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痩せてみると

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第七章

「共に飲みつつ話すか」
「酒ですか」
「飲んだことはあるか」
「いえ」
 哲承はすぐに答えた。
「まだ」
「そうか」
「酒は糖分ありますよね」
 このことからだ、哲承は岩崎に言った。
「ですから余計に」
「飲まないか」
「もう二度と太りたくないですから」
 トラウマも出た、彼の深刻なそれが。
「ですから」
「そうか、じゃあワインはいいか」
「それですか」
「日本酒よりはずっと糖分が低い」
 だからだというのだ。
「白がある、それを飲むか」
「カロリーオフのがあれば」
「そっちもある」 
 そうした酒もというのだ。
「それもかなりな」
「随分あるんですね」
「親父が無類の酒好きでな」
「それで、ですか」
「色々な酒があってな」
 その為にというのだ。
「カロリーオフもあるんだ」
「じゃあそっちなら」
「今から出して来るな」
「すいません」
 こうしたやり取りを経てだった、二人は酒を飲みはじめた。岩崎は出した日本酒を哲承はカロリーオフの缶のカクテルをだ。
 その酒を飲みつつだ、哲承は岩崎に問うた。
「あの、最初声をかけてくれた時から不思議に思ってましたけれど」
「その時からか」
「どうして僕にここまで声をかけてくれて話を聞いてくれますか」
「気になるからな」
「だからですな」
「言ったな、話は聞いた」
 哲承のそれをというのだ。
「だからな」
「別に面白がってる訳じゃないですね」
「そんな奴がこうした話をするか?」
「いえ」
 そう問い返されるとわかった、それは確かにだった。
「そうじゃないですね」
「ああ、まず言う」
 岩崎は一升瓶を自分で手に取ってコップに酒を入れつつ言った。
「俺は御前がダイエット出来たままだったら声をかけなかった」
「心も痩せているからですか」
「やつれているからな」
 そのことが見えたからだというのだ。
「声をかけたんだ」
「そうですか」
「正直辛いだろう」
「一人でいてダイエットばかりしていることに」
「誰とも話をしたくないな」
「先輩とはお話をしてますが」
「言われてきたことが忘れられないな」
 失恋のことを周りから囃し立てられることがだ。
「言われないかと怖くて言われる度に嫌な思いをしてきたな」
「はい」
 その通りだとだ、哲承は答えた。 
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