殺人
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第六章
「結構そうした小説であるわね」
「まあそうした小説じゃね」
猟奇趣味の小説でだ。
「あるわね」
「実際にそんなおかしなことする人もいるし」
「サイコ殺人鬼ね」
「そういえばこの前ハンニバルとか観てたわ」
そのサイコ殺人鬼が出る映画だ、殺し方の一つ一つが実に惨たらしかった。
「一時期そうしたホラーに凝ってて」
「バラバラ殺人とかする」
「そのせいかしら」
「そうなのね、じゃあね」
「そのせいなのね」
「あんたどうせ映画だけじゃなくてそうした話を調べてたんでしょ」
「ちょっと興味を持ってね」
実際にとだ、珠莉は自分の碗に豆腐を入れつつ答えた。熱くなっているそれを。
「それでネットでも調べてたし」
「そのせいよ、それで身近な人にね」
「そうしたことをする」
「夢の世界じゃそういうこともあるでしょ」
「知ってる人が出てね」
整合性はない、夢の中ではそうしたものは時としてなくなる。このことは珠莉の夢の中においても同じことだ。
「何故かそうなる」
「だからよ、どうもあんたやってること、観てることが夢に出るタイプだから」
「今は書道とかテニスとかだし」
「だからそういうの観て読んでたらね」
それでというのだ。
「そうした夢を見るのよ」
「人を殺す夢を」
「そういうことよ、だからね」
「そうした夢を見たくないなら」
「もうね」
それこそというのだ。
「最初から観たり読んだりしないことよ」
「その通りみたいね」
「そして経験しない」
円はこうも言った。
「絶対にや」
「いや、殺人経験したらまずいでしょ」
珠莉は円の今の言葉にはすぐに真顔で返した。
「幾ら何でも」
「当たり前よ、それは」
「そうでしょ、人を殺すとか」
「間違ってもね」
「やるものじゃないわ」
「何があってもね」
それこそとだ、二人の意見は一致していた。
「してはいけないわ」
「人の命を奪うことはね」
「しては駄目よ」
「それは夢の中でもよ」
珠莉はあらためて言った、熱い豆腐をはふはふと食べつつ。
「もうね、二度と見たくはないわ」
「嫌な夢よね」
「人を殺すのはね」
「じゃあもうね」
「ええ、そうした映画とか小説とかからはね」
「二度と見たくないなら」
円はまた言った。
「それならよ」
「離れるわ」
「そうしましょう、じゃあ食べ終わったら後片付けをして」
「お風呂に」
「一緒に入る?」
円は珠莉にくすりと笑って言ってきた。
「また」
「そうね、それじゃあね」
「一緒に入るとお風呂の水代節約出来る感じするし」
「そうしましょう」
「それで寝るのはね」
「一緒のベッド」
「今日もね」
二人でこうした話をして実際にそうしていった、だがその夜だ。
珠莉は部屋の風呂場とベッドの中で円をそうした意味で抱く抱かれる夢を見た、そうした趣味はないが。だから翌朝円にもう一緒に風呂に入ったりするのは止めようと言うと円は苦笑いをして言った。自分もそうした夢を見たから同意だと。そして二人は別々に入浴し布団を買って交代でベッドと布団で寝る様になった。
殺人 完
2017・1・14
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