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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第十三話

 
前書き
どうも、戦闘シーンのことで悩んで、「次回に回せばいいじゃん!」ってことでなんか移動中の木曾達です。 

 
「……いや、暑すぎるな。」
 
俺は海の上を移動しながら思わずそう呟いた。
 
朝、食堂のテレビで天気予報を見た所、台風が通り過ぎたせいで気温が上昇するとのこと。
 
つまり、あちぃ。
 
「そうっぽい……勘弁してほしいっぽいかも……。」
 
そう言ったのは夕立だった。夕立もなかなかだるそうにしている。
 
「まー、もうすぐ八月だしな。あーあ、今年も夏休みは鎮守府暮らしかぁ……。」
 
と、摩耶さんは気だるそうに遠くを見つめた。まぁ、ある意味社会人だしな。
 
「んー、時雨は平気っぽい!なんかしてるっぽい?」
 
夕立は先程から涼しい顔をしている時雨に目を付けて、話し掛けた。
 
「いや、正直僕も暑くて参ってるんだ。少しでも考えないようにしてるんだよ。」
 
何とも時雨らしい答えだった。
 
「皆さん、塩飴舐めますか?熱中症になったら困りますし。」
 
と、神通さんが懐から塩飴の袋を出した。こういう細かい気配りのできる女性はなかなかステキだ。
 
「ん、そいじゃま貰いますかね。」
 
「いただきますっぽい!」
 
「ありがとうね、神通さん。」
 
「あざーす。」
 
「すまねぇな。」
 
俺達は神通さんに一人ずつ近づいて、一個ずつ塩飴を貰う。うむ、ウマイ。
 
「しっかし、今回の海域はなかなか遠いな。あとどれくらいで着くんだ?」
 
木曾が太陽を恨めしそうに見ながらそう言った。どうやら木曾もなかなか堪えているらしい。
 
「えーと、あと二時間位は見といた方がいいね。」
 
「にっ……!?」
 
まて、もうすでに三時間位は移動してるのに、ここから更に二時間もこの暑い海の上を移動すんのかよ。
 
暑さもそうだけど、何より何もすることがないってのがキツい。
 
この三時間も「どうやったらいっぺんに二つのアクションゲームができるか。」とか、「木曾って以外と胸あるよな。」とか、「シュールストレミングスってどうやったら吐かずに食えるか。」とか、「ちくわ大明神」とか思ってたしな。
 
……あれ?なんか一個あきらかにおかしいのが混ざってた気がするな……。まぁいいか。
 
さて、次はどんな考え事しよっかな。そう言えば、こないだ実家からバスケセットが届いてたな。帰ったら…いや、帰れたら久しぶりに練習するかな。一時期ボールなしじゃ寝れないって時期があったな。……今もあったらあったでぐっすり寝れるけどさ。
 
「ねぇねぇ二号さん。」 

俺がそんなしょーもない事を考えていたら、隣にいた夕立が話掛けてきた。
 
「ん、どうした?夕立。」
 
「いや、暇潰しにお話しでもしよっかなって思っただけっぽい。」
 
うーん、この夕立もなかなか人懐っこいから話しやすい。なんがかんだでこいつや春雨のお陰で駆逐艦の奴らとも話しやすくなったしな。
 
「おう。俺も正直暇だなとか思ってた所だ。」
 
「よかったっぽい!」
 
うーむ、なんだろうかこの犬とスキンシップを取っているような感覚は。なんだろう、愛でてる感じとでも言うのかな。なかなか楽しい。
 
すると、俺は何やら視線を感じた。その方向を見ると、時雨がこちら……というか俺を見ていた――あの目の据わった笑顔で。
 
「(二号くん?うちの夕立に変な気でも起こしたらただじゃ済まさないからね?いつかの提督みたいになって貰うから。)」
 
とでも言ってそうな感じだ。多分合ってると思う……こりゃなかなか怖い。
 
俺は時雨から目を逸らして、再び夕立の方を見る。
 
「ねぇねぇ二号さん。二号さんって彼女いるっぽい!」
 
「ファッ!?」
 
思わず変な声が出た。
 
いや、まあ確かにね?年頃の女の子だし、そういう事って気になるよね。夕立が一体何歳なのか知らないけどさ。
 
「いや、今まで居たこともないな。」
 
「へー、ちょっと意外だったっぽい。てっきり既に意中の人と一線越えてるイメージがあったっぽい。」
 
「時雨さん!あなたの妹艦が変なこと言い出しましたけど!?どうなってるんだよおい!?」
 
俺は思わず少し遠くにいた時雨に大声で話す。どうやら会話の内容は伝わってたらしくて、
 
「うん、知らない。」
 
ちゃんと意味わかんない返答をしてくれた。助けてくれ。
 
「それじゃあさ、二号さんは今好きな人とかいるっぽい?」
 
そして、マイペースな夕立は更に会話を進める。これに関して言えば、もうどうしようも無いんだろうな。
 
「好きな人ねぇ……。」
 
……正直俺は、今まで他人を好きになる所か、信頼することも殆どなかった。せいぜい家族と何人かの友人位だ。
 
うーん、これって正直「いねぇよ。」って言っても、「うそっぽい!正直に言うっぽい!(声真似)」とか言いそうだしな……。しかし、俺は嘘をつくのも苦手だしな……。
 
「うーん……正直、わかんねぇってのが正解かな。」
 
「わかんない?」
 
夕立は首をかしげてそう聞き返した。
 
「おう。ぶっちゃけ今までそういう色恋沙汰とは無縁の人生だったからな。好きとかいう感情が分からん。」
 
これは俺の本音でもあった。
 
今まで他人を見てきて何となく、学校とかにいるカップル達が軽い付き合いに見えて仕方ないんだ。
 
当人達はそんなこと無いのだろうが、少なくとも俺の目はそう見える。
 
だから、俺は心の底から好きになった奴を人生の伴侶にしたいと考えるようになっていた。
 
よく言えば硬派。悪く言えば無頓着。
 
だから、そんなことになった訳で。
 
「ふーん……なんか可哀想。」
 
この台詞もよく言われる。しかし、俺というものがそういうものなんだ。もうどうしようもない。
 
「そーゆー夕立は居るのかよ?」
 
俺は逆に夕立に質問してみた。
 
「うん。」
 
「は?」
 
「故郷に居る幼馴染でね。少しおとなしめの子なんだけど、優しくて、かっこよくて、私が艦娘になるって言ったときも、応援してくれるって言ってくれたし、今でもデートしたりするし…///」
 
「あのー?もしもしー?夕立さーん?」
 
…だめだ。全く聞こえてない。
 
しかし、夕立に彼氏がいるとは驚いた。どうしても幼い印象を受けちゃうしな。
 
……なんだろ。夕立の回りが薔薇に包まれてるように見えてきたのは気のせいだろうか。
 
「おい二号!今なら夕立のパンツ見ても気づかれないぜ!」
 
そう話し掛けてきたのは摩耶さんだ。ほんとにこの人は…。
 
「うん?どうやら大破撤退したい艦娘が居るっぽいね。」
 
と、主砲を構える時雨。妹大好きか。
 
「おーい、こっから何回か敵艦隊の目撃情報がある区域に入るからな。気ぃ引き締めて行くぞ!」
 
そんな茶番を演じていたら、木曾が俺達にそう言った。
 
「「「「「了解」」」」」
 
俺達は一旦会話を止め、周囲警戒を始めた。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。今回は少し番外編みたいな雰囲気でした。え?そんなこと言ったらいつも番外編だって?ちょっと君後で体育館裏ね?
次回こそは戦闘したいですね。また間が開いたら察してください。
それでは、また次回。 
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