高くて悪いか
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第三章
「ひょっとしてニメートルかも」
「二メートルってね。何なのよ」
「それじゃあ殆どプロレスラーじゃない」
「ジャイアント馬場さんみたいね」
往年の名レスラーだ。非常に残念ながらもうこの世を去ってしまっている。水平チョップにジャイアントスイング、それに十六文キックで知られている。
その伝説のレスラーみたいだとだ。女の子達は亜美の話を聞いて言ったのである。
「二メートルっていうと」
「ちょっと以上に凄いけれど」
「あのファミレスにそこまでの人がいるのね」
「そうなのよ。だからね」
それでだとだ。また言う亜美だった。
「私ちょっとその人と」
「好きになったの?」
「意識してるの?」
「顔もいいのよ。物腰も丁寧で」
それでだとだ。亜美は周りに赤くなった顔を見上げられながら話していく。
「いいかなって思って」
「けれどそうした大きい人がよね」
「小柄な娘が好きなのよね」
「そうよね、それって」
「そうなるから」
「だからよ。それでね」
亜美は困った顔になった。ここで。
だがそれでもだ。こうも言うのだった。
「それでもね。当たって砕けろよ」
「彼氏ゲットね」
「そうするのね」
「彼多分私達と同じ年代だから」
つまりだ。高校生位だというのだ。
「交際しても問題ないし。だからね」
「まあ頑張りなさい」
「人の恋路は邪魔しないから」
「むしろ応援するから」
「頑張ってね」
「ええ、行って来るわ」
こう言ってだ。そのうえでだった。
亜美はそのファミレス、白をベースにブラウンの木の床、クリーム色の四人用の壁と一緒になったソファーとテーブルのレストランに入ってだ。それでだった。
その店員、男性店員の白いシャツと黒のズボンに蝶ネクタイの長身の彼にだ。こう言ったのだった。
「あの、店員さんって」
「はい、何か」
「お名前は」
「猪木です」
見れば顎が出ている。黒髪を後ろに撫でつけた精悍な顔をしている。しかも逞しい身体をしている。
「猪木主浩です」
「猪木さんですか」
「はい、そうです」
にこりと笑ってだ。店員はこう名乗るのだった。
「その通りです」
「そうですか。それで」
「それでとは?」
「学生さんですよね」
「八条高校の一年です」
「あっ、じゃあ私と同じですね」
それを聞いてだ。亜美は嬉しくなった。同じ歳同士ならというのだ。
「それじゃあ」
「それじゃあとは」
「あの。よかったらね」
同じ歳とわかったのでだ。亜美は口調を変えてきた。
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