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食用ナメクジ

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第三章

 これだというものが出た時にだ、ヘルシングはセーゲルに言った。
「このナメクジならだ」
「食べてもですね」
「美味い筈だ」
「エスカルゴとほぼ同じ身体、そして遺伝子の構造ですからね」
「調理すればな」
「エスカルゴと同じ味になりますね」
「そうなる」
 まさにとだ、ヘルシングは言葉で太鼓判を押して答えた。
「では早速調理をしてみよう」
「そうしますか」
「調味料を用意しよう」
 ヘルシングは意気揚々として言った。
「これでも独身時代が長くてね」
「そういえば教授結婚は三十五歳でしたね」
「それまでは交際相手はいてもだ」
「お一人だったから」
「家で一人で料理をしていた」
 そして食べていたというのだ。
「だからそれなりの自信はある」
「そうですか、私はもう学生時代に結婚して」
「それからはか」
「はい、妻が作ってくれていますので」
「羨ましい話だな」
「まあそれは」
「しかしだ、今から私が調理をする」
 話を戻してだ、ヘルシングは笑ってこう言った。
「そうする」
「ナメクジ達だけをですね」
「簡単にオリーブオイルで焼くか」
「お塩と胡椒で」
「あっさりといくとしよう」
 こうしてだった、ヘルシングは早速調理の用意をした。実際に簡単に塩胡椒で味付けをしてオリーブオイルで炒めて食べるつもりだった。シンプルだが堅実な味になる。これはエスカルゴの場合である。
 調理の流れは順調だった、だが。
 ナメクジ達に塩胡椒をかけて下ごしらえをしてからだ、ヘルシングはフライパンを熱してオリーブオイルをその上に垂らしたところでだ、調理を見守っていたセガールが言った。
「教授、待って下さい」
「どうしたんだい?」
「ナメクジ達が」
 肝心の彼等がというのだ。
「縮んでいます」
「まさか」
「はい、さっき塩をかけましたね」
「ああ」
 自分がやったことなのではっきりと答えることが出来た。
「下ごしらえでな」
「そのせいで」
「ナメクジ達がか」
「縮んでいっています」
「確かにな」
 実際に見ればそうなっていた、ナメクジ達が縮んでいっている。塩をかけたからであることは明らかだった。
「塩のせいでか」
「そうなってますね」
「いや、これはな」
「気付かなかったですか」
「ああ、だがな」
「だが?」
「このことは問題だな」
 こう言うのだった。 
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