったわ」
黒潮が部屋でそんな事を宣いながら横になっていた時だった。
部屋の扉を誰かがノックしてきたので「どうぞー」と言って招き入れた。
だけど次の瞬間には怖気が走った。
扉が開かれてそこに立っていたのは笑顔を浮かべている神通さんだった。
だけど、その瞳は一切笑っていなかった…。
「うわぁ…」
「ぬいぃ…」
「黒潮さぁん…」
「あかん…」
私達のそれぞれの口に出た言葉がすべてを物語っていた。
「陽炎さん、不知火さん、黒潮さん、親潮さん…少し、そう少し話し合いを致しましょうか。
いえ、別に怒っていないんですよ? ただ、提督とのささやかな秘密をばらされて恥ずかしいだけです。ええ…」
神通さん、それを怒っているって言うんですよ…?
そう口を出す事も出来ずに私達はその後に鬼と化した神通さんにフルボッコ訓練を受けてその日は地獄を見たというだけ…。
ちなみに那珂ちゃんさんも悪気はなかったんだけどなにかしら罰を受けて、青葉さんに至っては次の日に死んでいるようだったという。
後書き
今回は陽炎たちをメインに書いてみました。
かなり続き物ですね。瑞雲の闇は大きい…。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
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