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ソードアート・オンライン【Record of Swordmaster】

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002:魔剣の誕生

 
前書き
ちょっと訳が分からないかも……私自身、どうしてこうなったのかよく分かりません。 

 
茅場晶彦……だと?このSAOの生みの親、天才プログラマーの?

いや、それ以上に……『()()()()』だと?確かにこのアインクラッドを創ったのは茅場だろうが……どうにも引っ掛かる。

周囲の人々は演出か何かだろうと言っているけど……どうにも嫌な予感がする。

「……レイ、どうしたの?顔が怖いわよ。」

「………?いや、何も……。」

「そう?なら……良いのだけど。……まるで、《あの時》みたいだったから。」

《あの時》、俺が人を失くした時だ。

そうこうしている内にも茅場を名乗る赤ローブが話しだす。

『まず始めに、諸君の中には既にログアウトボタンが消えている事に気付いている者も居るだろう。これは不具合等ではない。ソードアート・オンラインの正規の仕様である。』

……仕様?つまり、最初(ハナ)から仕組んであったって事か?何の為に?

『それに伴い、諸君は今後一切、自発的ログアウトが不可能となる。』

先程までは空間が持つ不思議な圧力で不気味な程静かに聞いていたプレイヤー達だが、その一言であちこちからどよめきが上がる。

『そして……この世界でHPがゼロになった場合、ナーヴギアからの高出力マイクロウェーブが君達の脳を破壊する。』

ざわめきが広がる広場に落とされた爆弾、それにより、むしろ広場はまた静まりかえる。

『また、外部からナーヴギアを強制的に外そうとしても同様だ。その為既に、294人の命が失われている。』

静寂に圧された広間、何人かがあちらこちらで小さな悲鳴を上げた。

『この状況は既に各種メディアで繰り返し報じられており、以後ナーヴギアが無理矢理外される事は無いだろう。』

『この世界から自発的にログアウトする方法は唯一つ。百層に及ぶこの城の頂点を極め、そこに鎮座する最終ボスを倒す事だ。』

「ふ、ふざけんな!こんな状況で攻略なんか出来る訳ねーだろ!!」

誰かが叫ぶ、しかし、それに茅場が答える事はない。

『最後に、諸君等に一つプレゼントを用意した。是非使ってくれたまえ。』

その言葉と共に視界に映るログに何かを受信した旨が表記される。半ば誘われる様にメニューを開き、アイテム欄に行くと、《手鏡》と表示されたアイテムがある。

実体化させるとなるほど、手鏡その物である。覗き込んでも特に何も……いや、これは?

一瞬光に包まれたかと思うと次の瞬間。そこには俺がいた。謎かけや頓知ではない。ほぼ初期設定で創った俺の顔ではなく、現実世界の俺、秋月零がそこにいた。

辺りを見回してみると、身内ながら美人の姉は金髪こそそのままだが、見慣れた顔へと変わっている。

ファンタジー感溢れる一万人のプレイヤー達は、瞬時に一万人の痛いコスプレイヤーになっていた。

……と、いうか、ネカマの方々が哀れでしょうがない。等と、少々間の抜けた事を考えていた。

『諸君等はこう思っているだろう。私の目的は何なのか、誘拐なのか、テロなのか………否、私の目的はこの状況を創り出し、この世界を鑑賞することだ。……そして、それは今果たされた。』

そう語る茅場の声には、それまでの無機質なものではなく、ある種の感情が込められていた。

それは………憧憬。幼い少年が抱くような憧れの響きがそこにはあった。

『……以上で、ソードアート・オンライン正式版のチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る。』

赤ローブの姿が消える。一瞬の沈黙の後に起こったのは、感情の爆発だった。

ある者は怒号を、またある者は悲鳴を、整合性もなくただぶちまける。中にはまだこれがイベントであると信じている者もいる。騒いでも何ともならないと言うのに……否、恐らく現実を見たく無いのだろう。現実を認識し、上を見れば、百層に及ぶこの城に圧し潰されてしまうから。

「……ごめんね、レイ。」

「……ベル姉?」

「……私が、こんな所に連れてきたから……」

そう言って謝る姉は、今にも泣き出しそうで。まるで“あの時”の様だった。



ーーーーオマエハ マタ、クリカエス ノカ?ーーーー



ーーーーそんな訳無いだろ。もうあの時とは違う。ーーーー



ーーーーフタタビ ヤイバヲ ニギルノカ?ナンノタメニ?ーーーー



ーーーーもう二度とベル姉を泣かせない。あの日あの瞬間にそう決めた。ーーーー



ーーーーククククク、ミモノダナァ!オマエガ ドコマデ ヒトノカワヲ カブッテイラレルカ!!ーーーー



ーーーーもういい、黙れよ。ーーーー



ーーーー我ハ イツデモ ミテイルゾ ユメユメ ワスレルナ……………ーーーー



ーーーー失せろっつってんだろ、■■。ーーーー



「……どうしたの?」

「え?あ、何?」

危ない……アレに引き込まれてたな。ベル姉を心配させたくも無いし、ここは誤魔化しておこう。

「ううん、何でもないの。……これからどうしよう。」

「どうって………まあ二択だよね。『ここに残って外部からの救出なり攻略を待つ』か、『街の外に出て攻略に進む』か。」

「……うん、そうだね。」

何かの決意を固めた様にベル姉が顔を上げる。何を考えたのか大体想像できるが、言われるまでは黙っておこう。

「レイ、私は攻略に参加するわ。だからレイはこの街で……「却下。」……え?」

やはりな。『こう』なった以上、姉が俺をここに残そうとすることは分かっていた。ベル姉らしい考えだ。俺の事を考えてくれていると思えば嬉しい限りだが、それでも、聞けないものもある。

「残れって言うんだろ?そんなの駄目だ。俺も行く。」

「駄目よ!私が巻き込んだのに、レイまで危険な目に遭わせる訳にはいかない。」

「いや、巻き込んだのは俺だ。ベル姉は俺の用事に付き合ってくれたんだから。」

「……っ、でも!レイは剣が……「持てるよ。」………今、何て……?」

「持てるよ、剣。」

さっきまでは無理だっただろう。だけど今なら、自分の為には持てなかったけど、誰かの……ベル姉の為ならきっと平気だ。

「……取り敢えず、さっきの武器屋に行こう。」










今だ喧騒に支配された広場を抜け出し、俺達は直前まで訪れていた武器屋に向かう。途中、フィールドの方に走っていくプレイヤーを何人か見かけた。恐らくβテスターだろう。

「……レイ、本当に平気なの?」

「……ああ、さっきとは違う。」

……本当は、平気何かじゃない。俺がこれからする事はトラウマの克服『では無い』のだから。でも、それを馬鹿正直に話しても止められるだけだ。

武器屋に入り、周囲を軽く見回す。壁に掛けられた数多の剣。その一つ一つをゆっくりと眺めていく。

覆え、包め、隠せ、己の心を剣で埋め尽くす様に………

やがて目に留まったのは、反りのある刀身を持つ片刃の長剣、一般に曲刀(カトラス)と呼ばれる物だ。これなら刀と感覚的には同じに扱えるだろう。

俺がやっているのは、克服では無い。昔に戻ろうとしているのだ。自身の思考は要らない、感情も要らない。ただ、ベル姉の忠実な剣に成る。

剣を掴む。抵抗感は全く無い。寧ろ一体感さえ感じる。

俺は剣だ。ベル姉の為に存在し、ベル姉の為に戦う、一振りの剣だ。

克服するために来たのに、これでは本末転倒であるのは理解している。だが、もうそれすらどうでもいい。剣が考えるのは、敵を斬り伏せることだけでいい。

「………ベル姉、何からやればいい?」

「……レイ………あなた……まさか……!」

恐らく、俺は魔剣だろう。神話に出て来る、死と呪いと災禍を振り撒く魔剣。でも、構わない。ベル姉一人守れればそれでいい。たとえベル姉本人に拒絶されても、だ。

「………レイ……ごめんね……ごめんね……私、また、あなたを………」

「……良いんだよ、ベル姉。」

泣き崩れそうなベル姉に駆け寄る。泣かせないと誓ったばかりなのに、早速守れていないな。

「ベル姉が笑ってくれていたら、俺はそれだけでいいんだから。」 
 

 
後書き
ウチのレイ君は超絶シスコン野郎ですね〜〜。拙作主人公としては二人目ですか。

暁人「呼んだか?」

うぉい!?お前はこっち来ちゃ駄目だろ!!……はぁ、帰ったか。レイ君は感情の一部が封印された状態です。楽しいとか悲しいとかは感じますが、刃を振るうこと、それによって人を殺す事に一切の抵抗を感じません。また、ベルを助けるためならモンスターを他のパーティーに擦り付けるくらいは平然とやります。 
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