フルメタ妄想最終回
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05
ロケットランチャーを目の前に突き付けられ、後退して爆破領域から離れるソースケ。カナメもテッサと入れ替わりながらも、どうにかメリダ基地内を逃げ回った。
「女一人殺すのに、ロケットランチャーとか、あんたやっぱりおかしいわっ」
「サガラさん、サクっと殺っちゃいましょう、ウフフフフフフ」
恋敵はサクっと殺害する方針のテッサ、ナミのSATSUGAIを指示して、ミラにも刺客かトマホークミサイルを送っているかもしれない。
「待てテロリストめっ!」
すでに戦闘モードオン、猛禽類の表情で獲物を追って追い詰めるソースケ。恋愛だとか任務の前には関係ないし、その女がどうしようもないテロリストで、人類の滅亡を目指しているなど許されない行為で、射殺以外の処置は有り得なかった。
「ちょっと待ちなさいよっ、話し合いましょう」
「テロリストとの対話は必要ないっ、全員射殺がセオリーだ」
「ぎゃあああっ!」
パイプは外したが。細かい配線とかは引きちぎって逃げ回るカナメだった。
ヒロインをロケットランチャー構えて殺すために追いかける主人公。
まあ相手はオムニスフィアに接続しすぎて、テロリストどころか人類の敵になってしまって、人類滅亡を願って実行しようとしているウィスパードで、予測や予知能力で9ミリ弾ぐらいなら避けてしまう女なので仕方がない。
「人類の敵めっ、大人しく射殺されろっ!」
「ぎゃあああっ!」
カナメを守るとか、連れ去られる前の良い雰囲気とかはどこに行ったのか? 獲物を狩る狩猟動物の目で追い回すソースケ。
もちろんそうしなければ、この腐った装置を使ってカナメは地球を滅ぼす。
獰猛な海の生き物から進化したのが間違いだと言い出して、レナードもカリーニンも賛同して、昆虫だけ生き残らせてやり直すつもりらしい。
「サガラさん、片手の操作を奪いました。今です」
カナメを少しだけ乗っ取ったテッサが、左手でパイプを持って肘を掛けて全力で掴んで本体を引き留めた。
「離しなさいよっ、このツルペタの鈍臭子がっ」
右手で自分の左手の小指を起こしてパイプから引きはがそうとしているカナメ。
「キーー、誰が鈍臭子ですかっ」
二人とも乱闘で熱くなりすぎて加減を見失い、結構混ざっちゃっていた。
「大佐殿?」
ソースケは獲物を目の前にして舌なめずりして、祈りの時間まで与えてやるような習性は持ち合わせていなかったが、そのままカナメを射殺するのは躊躇した。
「このままチドリを射殺すると、大佐殿もダメージを負われるのでは?」
「「あ?」」
左手を支配して、結構言葉を喋る時間まで奪い取れる状態。事前に覚悟はしていたが、ウィスパード同士混ざり合って、紅茶とミルクの関係になっていた。
「このクソッタレのメスブタが、人の体にまで入り込みやがって~~!」
「キーーッ、貴方こそ人類丸ごと滅ぼそうなんてどうかしてますっ!」
女の戦い?が続き、二人の醜悪な部分を見せつけられるソースケ。
カナメの独り相撲というか、半分テッサに支配されて結構なドッタンバッタンの大騒ぎだった。
「チドリ、吐け、この装置で何をしようとした?」
テッサと揉めている間に、目の前に突きつけられたロケットランチャーの大迫力に、さすがのウィスパードでも回避不可能と判断したカナメは両手を上げて降参した。
このまま発射されても心中にはならないで、入口で控えているレーバテインが「搭乗者保護のためラムダドライバを使用しました」とか言ってソースケだけ守ったりするかもしれない。
「フンッ、あんたの足元にオントンジャワ海台ってのがあるのよ、深さ30キロもあるクソな分厚いマグマが煮えたぎってるわ、これが吹きだしたら海の中の魚も全部塩茹でになって、クジラだって塩焼きよ」
「何だと? それではやはり人類も」
「は? 人間、生きて行けるわけがないでしょ? 酸素も無くなるし、硫黄や硫化水素吸ってみんなあの世行きよ。噴火の向きにもよるけど、地球の公転周期とか軌道が変わるぐらいの爆発よ 灼熱地獄になるか全休凍結ね」
「クソッ、その破壊力はTNT火薬にして何トンになる?」
爆発力が理解できず、つい業界用語で聞いてしまうソースケだった。
「さあ、富士山の爆発の八千万倍ぐらいって書いてあるわ」
ネットによく出る解説で、イエロ-ストーンで富士山の2500倍、七万年前に終局噴火を生み出して、人類を千組程度のカップルに減らして遺伝の多様性を消したトバ火山でも3000倍程度、ペルム紀の大絶滅を起こしたシベリアトラップでも400万倍程度なので、文字通り桁が違う。
「悪魔め……」
カナメの中のテッサ部分が死なないように、ナイフで始末する方法がないか考えたが、左半身だけ生かすような殺し方は知らなかった。
「さあ、サガラ軍曹、このクソビッチを今すぐ射殺してください、これは命令です」
左手でカナメ本体の顔を殴り続け、右手と攻防しているのを見せられ、ウィスパード同士の戦いの内容をなんとなく察したソースケ。
「それは良いのですが、大佐殿も半分死んでしまうのでは?」
「構いません、人類の為です」
「ハッ、了解しました」
せめてテッサにダメージが及ばないよう、右脳を残して左脳を破壊するためグロッグを抜いた時、異変が起こった。
大きな地震が起こり、耐震設計されていた軍事施設にも被害が及んだ。
「ハッハー、チェックメイトよ、もう何もしなくても噴火は起きる、止める方法なんてないわ、とんでもない爆発が起こって、グハッ!」
そこで黒い表情のまま笑うカナメにも異常が起こった。
「つ~か~ま~え~た~~~~」
地獄の底から響くような声、それはカナメの「耳」から鳴った。
「何を人の耳で喋ってんの? 器用なことしてんじゃないわよっ」
「うふふふふふふふふふふ、相良さん、私を元の場所に連れて行って下さい、まだ止める方法はあります~」
「だ、誰だ?」
カナメの耳を使って喋る化け物、その声にソースケは聞き覚えがあったが、毎夜オムニスフィアから囁く声とか、一度だけ救助した少女の声を覚えているほど記憶力は優れていなかった。
「嫌ですね~~、貴方の恋人、久壇未良ですよ~~、王子様~~」
要救助者氏名で閲覧したが、この声の種類や出現方法は、会話してはならない人物だと一瞬で判断できた。
壊れた時計のように、テロの被害者だった人物が、短針より長針が早く回るように、すぐさま発狂して、周囲の人間も壊しながら自分も破滅する種類の人物で、清潔とは程遠い人種の声だった。
「あ~た~し~も~い~る~わ~よ~~~」
今度こそ地獄の亡者の声で耳から発声し、左右の耳から脳を乗っ取られたカナメも発狂した。
「ぎいやあああああああああっ!」
まず人差し指で脳を突こうとして、耳の穴に阻まれて届かないので、小指で試したが強度が足りず折れた。
「さあ、早く元の場所に~~」
「ソースケ~~~」
「ぴぎゃああああDZLFはWりおHYぎDGFSりあ;FJW::@AFHUぱうっ!」
死霊に汚染されていく脳と体を感じて暴れるカナメ。それを両耳?に要求された通り、お姫様抱っこしてエンガチョしながら元の装置の中に放り込んだ。
「ばいらてらるかくさんてんご~~、TAROSきんきゅうしどう~~、あははははははははっ!」
もうカナメ本体は白目剥いて、口から泡まで吹いて失神しているが、幽霊とゾンビに操られてガックンガックン気持ち悪い動きで必要なチューブ類を接続して装置を再始動させた。
「「せかいをっ! かくめいするちからを~~~~~~~~~~っ!!」」
その装置の中心から、世界が黒く腐って行くのを感じた宗助は、大地震の中をレーバテインまで急ぎ、ASを緊急始動しようとしたが、地面からの噴火に押されて間に合わなかった。
「くっ、ここまでかっ!」
終局噴火の数千万倍の、すでに火山とは呼べない爆発の中、一瞬ラムダドライバが作動したが、それも光とも爆発とも言えない凄まじい音の中に埋もれて行った。
その巨大な破壊を追うように波が起こり、未来も過去も書き換えられて行った。
ブラックテクノロジーが存在しない世界、ウィスパードもオムニスフィアに接続できる超人もいない、平和な世界に。
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