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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第4章:日常と非日常
  第105話「夏祭り」

 
前書き
日常を...完全な日常を書かなきゃ...。
夏休み期間という事で、風物詩の一つを。
 

 




       =優輝side=





「リインフォース・ツヴァイです!よろしくです!」

 はやての家にて、リインが自己紹介をする。
 リインが誕生して翌日、新しい家族の紹介として、魔導師組+αが集まったのだ。
 ちなみに、王牙は来ていない。あいつ、最近見ないな。

「わぁ~!妖精さんみたい!」

「可愛いね!」

 珍しいものを見たかのようにはしゃぐなのはとアリシア。

「え、あの子もデバイスなの?」

「妖精とか言われた方が納得するんだけど...。」

「...まぁ、普通はそう思うよね。デバイスとは思えないよ。」

 魔法関連に疎いアリサとすずかは、リインがデバイスと言うのが信じられないらしい。
 司も、気持ちは分かるのか頷いていた。

「...しかし、ここに集まったもう一つの理由、忘れてないか?」

「...多分、見ないようにしてる...。」

 ...そう。実は、八神家に集まった訳はもう一つある。

「はいはい。皆、リインの事ではしゃぐのもいいけど、ちゃんともう一つの目的を忘れないようにね。せっかく集まったんだから。」

「あ、かやちゃんの言葉でアリシアちゃんが撃沈した。」

 思い出してしまったのか、アリシアは崩れ落ちる。
 なお、なのはとはやても暗い顔になった。

「あー...なんだ。頑張ろう。」

「うぅ...神夜君教えてー!」

「早い!?」

 その様子を見て、さしもの織崎も苦笑い。
 しかも、いきなり教えを乞われてる。...お前も終わらせろよ?

「....?皆さん、どうしたのです?」

「...あー、宿題があってな。このままじゃ終わらせれそうにないから、今日に一気にやろうって事になったんだ。」

「そうなのですか。」

 リインには分からないだろうな。まだ、そういう知識がないから。

「うわーん!もうダメだー!」

「早いよお姉ちゃん...。」

 嘆くアリシア。一人だけ中学の問題だしな...。それにしても諦めるのが早い。

「...えっと、今日じゃないとダメなのですか?」

「ダメって訳じゃないんだけど...ちょっと事情があってな。」

「事情...ですか?」

 そう。別に今日じゃなくても夏休みはまだある。八月上旬だしな。
 だけど、こうして今日中に終わらせる訳があるのだ。

「夏祭り...っていう夏に行われるお祭りがあってな。それぞれ、親に出来る宿題は全部終わらせてからと言われたんだ。だから、必死になってる。」

「そうなのですかぁ...。...あれ?でもはやてちゃんはそういうの...。」

「...大方、このままズルズル残したくないから、皆と一緒に終わらせたいんだろう。」

 何気に、リインははやての事はちゃん付けで呼ぶんだな。
 同じアインスさんは主って呼ぶのに。
 まぁ、ヴィータやシャマルさんも名前で呼んでるけどさ。

「優輝君はやらないの?」

「ん?僕は...まぁ、終わらせておいたからな。司は残ってたのか。」

「うん。早め早めにやってたけど、終らせ切れてなくて...。」

 司、奏、アリサ、すずかも自分の分がある。
 まぁ、この四人は自分のペースでしっかりやってたから問題ないだろう。
 ...フェイトも真面目だから国語と英語以外は大丈夫そうだな。

「仕方ない...また教える側か...。」

「かやちゃんとあたしも手伝えたら手伝うよ。」

「助かる。」

 いやまぁ、それを承知でここに来たんだけどさ。
 さて...一番時間がかかりそうなのは...アリシアか。

「ぐでー....。」

「...開始早々ぐったりするなよ...。」

「だってー...皆と違って私だけ難しいしー...。」

 確かに、私立聖祥大附属中学校は、そこらの中学校より難しい。
 それも相まって、宿題も難しいのだろう。
 ちなみに、私立聖祥大附属は、小・中・高と一貫となっている。

「ふむ....。」

「さすがに優輝にも....。」

「...ここの文法はこうだな。」

「.....えっ。」

 パラパラとテキストをめくり、解き方を教える。
 ...まぁ、これでも前世は社会人。おまけに今世でも勉強は怠っていない。
 大学ぐらいまでの問題くらい、解けない事はないだろう。専門知識を除いて。

「...嘘...。」

「はい、驚いてないで次。これを機にある程度克服しろ。」

「...また年下に教えられてる...。」

 ...別の理由でぐったりしやがった...。

「....ちゃんと取り組んだら、ご褒美にマッサージしてやる。」

「えっ...ってならないよ!?翠屋のシュークリームならまだしも!」

 その割には少し期待した表情になっていた気が...。

「じゃあ、ちゃんとやらなければ椿によるスパルタ霊術特訓だ。」

「頑張りますっ!」

 よし、どんどん行くか。なのは達は他の皆に任せればいいだろう。





「ふひゅ~....。」

「まぁ、このペースならいけるだろう...。」

 数時間後、昼休憩になる。
 頭を使うので、合間合間に飲み物や甘いお菓子を用意したが...死屍累々だな。
 元々ちゃんとやってた四人はともかく、必死勢が燃え尽きてる。
 ちなみに、お菓子や飲み物は、事前に皆で担当を分けて準備しておいた。
 飲み物ははやて、お菓子とかはアリサ達が...と言った感じでな。

「....よし、だいぶマシになってるな。...ほれ。」

「あむっ.....そ~う~...?」

「...午後もあるんだから元気だせ。」

 クッキーを口元に近づけると、元気なさそうにアリシアはそれを咥える。
 ...本当に燃え尽きてるな...。

「...とりあえず、無事な面子で昼食を作るか。材料なら持って来てるし。」

 ちなみに献立は冷やし中華だ。暑いしな。

「リインも手伝いますよー!」

「じゃあ、小さい食材を運んでくれるか?椿、葵、手伝ってくれ。」

「任せてー!」

「仕方ないわね。」

 リインも手伝ってくれるようで、四人で昼食を作る。

「あ、昼食なら私が...。」

「シャマルは黙って主達を癒しておけ。」

「そ、そうやで?皆疲れてるから、シャマルに癒してもらいたいなーって。」

 シャマルさんが手伝おうとすると、八神家全員でそれを抑える。
 ...そういえば、凄いメシマズって聞いた気が...。

「どうしたのですか?」

「...まぁ、気にせず用意するか。リイン、早速だけど....。」

「はいです!」

 昼食を食べれば、皆も少しは元気が出るだろう。





「よーし!体力回復!」

「じゃあ、早速進めるかー。」

「うっ...。」

 昼食も終わり、回復したと言い放ったアリシアに、容赦なく宿題を差し出す。

「ほら、後もうひと踏ん張りなんだから。」

「うぅ...はーい...。」

 解き方さえ教えれば、アリシアはすぐに解いてくれる。
 頭が悪いって訳じゃないからな。わかりやすくすればいい訳だ。

「........むぅ...。」

「.....。」

「司さん、奏、羨ましいのは分かったけど...。」

「ふえっ!?べ、別にそういう訳じゃ...。」

 ...あれ?なんか、教える側の視線が集まってるような...。

「あー、マンツーマンだからねぇ...。」

「それだけじゃない気がするが...。」

 主に司、奏、椿からの視線が気になる。
 なんというか、僕じゃなくてアリシアに対して羨ましいと言った感じの...。

「(....どうしたものかな...。)」

 僕の勘違いなら、それでいいのだが、もし想像通りなら...。
 ...うん。向こう側からアクションがあるまで、受け身だな。

「...まぁ、とにかく終わらせるぞ。」

「おー...。...うん、終わりが見えてきたし、頑張ろうっ!」

 未だ元気がないアリシアだが、頬を叩いて奮い立ったようだ。
 これなら、終らせられるだろう。他の皆も大丈夫そうだ。





「終...わったぁああ!!」

「ご苦労様だなアリシア。」

「うん!」

 さらに数時間後。丁度3時くらいにアリシアは宿題を終わらせる。
 途中、精神がすり減りそうになっていたが、何とかなったみたいだ。

「こ、こっちも何とか終了や...。」

「...教える方も疲れたわ。」

 そして、なのは達の方も終わる。
 アリサ達もだいぶ疲弊しているようだ。

「ふぅ...これで心置きなく夏祭りに行ける...。」

「そうだね!」

 一息つき、そう呟く織崎になのはが元気よく返事する。
 疲れ切ったのは確かだが、それよりも夏祭りを堪能できる事の方が大きいようだ。

「あの...。」

「ん?どうしたんやリイン?」

 おずおずとはやてに何か言おうとするリイン。

「リインも夏祭りに行ってみたいですぅ...。」

「...あっ...。」

 そう言われて、はやてはある事を失念していた事に気づく。
 このままでは、リインは夏祭りに行けないと。

「変身魔法を使えばいいんじゃないか?」

「そ、その手があったわ!」

 というか、形態変化とかの機能を組み込まなくても、変身魔法で代用できるだろう...。
 まぁ、ユーノと違って滅茶苦茶燃費は悪くなりそうだが。

「とりあえず....こんな感じか?」

「用意周到だね優輝...。」

 適当に作り上げた術式をリインに掛ける。
 変身魔法は自身に使うものだが、その術式を少し変えれば他人に掛けれるしな。
 そして、魔法が掛かったリインは見事にヴィータぐらいにまで大きくなる。

「ふわぁ...ありがとうございます優輝さん!」

「これぐらいお安い御用さ。...と言っても、明日までずっとそのままな訳にはいかないから、また明日な。」

「あー....。」

 すぐに魔法を解くと、リインは残念そうな声を上げながら元の大きさに戻る。
 変身自体は何の問題もないし、何かの拍子に変身が解けないようにしておくか。
 魔力の供給も今は僕が直接やっていたが、当日は魔力結晶からにしておこう。

「よし、問題も片付いたし、明日は各自集合や!」

「「おーっ!」」

 はやての言葉に、なのはとアリシアが元気よく返事する。
 ...何気に、二人は楽しみしていて、尚且つ宿題に苦労してたしな。

 そういう訳で、その後僕らはそれぞれ自宅に帰り、明日の準備をする。
 ...夏祭りに来ていく浴衣、出しておかなくちゃな。







「おー、賑わってるなー。」

 翌日の夕方。僕らは夏祭りの会場に来た。
 会場は、八束神社前の道路を使っており、結構規模も大きい。
 後、先にはやての家に行き、リインに件の変身魔法を掛けてきた。
 もちろん、魔力結晶も渡しておいたから解ける事はない。

「...こういう催し物は久しぶりね。」

「結構楽しめそうだよねー。」

 当然ながら、僕らは全員浴衣姿だ。僕はシンプルに黒い浴衣に白い帯。

「椿ー、いい加減花は出さないように...。」

「ゆ、優輝があんな事言ったからでしょ!?」

 喜びの感情から花を出している椿に僕は言う。
 椿は、普段式姫としている時に来ている水色の着物を、浴衣っぽくした感じだ。
 色はそのままに、花を散りばめたような柄だな。なお、僕が作った。
 ちなみに、椿が言う“あんな事”とは、二人共浴衣が似合ってると誉めた事だ。
 ...事実なのに。実際、少し見惚れたんだがなぁ...。

「優ちゃん優ちゃん。実際、あたしも嬉しいんだからしょうがないよ?」

「むぅ...まぁ、認識阻害で誤魔化してるからいいか。」

 葵は椿と同じように花を散りばめたような柄で、色は薔薇色。帯は白色だ。
 色の種類からして葵らしいのもあり、似合っている。

「しっかし、暑いのには変わりないな...。」

「日中は35度だったからねー。」

 家にあったうちわで扇ぎながら、店を見て回る。
 ちなみに、このうちわは以前のこのお祭りで貰ったうちわだったりする。

「かき氷、綿あめ、リンゴ飴、たこ焼き、焼きそば...射的に型抜き、お面も売ってる...前に来た時も思ったけど、やっぱりバリエーションが豊富だな。」

「...けど、普通に売ってるのより高いわね。」

「屋台ってそういうものだからな。」

 そういうのは仕方ないものとして諦めよう。

「うーん、何を買おうか...。」

「夕飯もここで済ませるつもりなんだから、焼きそばとかいいんじゃないかな?」

「そうだな。」

 とりあえず、焼きそばとか腹の足しになるものを買っていくことにする。
 ラムネとかも売っているので、それも買うか。

「じゃあ、椿、葵、焼きそばを人数分頼む。僕はラムネを買っておくよ。」

「分かったわ。」

「任せてー。」

 二手に分かれ、とりあえず二品買う事にする。
 ラムネの方が人が少なく、僕が先に買い終える。すると、そこへ...。

「お、優輝じゃないか?」

「あ、聡。お前も夏祭りに来てたんだな。」

「当たり前だぜ。そう言う優輝はしっかり準備してたんだな。」

 クラスメイトの聡と出会う。しかし、僕らと違って私服姿だ。

「聡は一人か?」

「いや、玲菜と来てるぞ。」

「ちょ、さ、聡...待って...!」

 一人で来たのか聞くと、ちょうど後ろから玲菜がやってくる。
 こっちは浴衣姿で、ピンクの可愛らしい柄だ。

「遅いぞー。」

「ゆ、浴衣姿で草履なのよ...!なのに、走っていくなんて...!」

「じゃあ、なんでその恰好で来たんだよ...。」

 お前のためだろ、察してやれよ。

「な、なんでって...それは...。」

「それは...?」

「っ...言わせないでよ!」

「な、なんだよ...。」

 ...うーん、僕と椿たちのやり取りも、こんな感じなのかなぁ...。

「..って、優輝君?来てたんだ。」

「まぁ、ね。ちょっと連れもいるけど。」

 と、ちょうど椿と葵が戻ってくる。

「買ってきたわよ。」

「あれ?そこの二人は知り合い?」

 二人も聡たちに気づいたのか、僕に尋ねてくる。

「クラスメイトだよ。」

「あー、そういう事。」

「そりゃあ、ここで会う事もあるよね。」

 簡潔な説明だが、二人は納得する。まぁ、何もおかしい所はないしな。

「...優輝。」

「ん?なんだ聡...っと!?」

「だ、誰なんだあの二人!?」

 いきなり肩を組むように引き寄せられ、他三人に聞こえない声量で僕に言ってくる。
 ...玲菜はともかく、椿と葵には聞こえるけどな。耳がいいし。

「同居してる二人だよ。と言うか、自己紹介しろ。」

「あ、そ、そうだな。」

 聡を引き剥がし、改めて二人と向き合う。

「紹介するよ。一緒に暮らしてる...。」

「草野姫椿よ。」

「薔薇姫葵だよ。」

 二人の容姿に、聡は若干見惚れていた。...すぐに玲菜に足を踏まれたが。
 まぁ、二人は浴衣が似合ってるし、容姿もいいしな。

「お、大宮聡です...いつつつ...。」

「小梛玲菜です。...まったく...。」

 二人も自己紹介をする。見た目的にも雰囲気的にも年上に見えたのか敬語だ。

「二人共、仲がいいねー。」

「あー、二人は幼馴染でな...だからじゃないか?」

「納得ね。」

 二人の雰囲気から、どういう関係か大体察した椿と葵。
 ...わかりやすいからな...。

「あ!見つけた!おーい!」

 すると、今度は遠くからアリシアがやってくる。
 他にも司、奏、アリサ、すずかもいる。ちなみに、全員浴衣姿だ。

「...えっ?」

「見つけたって...別に待ち合わせとかもしてないのに、探してたのか?」

「どうせなら皆で回ろうと思ってね!あ、フェイト達とは別行動だよ!」

 聡がその面子に驚くのを余所に、僕らを探していた訳を尋ねる。
 ...うーん、男女比率がいつものようにひどくなるけど...まぁいいか。

「あ、大宮君と小梛さん。」

「あれ?知り合い?」

「うん。えっとね...。」

「ちょ、ちょっと優輝借りるな!」

 二人の存在に皆も気づき、司が説明する。
 その時、聡が僕の手を引いて少し離れた場所に移動する。

「おおおお、おお、おま、おまっ、どういう事だ!?」

「...あー、説明するから、落ち着け。頼むから。」

「これが落ち着いてられるか!?」

 そりゃあ、学校で有名な9人の内、5人が来たら...な。
 まぁ、その中の緋雪とアリシアは、過去形になるけどな。

「まず、僕と緋雪は兄妹で、司は親友。これは分かるな?」

「あ、ああ...。...その時点で羨ましいが。」

 とりあえず、前提の所から言い聞かせる。

「やかましい。...で、緋雪と司はどちらも共通の知り合いがいて、それが学校で有名になっている面子だ。まぁ、つまりは縁があって僕も知り合う事になったって訳だ。」

「...理解はした。だけど、納得できねぇ!!」

「正直、お前とか他の奴にも妬まれるのは分かっていたけどな。」

 だからこそ、昼休みとかはあまり人に見られないようにしていた。

「なんで...お前だけ...。」

「...だからさ、別に普通に話しかけろよ。下心がなければ、普通に接してくれるぞ?」

「ぐぅ....。」

 わかってはいるのか、それ以上は反論してこない聡。...とりあえず、戻るか。

「なんの話をしてたの?」

「あー、なんで知り合いになのかっていう、普通な事だよ。」

「その割には、悔し涙みたいなのが見えるけど...。」

「気にするな。」

 聡が悔しそうにしてたのに気づくアリシア。...頼むからそっとしてやれ。
 それと、玲菜が不機嫌になってきてる。早く聡を引き渡して僕らは別行動するか。

「ほら、お前は幼馴染と楽しんでこい。」

「ハーレムかこの野郎。」

「いや、実際男女比率のひどさで肩身が狭いぞ。羨むだけにしておけ。」

 聡の背中を押し、玲菜に目で会話する。“楽しんでこい”と。

「ほら、行くよ!」

「あ、ちょ、引っ張るな!」

「よし、これでオーケー。」

 邪魔者...って訳ではないが、これで心置きなく楽しめるな。...大所帯だけど。
 それに、この夏祭りを気に玲菜も一歩前進....できるといいなぁ。(希望的観測)

「優輝ー!これやろうよ!」

「ん?って、もう楽しんでるな。で、射的か...よし、どんと来い。」

 アリシアが誘ってきたので、僕はそれに乗る。
 続いて司と奏も一緒にやる事になり、僕らは夏祭りを堪能した。





「っ、はぁ~!大漁大漁だよ!」

「皆、見事なまでに堪能したわね。」

 満足そうなアリシアの言葉に、椿がそういう。
 そんなアリシアの両手には、射的の景品や水風船...祭りの景品が大量だった。

「一番楽しんでたのアリシアだよな。」

「射的で大きなぬいぐるみを倒した時は驚いたわね。あれ、ゲットできるのね。」

「同時撃ちが前提だけどな。まぁ、力を一点に集中させただけだ。」

 やれ金魚すくいはどうだっただの、やれ型抜きはどうだったと、話で盛り上がる。
 景品系の屋台はほとんどが大勝利だ。負けたのはくじ系ぐらいだな。
 ...途中から、そういう屋台には警戒されてたけど。出禁喰らわないよな...?

「かやちゃんも楽しんでたよねー。」

「ま、まぁまぁだったわ...。」

「狐の仮面を側頭部に付けてそう言われてもねー。」

 椿もだいぶ楽しんでいたようで、結構花が出ていた。
 ちなみに、葵も楽しんでいたが、別に隠してた訳じゃないので弄りの対象外だ。

「優輝君、何をやらせても万能だね...。」

「金魚すくい、水風船釣り、射的、型抜き、輪投げ...全部高得点だったわ。」

「コツを知ってただけだよ。後、経験かな。」

 戦闘とかで研ぎ澄まされた集中力とかが、こういうので役に立ったりするんだよな。

「あ、花火が上がるよ!」

「うん、事前に取っておいて正解だったな。」

 海の方角で、花火が上がる。
 時間を見て、僕らは八束神社の境内に来ておいたため、特等席でそれを眺める。

「綺麗だねー。」

「...そうね。」

「こういうのに手は抜かないからな。海鳴市は。」

 八束神社からだと、海鳴市の大体が見渡せる。
 だからこそ、花火も綺麗に見る事ができるのだ。

「わぁ.....。」

「......。」

 年相応に花火に感嘆するのに混じって、司と奏も同じような表情をする。
 まぁ、こういうのは大人になっても見とれる物だしな。

「....ふふ...。」

「...ふっ....。」

 僕が視線を向けていた事に気づいたのか、司が微笑んでくる。
 それに、僕も軽く笑い返して、一緒に花火を見る。

「久しぶりだなぁ...こうやって優輝君と花火を眺めるのは。」

「確かにな。前世以来だからな...。」

「私は初めて...かな。やっぱり、親しい人と花火を見るのは楽しいわ。」

 司とは前世以来、奏も、僕が死んでから一度しか打ち上げ花火を見ていないらしい。
 まぁ、そんな複雑な事情を置いておいて、なんだか感慨深い気持ちになった。

「ねぇねぇ、今度は海に行こうよ!」

「海か...。それもいいな。せっかくの夏休みだし。」

 ただし、今は混んでいる場所が多いだろう。

「海に行きたいのなら、あたしがパパに頼んで良さそうな場所を見繕ってもらうわ。」

「...金持ちならではの発言だな、今の...。」

「混んでるのを覚悟してた所にこれは驚くね...。」

 忘れがちだが、アリサもすずかもお嬢様だ。
 だから誘拐の対象になりやすかったりする。
 ...まぁ、貸し切りとか言い出さないだけマシだろう。

「海...という事は、水着なのね。」

「かつて貰った水着って、まだ残ってたっけ?」

「一応あるわ。...でも、今の水着と生地が違うわよ?」

 椿と葵が水着に関して何か話している。

「水着...持ってたのか?」

「ええ。江戸の時に、“海で行動しやすい衣服”として、陰陽師が技術の粋を集めて作っていたわ。正直、その時は今でいう水着だとは思ってなかったけど。」

「江戸時代の陰陽師なにやってんの...。」

 まさか、時代の先取りをするとはな...。

「デザインとか自体は今でも通用するから、優ちゃんが生地を今のに創り替えてしまえば、そのまま使えるよ。」

「...僕の創造魔法、ただの便利魔法になってないか?いや、実際便利だけどさ。」

 まぁ、別に嫌って訳ではないので承る事にする。

「じゃあ、今度の機会に行こうね!」

「海に遊びに行く事なんてほとんどなかったから、楽しみではあるな。」

「あー、私もかなぁ...。」

「私も...。」

 ...僕と司と奏って、普段他の人が楽しんでる事、あまりやってないな。
 それぞれ、色々と事情があったから仕方ないけどさ。

「...くぅ?」

「あ、久遠。今日は人が多いから山奥にいると思ったが...。」

「皆の、声がした。」

「なるほど。」

 茂みから子狐の姿の久遠が現れ、僕の頭の上に乗ってくる。

「じゃあ、久遠も花火を楽しもうか。」

「くぅ。」

 こうして、僕らは花火を眺め続けた。
 花火が終わった後は、祭りも後少しだったため、各々家に帰る事になった。

 父さんと母さんは来れなかったけど、お土産として屋台の料理を買っておいた。
 二人も、この夏祭りは毎年楽しみにしてたからな。これぐらいはしないと。









 
 

 
後書き
まさかの受け身に回る優輝。
飽くまで、自分が惚れるか、相手からアクションがあるまで、普段通りに接するスタイルです。...一応感付いているだけに質が悪い...。(そして陥る悪循環)

原作キャラの浴衣姿はinnocent辺りから、司と奏はそれぞれリトバスのクドリャフカ、Angel Beets!の奏の浴衣姿をイメージしてください。描ききれないです...。(´・ω・`) 
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