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殺人

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第三章

「何があったのよ」
「いや、何もないけれど」
「何もなくて電話かけるの?」
「いや、何ていうか」
「全く、急にどうしたのよ」
「お母さんが無事ならいいわ」
 自分が殺していない、このことを確認出来て内心ほっとしていた。そのうえで母に念の為にあることを聞いた。
「お父さんは?」
「まだ寝てるわよ」
「そうなの、火事とかなってない?」
「お家が火事だったらこんなに悠長じゃないでしょ」
「それもそうね」
「そう、だからよ」
 それでというのだ。
「そんなことないわよ」
「そうよね」
「というか本当にあんたどうしたのよ」
「いや、ちょっと心配になって」
 それでというのだ。
「電話かけただけだから」
「本当にそれだけ?」
「そうよ」
「全く、今度からこんなことしないでね」
 朝早くから電話をかけるなというのだ。
「いいわね」
「ええ、わかったわ」
「それじゃあね」
「うん、それじゃあ」
 眉を曇らせてだ、珠莉は母に応えた。そうして電話を切った。
 しかしだ、夢のことが気になりやはり朝食の時に円に話した。すると円はこう言った。
「何か精神的にあるんじゃないの?」
「それでそんな夢見るの」
「そうじゃないの?」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「そうなのかしら」
「さもないとね」
「そもそもそんな夢見ないわよ」
「そうなのね」
「何かストレス溜まってない?」
 珠莉にトーストに乗るジャム、苺のそれを手渡しつつ問うた。
「それって」
「どうかしらね」
「自覚ないの?」
「別にね」
 首を傾げさせてだ、珠莉は円に答えた。
「そんなことはね」
「ないっていうのね」
「ええ、毎日充実してるわ」
「それでもじゃないの?」
「心の何処かでストレスが溜まってて」
「そう、それでね」
 そのせいでというのだ。
「そうした夢を見るんじゃないかしら」
「親しい人を殺す様な」
「何かね」
「どんなストレスなのよ」
「私もあんたじゃないからそこまではわからないわ」
 幾ら一緒に住んでいる位親しくとも、というのだ。 
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