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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第五話

 
前書き
どうも。今更ですが木曾大好きです。 

 

――と言う訳で今に至る。
 
俺は今日あった出来事を思い出しつつ、部屋の天井を見ていた。小さい頃、寝れない時は天井の木目をよく数えてたっけ。まぁ、そんなことはどうでもいいか。
 
……あいつらが無事ってのは安心したけど、正直に言うとかなり心細い。提督や木曾の前ではかなり強がってたけど、もう不安しかねぇ。
 
だって、あれだぞ?今から一つずつ挙げてくぞ?
 

 その一 男艦娘になっちった。
 その二 ここには女の子しか居ない。
 その三 やる仕事は命懸け。
 その四 高校どうしよ。
 その五 提督変態。
 

これだけの不安要素があるんだ。そりゃ心細くもなる。
 
「………………正直一番は人間関係だけどな。」
 
俺はボソッと口に出した。そりゃそうだろう。ここには提督や木曾の話によればここには女しかいない訳だ。仲良くなれるか、と言うか何が起きるか不安で仕方ない。
頼むからどこぞの恋愛ゲームみたいな事にならないでくれよ…………。
 
そして、もう一つ。
 
「早速脚とか筋肉痛の予感が……。」
 
そう、どうやら海の上を移動する事は、普段使わない筋肉を使うのだろうか、脚がプルプルする。さっきの提督の話とか気を抜いたら直ぐに倒れてしまうんじゃないかと思ってた。耐えれて良かった。
 
……しかし、これでは確実に明日キツイ。
 
今からでも遅くない。しっかりストレッチしとこうかな。俺はこう見えても中学、高校とバスケ部に入っていたからな。ストレッチは一通り習ってる。
 
「おーい、入っていーかー?」
 
と、扉をノックしながら誰かが尋ねてきた。この声は、おそらく木曾だろう。
 
「いいよー。」
 
俺は寝転がっていた状態からベットに座った。そして、扉が開いた。
 
「おーっす。提督の話はどうだった?」
 
かなり気さくな感じで木曾は入って来た。初めて会った時はセーラー服に帽子、目には眼帯をしていたが、その時から変わっていないのは眼帯だけだ。上は黒のタンクトップ。下はショートパンツと、ナニコイツサソッテンノカという感じの格好だった。
 
しかし、今更だがよく見てみると、なかなか整った顔をしているな。スタイルもなかなかだし。ただ、どっちかって言うとカワイイと言うかカッコいいだなと思った。
 
「あぁ、なかなかに長くて面倒くさかったよ。何で目上の人の話ってのはあんなに長いもんなのかね。」
 
「ははっ。ちげぇねぇ。」
 
俺と木曾は二人とも笑った。
 
「しっかし、お前が男だって知った時はビビったよ。お前みたいな中性的な顔をしてるやってそこそこ居るしさ。」
 
木曾は俺の隣に座った。何となくだけど、懐かしいなと感じた。
 
「それは木曾の事かな?」
 
「どうしてだ?」
 
木曾は首を傾げて聞いてきた。何だこの娘。可愛いとこあんじゃねぇかよ。
 
「だって一人称俺だし、口調も男っぽかったからさ。スカート履いてなきゃ勘違いしたかもな。」
 
「何だよ、女がこんな口調で話しちゃ悪いってのか?」
 
木曾はかなり声色を低くして、凄みながら話してきた。しまった、これ地雷か。
 
「いやいや、全くそんなことは思わないね。むしろそんな人が増えてもいいんじゃねぇかな。」
 
俺は御世辞四割、本気六割でそう言った。それがどう伝わったかは分からないが、木曾は
 
「そうか、ありがとな。」
 
そう言って引き下がってくれた。いい娘だ。
 
「そうだ。お前に聞きたいことがあったんだ。」
 
「俺に?」
 
「そりゃ、お前以外だったら逆におかしいだろ。」
 
それもそうだが、そう以外どう返せというんだ。そんな俺に構わずに、木曾は続ける。
 
「お前、大淀さんから聞いたけど、もうここで働くって決めたらしいな。」
 
「まぁ、そうだけど。」
 
「なんでだ?」
 
「?」
 

「何でお前はそんなに早く結論を出せたんだ?」
 

あぁ、そういう事。と、俺は一人で納得した。確かに、木曾の疑問ももっともだ。
 
提督によれば、そこでかなり悩みまくる艦娘も居るらしい。結局、そこで悩んだ艦娘達がどのような判断をしたかは分からないが、それでも俺はそれなりには、と言うかかなり早いらしい。
 
「んで、提督にした誤魔化しは無しな。」
 
「え、」
 
「当たり前だ。お前みたいに宗教とかに無頓着そうな奴が必然とかなんとか言ったところで信じるかよ。」
 
酷い言われようだが、確かにそうだった。
 
俺はあの時、『本当の理由』が恥ずかしくって言えなかったのだ。
 
そう、言えるはずもない。
 

 この目の前の女の子の覚悟に惚れたからだなんて。
 

『確かに俺達は兵器だ。人間じゃない。あいつらと戦わないといけない。そういう宿命だ。だけど、俺達はいつか安心して海と暮らせるようになる日を目指して戦ってる。それも、俺達艦娘の宿命だ。』
 
この時の木曾の目。
 
目指している物を叶えようと言う覚悟の見えた目。
 
それに―――惚れたのだ。
 
だがそれを他人に、しかも張本人に言えるはずもない。
従って少しの間、それっぽいことを考えてた。
 
「そうだな……正直、俺はこう思った訳だ。」
 
「ほう、どう言う風に?」
 
「こんな命懸けの戦い、女の子だけにさせてなるものかってね。」
  

「………………………………………………………………………………………。」
 
 
ヤバイ、めちゃくちゃ疑ってる。
 
ジーッとこちらの目を見て視線を逸らさない木曾。俺は、逸らしたら負けな気がして、必死で木曾。目をじっと見た。……片目眼帯だけど。
 
「仕方ねぇ。そーゆー事にしとくか。」
 
木曾はおそらくまだ疑ってる様だが、一応引いてくれた。ふぅ。やな汗かいたぜ。
 
「んじゃ、そろそろ部屋に戻るわ。」
 
そう言って立ち上がる木曾。
 
「ん、そうか。」
 
「あーそうそう、明日は朝八時に執務室に来いって提督が。」
 
あの提督は……さっきついでに言っとけよ……。
 
「おう、ありがとう。」
 
まぁ、そんな愚痴を木曾にする訳も行かない訳で。俺はその言葉を飲み込んだ。
 
「ういじゃ、これから宜しくな。おやすみ。」
 
「おやすみ。」
 
そう言って、木曾は部屋を出て行った。
 
「ふぅ……絶対嘘ってバレてるよなぁ…………。」
 
俺はさっきの木曾とのやり取りを振り返ってそう呟いた。…………まぁ、俺からも木曾からもお互いに信頼し合える仲にでもなったら話すかね。
 
そう考えながら、俺は再びベッドに寝転んだ。頭ん中では色々考えたい事だらけなのだが、体の方はどうやらクタクタの様だ。ここまで疲れたのは部活の合宿以来だ。
 

あの頃の努力が水の泡になるのは少し寂しいな、と最後に思って、俺は目を閉じた。
 


 …………………翌朝、あんな起こされ方をされるとは知らずに。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。
少し設定の話を。
この小説の感覚では、艦娘と言うのは元々その素質のある人がその艦の艤装に触れることで艦娘になれる、みたいな解釈で書いています。
つまり、ゲームでの『建造』で出来上がるものはここでは『艤装』という事になります。人は別の所から来る、と言う訳です。
それでは、また次回。
追記 誤字を修正しました。
更に追記 五月二十日 投稿作品全体に修正を加えました 
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