風魔の小次郎 風魔血風録
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99部分:第九話 夜叉の窮地その九
第九話 夜叉の窮地その九
「また会おう、妖水」
「ぬかった・・・・・・だがここにいても」
敗れた以上何の意味もない。それを悟った妖水は空を切り裂きその中に姿を消した。彼の敗北は明らかであった。
そして竜魔と陽炎の闘いもまた佳境に入っていた。陽炎が一斉に扇を放って来たのだ。
「受けよっ」
それと同時に木刀を手に大きく前に出る。扇と木刀を使った同時攻撃だった。
しかしその時に右に大きく隙が出た。今まで扇で守っていた右に。そこが竜魔にとって狙い目だった。
「抜かったな、陽炎」
「何っ!?」
陽炎は木刀を振り下ろしつつ竜魔の声に反応した。
「どういう意味だ、それは」
「こういうことだ」
竜魔は自身から見て右から左に抜けた。それと共に木刀を繰り出す。それは陽炎に右腹を打ったのだった。
「ぬっ・・・・・・守りが薄くなるのを狙ったか」
「その通りだ。貴様ともあろう者が焦ったか」
「しまった・・・・・・」
「死にはしないだろうがその傷は深い。戦線離脱は必至だな」
「おのれ・・・・・・」
「夜叉八将軍、これで全員揃うことはなくなった」
竜魔はそれを指摘する。
「特に参謀である貴様がいなくなることは大きい。風魔の勝利はもらった」
「さて、それはどうかな」
「何っ!?」
倒れようとする陽炎の言葉に顔を向けた。
だが陽炎は答えずそのまま倒れる。倒れながら力を振り絞ってかその身体を消して戦場を離脱していく。竜魔もまた勝利を収めたのであった。
しかしそれでも。竜魔の顔は晴れやかにはならなかった。怪訝な顔で戦場に残っていた。
「どういうことだ、今の言葉は」
陽炎の最後の言葉を頭の中で反芻しているのだ。だが答えは出ない。
「何かあるというのか、まだ」
「竜魔」
だがここで項羽が彼のところにやって来て声をかけてきた。
「将棋の勝負も終わったぞ」
「そうか、そちらも終わったか」
「白凰の勝利だ」
このことを教える。
「見事な。八将軍も全員倒れた」
「全員か」
「少なくとも陽炎は暫く戦場には出られまい。我々にとってはいいことだ」
「確かにな。それはな」
それはその通りだった。だがそれでも竜魔には何か引っ掛かるものがあるのだった。
「しかし」
「どうした?」
「いや、考え過ぎか」
ここで己の頭の中にあった考えを打ち消した。
「流石にそれはないか」
「帰るぞ」
あらためて竜魔に声をかけた。
「いいな。皆待っている」
「そうか、そういえばこれでまた全員揃ったのだな」
「風魔が圧倒的に有利に立った」
全員揃ったそのことが。大きいというのだった。
「これで一気に夜叉を攻めることができるぞ」
「その今後のことも話し合うか」
右目を閉じて静かに述べた。
「屋敷に帰ったならな」
「そうだな。では尚更早く帰るとしよう」
「わかった。ではな」
「行くぞ」
こうして二人は戦場を離れた。闘いはこれで終わりだった。少なくともここでの闘いは風魔の勝利に終わったのだった。
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