嫉妬を止めて
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第四章
「そして今やだ」
「若きスターね」
「チャンピオンにもなるぞ」
「どうしてそうなるのよ」
「なりたかったんだよ」
これが宏伸の返事だった。
「レスラーにな」
「そしてなったのね」
「なったからにはな」
「もうどんどん強くなるので」
「猪木さん以上のレスラーになるからな」
華麗かつダーティーなファイトには定評がある、まさに格闘技いやプロレスをやる為に生まれてきた様な人物だ。
「楽しみにしていろよ」
「怪我はしないでね」
「だから高見山さんみたいに準備体操は欠かしていないさ」
「ハワイ出身の」
「そうだ、怪我をせずにそうしてな」
「これからも活躍していくのね」
「チャンピオンにもなってな」
果物は全て食べ終えて野菜ジュースも全部飲んだ、そうしてだった。
宏伸はトレーニングに出掛けた、食べた後はしっかりとゴミ箱に入れて。彩はそんな兄を見送って眉を顰めさせるばかりだった。
そのうえで学校では美優紀の姉自慢と憧れを日々聞いた、だが。
ある日だ、いい加減普段からうんざりとして聞いていたので遂に切れてだ、彩は美優紀に対してこう言った。
「美優紀ちゃんはいいわよ、そんな素敵なお姉さんで」
「そうなのよね」
美優紀はまずは皮肉をに皮肉と思わず返した。
「本当に」
「そうじゃなくて、美優紀ちゃんはそんな最高のお姉さんで」
彩はその美優紀にさらに言った、怒った感じになって。
「私なんてね」
「お兄さんのこと?」
「やたらでかくて大飯食らいでがさつなレスラーよ」
その宏伸のことを言うのだった。
「もうね」
「何かまた勝ったらしいわね」
「そんなの知らないわよ、けれどね」
「けれど?」
「何で美優紀ちゃんにはそんなお姉さんがいて」
美優紀に対して怒った顔になって言った。
「私はそんなお兄ちゃんなのよ」
「レスラーの」
「何がチャンピオンになるよ、岩みたいな顔でいつもガハハって笑って大飯食ってトレーニング三昧で」
家ではいつもそうだというのだ。
「陽菜さんみたいに奇麗で文武両道で芸術のセンスがあって繊細でもないのよ」
「えっ、けれど」
美優紀は彩のその言葉を聞いて彼女に言った。
「宏伸さんって」
「何で私にはそんなお姉さんがいないのよ」
「何言ってるのよ」
美優紀はここで彩に対してこう言った。
「彩ちゃんのお兄さんって凄いじゃない」
「凄いって?」
「そうよ、あんなお兄さんそうはいないじゃない」
それこそという言葉だった。
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