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神隠し

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第四章

「四日前に山の中で会いまして」
「山の中で?」
「そうなんです、会いまして」
 そしてというのだ。
「山の中で周りを驚いた顔で見回しているところで会いました」
「そうなの」
 つう自身も言う。
「急に知らない山の中にいて」
「御前さんは村で遊んでいたんじゃなかったのか」
「それが気付いたら」
 まさにとだ、つうは茂吉に話した。
「そこにいて前に勘兵衛さんがいて」
「いや、本当位驚きました」 
 勘兵衛は茂吉にあらためて言った。
「まさかこんなところでって思いまして」
「それで一緒に村まで歩いて」
「帰ってきたんだな」
 茂吉は目を瞬かせながらつうにも応えた。
「また凄い話だな」
「あの、ひょっとして村では」
 勘兵衛は茂吉が目をしきりに瞬かせたうえで白黒させているのを見て彼に問うた。
「大騒ぎでした?」
「当たり前だ、子供が一人いなくなったんだ」
 茂吉は勘兵衛にすぐに答えた。
「それでどうして騒ぎにならないんだ」
「やっぱりそうですか」
「そうだ、それこそな」
 まさにというのだ。
「騒ぎにならない筈がない」
「やっぱりそうですか」
「そうだ、しかし戻って来たなら」
 それならとだ、茂吉はつうの影や尻や頭といった場所を見回しながらこうも言った。何かが化けているのならそうしたところにおかしいものがあると思ってだ。
 だが何も異常がなくてだ、そのことに安心してから言った。
「いいことだ、すぐに伍平達のところに連れて行く」
「そうした方がいいですね」
「勿論だ、商いの話は後でだ」
「それじゃあ」
 勘兵衛もそれでいいと返した、そしてだった。
 茂吉はつうを伍平達のところに連れて行った、見れば夫婦は彼等の田の傍に座って昼飯を食っていた。暗い顔で項垂れて。
 茂吉はその二人のところにつうを連れて行ってだ、娘を見せて事情を話した。
「そうしたことらしい」
「四日前に」
「四日前っていうと」
 二人は自分達の目の前にいる娘をまるでお化けを見る様な目で見つつ言った。 
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