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真田十勇士

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巻ノ九十 風魔小太郎その三

「それが為じゃ。それに御主もさらに強くなりたいであろう」
「はい」 
 そに通りだとだ、由利も答えた。
「それがし達は皆禄や地位には興味がありませぬが」
「強さにはじゃな」
「はい、興味がありまする」
「拙者もじゃ、強くなりたい」
「何処まででも」
「だからこそ御主の考えもわかる」
 目指しているもの、求めているものが同じだからだというのだ。
「では是非な」
「風魔殿にそれがしをですか」
「頼む、それではな」
「はい、では」
「是非な」
 箱根まで行くというのだった、そして実際にだった。
 二人は尾張からさらにだった、山道を並の者とは全く違う歩みの速さで進んでだ。尾張から瞬く間にだった。
 箱根に入った、由利は箱根の山に入ると幸村に問うた。
「殿、それでは」
「うむ、これよりな」
「風魔殿ところに参りますか」
「既にこの箱根の何処におられるかわかっておる」
 それはというのだ。
「だからな」
「この箱根の中を回ることはない」
「風魔殿をお探ししては」
「それは何よりですな、箱根はまた違いまする」
「うむ、かなり険しい」
 そうした場所だからだというのだ。
「迂闊に歩き回ってはな」
「時間の無駄ですな」
「我等なら何日も飲まず食わずでも歩き回れるが」
「ですがその様なことをしても」
「意味はない」
「左様ですな」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「先におられる場所は確かめておいた」
「流石は殿ですな」
「聞こえるであろう、草木の声が」
 幸村は由利にこのことを問うた。
「御主にも」
「はい、よく」
「石や川のそれもな」
「それを聞けば」
「すぐにわかる」
「確かに。それがしにもわかりました」
 由利はその目を鋭くさせて幸村に答えた。
「風魔殿が何処におられるか」
「人の目は誤魔化すことが出来る」
「しかし草木や石、水のそれは」
「出来ぬ」
「そこにいるだけに」
「そうじゃ、わかる」 
 そうした声を聞ければというのだ。
「すぐに調べられる」
「だからこそですな」
「それを聞けばじゃ」
「それがしにもわかりますな」
「御主もそろそろ聞こうと思っていたであろう」
「はい、これよりと」
「拙者はそれより少しだけ早かった」
 幸村、彼の方がというのだ。 
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