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とある世界の物質破壊≪ディストラクション≫

作者:叶愛
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Extra edition
  忘れられない誕生日

 
前書き
湊『今日は美琴の誕生日だ!ということで、これは俺が5年前11歳で俺が美琴から距離を置き始める前の話。』
作者「仲がいい御坂兄妹が見れます!」
湊『それじゃあ、本編へ!』
作者「今回は湊視点です。(美琴はサプライズだからお休み!)」

※書いた日が5月2日だったので、許してください。 

 
「ん……。」

カーテンの隙間から差し込む太陽の光が、まだ寝ぼけてはっきりしていない顔に当たる。

僕は、その光が眩しいからか逃げるように顔の向きを変え、もう1度寝に入ろうとした。

その時、聞きなれた可愛らしい声が廊下から聞こえたと思った瞬間に扉が勢いよく開かれ、1人の少女が飛んできた。

「お兄ちゃん、起きて!」

「ん……もう少しだけ寝る……。」

僕は、自分の上に乗って抱きついて起こしてくる妹の美琴にそう言うと夢の中へ行こうとする。

「む……お兄ちゃん!お・き・ろー!」

そう怒鳴ったと同時に、美琴は湊から離れて距離を取ってから勢いよくお腹にダイブしてきた。

「うぐ……!」

僕から変な声が聞こえ、美琴からは楽しそうな声が聞こえる。

「起きてくれないと、またやるよ?」

「お、起きる…!起きるから止めて…!」

美琴が笑顔で言ってくるため、湊の顔はどんどん青ざめていった。

僕が服を着替えている間、美琴はベッドに座り「まだかなぁ…」と僕を見ながらボヤいていた。

「ねぇ、お兄ちゃん?」

「ん?」

美琴はあと少しで着替えが終わる僕に話しかける。

「あ、あのね……その……。」

顔を赤くしながら話す美琴に、僕は頭に?マークを浮かべつつ、シャツのボタンを止める。

「ちょっとこっち向いて…?」

「え、うん。」

ボタンを止めて着替え終わってから、美琴が座る隣に座った。

「どうしたの?みこ……」

僕の言葉は美琴の行動で途絶えた。

美琴の行動、それは抱きついてきた事だった。

だが、湊本人は起きる時にいつも抱きつかれているためあまり気にしない。

「美琴?どうしたの?」

「ばか……!」

「え!?」

美琴は何故かいきなり怒り、僕の胸をドンドン叩く。

──結構、痛いんだよなぁ……あ、そうだ。

今もドンドン叩く美琴を見て、おる事を思いついたため微笑んで実行してみた。

「美琴。」

「え……にゃ!?」

──美琴って頭撫でられるの弱いんだよね〜。

僕は美琴の頭を撫でながら、わざと耳元で名前を呼んだ。

美琴は猫のように「にゃ〜」と気持ちよさそうにしつつも、チラチラと僕の満足そうな顔を見て顔を赤くしていた。

「さて、そろそろ母さんの所に行こっか。」

「にゃ……う、うん。」

少し美琴が名残惜しそうな顔をしていたことに、湊は気づいていなかった。

そして、美琴自身も気づかない内に湊に恋心を寄せている事が分かるのはもう少し先の話だった。






湊の部屋を出て、2人は廊下を通り階段を降りていく。

いい香りがリビングだけでなく廊下にまで広がり、まだ朝食を済ませていない2人の食欲をそそった。

「おはよう、みなくん。美琴ちゃん。」

「おはよ、母さん。」

「ママおはよー。」

みなくんというのは、湊の母…美鈴が呼ぶあだ名で湊本人も呼ぶことに対しては不満を持っていなかった。

家族4人で席につき、朝食を済ませる。

今日の朝食は和食でどれも美味しいものだった。

「あ、そうだ!」

美鈴が何かを思い出したのか、いきなり立った。

それに驚いたのか紅茶を飲んでいた美琴がむせてしまった。

「美琴、大丈夫?母さんはどうしたの?」

「今日は早く帰ってきてちょうだいね!美琴ちゃんの誕生日パーティーだから!」

「た、誕生日パーティー!?ママそんな、だい…」

「良いから良いから!」

──僕も準備しないと……。

そんな賑やかな会話が続き、湊と美琴は学校へ向かった。





湊は放課後、あるデパートに来ていた。

理由は妹である美琴の誕生日プレゼントを買うためだった。

今の美琴は湊が本当の兄だと思っているが、実際は血の繋がってない義理の兄。

湊と美琴の繋がりは、母親同士が親友だった事もあり関わっていたが、今の美琴には当時の"幼馴染みの湊"の記憶はない。

何故記憶がないかは、後ほど本編で。

──美琴が喜びそうな物……ゲコ太?

ということで、ゲコ太が売っているお店に向かった。

だが、向かっている途中のあるお店で湊は足を止める。

アクセサリーショップで、様々な宝石類から宝石をはめたネックレスやイヤリング、ピアスにブレスレットなど以下にも女の子が欲しがりそうな物ばかりが、キラキラと店内に並べられていた。

そんな中から、一つ湊は手にして眺めた。

銀板にオレンジと赤色の宝石がはめられ、無料で名前を掘ってくれるというサービス付きのネックレス。

銀色のチェーンで繋がっており、よく見ると銀板だけでなく小さい羽のチャームまで付いていた。

──これに美琴の名前を入れてもらって、ゲコ太と渡そう。

「すみません、これを買いたいんですけど……」

すぐさま会計し、誕生日プレゼント用にラッピングしてもらう。

値段は宝石があるからか、そこそこするが普段あまりお金を使わず学園都市で能力研究に協力しているため11歳が持っては良くないほどの大金が財布に入っているため、問題なかった。

ラッピングされたネックレスを受け取り、ゲコ太が売っているお店に向かう。

「よし、これでOK。」

ゲコ太のぬいぐるみと名前入りネックレス。

それが湊からの今年の美琴への誕生日プレゼントだった。

湊は帰宅後、美琴にバレないように玄関に入り廊下を通り階段を登って自室に急ぐ。

無事に自室前まで着いた事を確認して、扉を開け中に入る。

「ふぅ……何とかバレなかった。」

静かにドアを閉め、プレゼントを机の上に置き椅子に座る。

──誕生日パーティーは7時からのばす。

それまで何しようかな……

湊は今日のミッションである美琴の誕生日プレゼントを買い終わったため暇になった。

「んー……何か眠くなってきた……。」

うとうとしながら、椅子の背もたれに寄っかかると数分もしない内に湊は夢の中へと行った。









「ん………あれ。」

湊は椅子から立ち上がり、時間を確認した。

──まさか、寝ちゃうとは……。

時刻は間もなく7時。

「あ……やばい。」

急いでクローゼットを開け、服を出す。

「流石に、部屋着は不味い……!」

黒のシャツに赤色のカーディガンを羽織り、黒のズボンを着る。

鏡を見て寝癖を直し、急いで部屋を出る。

もちろん、プレゼントは忘れずに。

「お兄ちゃん寝てたでしょ?」

階段を降りて、リビングに入ると何故か少し怒りながら美琴は湊に話しかけた。

湊は急いでプレゼントを背に隠し、「そ、そんな事無いさ…!」と言いながら席に座る。

家族全員が揃い、父さんと母さんが一斉に歌い出し僕は笑いながら合わせて、美琴は恥ずかしそうに僕の裾を掴んで隠れる。

そんなこんなで賑やかな会話をしつつ、夕食を終えて僕はプレゼントを渡そうと準備した。

だが、いざ渡そうとした時何故か母さんに止められた。

「え……母さん?」

「みなくん、悪いんだけど部屋で美琴ちゃんに渡してくれる?」

良く見ると背中には大きなプレゼントの袋。

──あー、なるほどね。

「りょーかい、美琴。」

そう言って、美琴を連れて自室に向かった。






「何、お兄ちゃん?」

「誕生日おめでとう、美琴。」

背中に隠していたラッピングされたプレゼントを美琴に渡す。

美琴はキラキラした目で「開けていい!?」と聞いてきたため、僕は頷いた。

「ゲコ太ー!ありがとう、お兄ちゃん!」

「どういたしまして、それもプレゼントだよ。」

「ネックレス……?」

「そう、美琴って名前を入れてあるだろ?」

「ホントだ!一生大切にする!」

美琴は、「わーい!付けて!」とジャンプしてネックレスを僕に向けて言ってきた。

「OK、後ろ向いて。」

クルッと後ろに周り、髪の毛を首からどかした。

「はい、付けたよ。」

「ありがとう!」

満面な笑みで振り返ってきた、美琴。

僕はその時、口に出すつもりでは無かった言葉がポロッと出てしまった。

「……美琴が本当に妹だったら良かったのに……。」

「え?」

「……あ。」

──僕……今なんて言った……?

まさか……口に出してた……?

急いで美琴に弁解しようと、話しかけた。

「い、今のはその違うよ…!その…!」

これは絶対に言ってはいけなかった。

今の美琴は自分を兄だと思っている。

──そんな兄からあんなことを言われたら間違いなく怒るはず……。

そう思っていた。

だが、美琴は全く違うことを言ってきた。

怒るのではなく、問い詰めることでもなく、母さんに聞きに行くわけでもなく、ただ。

「お兄ちゃんと美琴は兄妹だよ?だって……」

美琴は間を置いてから、ゆっくりと話した。

「ママに聞いたらね教えてくれたの、美琴って名前の漢字には"琴"っていう楽器の漢字が入ってて、お兄ちゃんの名前は湊だから"奏"っていう字が入ってるでしょ?だから、"琴を奏でる"で兄妹だよ!」

僕はポカーンとしてしまった。

偶然なのに、当たり前じゃないのに、そういう意味でこの名前が付けられたわけでもない。

それでも、自分が美琴の兄であるという証を美琴なりに考えてくれた。

ただ、それだけなのに嬉しかった。

血が繋がっていない事を美琴が思い出したら、きっと自分に怒るだろう。

自分と一緒にいたら、必ず危ない目にもあう。

それでも、その一言で僕は改めて約束した。

──これからも何があっても君を守る。

自分の命と引き換えにしても、この世界を引き換えにしても君だけは必ず……

守ってみせる。

美琴が9歳になったこの日、この日だけは僕は絶対に忘れない。 
 

 
後書き
すみません、投稿ボタンを押すのを忘れていました……
それに今更気づく作者……。
投稿日は5月2日にしますが、実際は5月3日です。
本当にすみませんでした……!
今回は湊と美琴が出会って、義理の兄妹関係が始まって少し経った頃の話です。
ほのぼの話になったでしょうか…?(自信ない)
度々、番外編を書くのでよろしくお願いします! 
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