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嫉妬を止めて

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第六章

「パワフルで動きが素早くてしかも技も多くて」
「技の研究にも熱心だしね」
「そういうのを見たらね」
「凄いっていうのね」
「馬場さんや猪木さんの後継者って言われてるんでしょ」 
 日本のプロレスを形成したと言っていい偉人達だ、それぞれ力道山の遺志を継いだと言っていいであろうか。
「そうでしょ」
「そうみたいね、プロレス雑誌だと」
「八条プロレスでも若きホープ扱いで」
「よく知ってるわね」
「実は私プロレスも好きだから」
 それで知っているというのだ。
「そうした雑誌も読んでるから」
「知ってるの」
「試合も観てるし」
「その趣味今はじめて知ったわ」
「言わなかった?」
「初耳よ、とにかくそうした雑誌とか試合でお兄ちゃんのこと知ってるの」
「いや、ホーガン様みたいね」
 美優紀の口調は惚れ惚れとさえしていた、その目で見たものに対して。
「見事よ、本当に素晴らしいレスラーだしこれからは」
「もっとなのね」
「凄くなるわよ、そんなお兄さんで何が不満なのよ」
「だから大食らいでばかでかい」
「二メートルなんて立派じゃない」
「場所物凄く取るから」
 家の中でだ、その巨体で。
「声も大きいし笑い声なんか特にね」
「ガハハよね」
「外でもそんな笑い方なのね」
「豪快なヒーロー笑いで有名よ」
「そうなのね、とにかくね」
「その笑い声もなの」
「五月蝿いし」
 家族、それも妹としての言葉だ。
「もうね」
「サイン頼まれたりとかは」
「時々あって増えてきてるわ」
「お兄さんがそんなに有名って凄いじゃない」 
 サインを頼まれるまで、というのだ。
「それで断る人じゃないでしょ」
「サインも何時でも誰でも受けるって言ってるわ」
「そこよ、そんな凄いお兄さんいて何でうちのお姉ちゃんの方がいいとかね」
 それこそとだ、美優紀は彩にまた言った。
「もう何言ってるのってことよ」
「そうなるのね」
「そうよ、最強のお兄ちゃんじゃない」 
 まさにというのだ。
「いいお姉ちゃんだって羨ましいって思ってたのね」
「心からね」
「それは間違いよ、そんなことを言ったら私がよ」
「嫉妬してるの」
「そんな凄いお兄さんいるって」
「そうなるのね」
「そうよ、しかも私達って自分自身のことじゃないのよ」
 羨ましいだの思うことはというのだ、今現在。
「それぞれのお兄さんお姉ちゃんのことで」
「言われてみると確かに」
「だったらよ、それを自慢しても結局は」
 美優紀はここで冷めた感じになった、そうして彩に話した。 
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