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真田十勇士

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巻ノ八十九 水を知りその二

「戻ります、そして」
「そのうえでか」
「また修行に励み」
 そしてだった。
「十勇士の他の者達もです」
「天下の武芸者に合わせてか」
「その技を磨かせます」
「そして時に備えるか」
「その所存です」
「わかった、ではな」
「はい、これまで有り難うございました」
 幸村も村上に礼を述べた。
「重ね重ね礼を申し上げます」
「ではな」
「しかし」
 ここでだ、幸村は村上にこうも言った。その言ったことはというと。
「先日毛利殿はです」
「動かれぬことはか」
「はい、若し戦になろうとも」
「そう言ったな、確かに」
「では」
「これはわしの見立てじゃが」
「村上はこう断って幸村に話した。
「殿はやはりな」
「その様にお考えですか」
「時を待たれておる」
「関ヶ原から」
「そうであろう、そしてな」
「島津殿もですな」
「今戦になっても勝つのは徳川家じゃ」 
 彼等だというのだ。
「豊臣家が勝てる筈がない」
「それを両家はわかっておられるからこそ」
「動かれぬわ」
 豊臣家にはつかないというのだ。
「つかれる大名家はないであろう」
「加藤殿も福島殿も」
「心ではお慕いしていてもじゃ」
「負ければ滅びる」
「お取り潰しは免れぬ」
 それはどうしてもというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「どの家もつかれぬ」 
 豊臣家にはというのだ。
「戦になって滅びるのをな」
「見ているだけですか」
「沈む船に自ら乗る者はおらぬ」
 こうもだ、村上は言った。
「沈むとわかっている船にな」
「ですな。それは」
「誰でもな」
「乗りませぬな」
「だから今は殿も動かれぬ。しかし」
「左様ですか」
「それが何時になるかわからぬが」
 例えそれでもというのだ。
「時が来ればじゃ」
「毛利殿、そして島津殿は」
「動かれるであろう」
「そうなられますか」
「そうじゃ、しかし動かれぬが」
 しかしとだ、ここで村上はあらためて言った。
「助けることは出来る」
「ですか」
「そうじゃ、特に島津殿はな」
「その時は」
「頼られよ」
 村上は幸村達に微笑んで述べた。 
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