世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
帰還
アリスは、世界の管理者である。
もともと力は持っていたが、それはあくまで管理に使うすべき力であり、“No name”を司る彼女はそれに対して疑問はなかったし、満足していた。
だが、知ったのだ。
力がなくては、何も守れない。
だから彼女は今、その力を転換して敵へと挑む。
彼女が最初に敵と感じ、そして、彼を送り出す原因となった、その男へと。
「では・・・・ブッちめて行こうか!!!」
ダンッッ!!っと、「奴」が魔導八天の内三本を地面につき差、それが輝き姿を変える。
「グルルルルルルルルル・・・・」
「キィーーーーーーーーーー!!」
「フシュルルルルルル」
ケルベロス、迦楼羅、サラマンダー
「奴」の誇る三大魔獣が、いま迫る。
「行って来い!!」
その言葉と共に、三体が駆け出してアリスへと突っ込んだ。
その先頭を駆けるのはケルベロス。
それを見、アリスが構えて迎撃に応じる。
そして、三体が二体になった。
「!?」
驚愕するアリスだが、なんということではない。
ただ単にケルベロスが高速でその視界から消えただけだ。
その行き先は、
「ギャァォウ!!!」
アリスの背後。
まるで「もらったァ!!」とでも言わんばかりに叫ぶケルベロスが、アリスに向かって爪を振り下ろして地面を抉る。
しかしその爪が抉ったのは
「それだけですか」
地面だけだった。
ドォン!!!!
大気が轟く音を響かせ、アリスの拳がケルベロスの左頭を真横から殴り飛ばした。
その衝撃は左頭を貫き、真ん中、右と、次々と頭を粉砕してケルベロスの体を真横にふっとばし、一撃で戦闘不能に叩き込む。
「・・・・・へ?」
「甘く見ないでください。もう、あなたのことを彼に頼むことしかできなかった頃の私ではありません」
ダンッッ!!!
「あなたとの戦い・・・・・」
ゴッッ!!!!
「ここで終わらせて見せます!!!」
そう叫び、上空から突貫してくる迦楼羅に向かってアリスが飛び上がる。
羽根をたたみ、針のようになって突っ込んでくる迦楼羅。
その嘴を、アリスが脇に挟み込むようにして受け止め、巴投げのように投げながら思い切り腹を蹴り上げた。
ガキュウ!!!と気味の悪い声をだし、迦楼羅の体が上に真っ直ぐ戻って行き、アリスは着地と同時に二足歩行となったサラマンドラの炎剣を、片手で受け止めた。
「!?」
「断罪者・・・ですか。しかし、すでに背負う覚悟があるのなら、それは脅威ではありません!」
炎剣というからには燃えているものだというのに、アリスはそれを全く感じさせずに掌で押さえていた。
それを押し込もうと腕に力を込めるサラマンドラだが、アリスの足が地面をズズズ、と少し土を退かすだけで全く切り込めない。
そして、それをアリスが一気に押しのけ跳躍、サラマンドラの顎に見事なアッパーカットを叩き込み、更に振り下ろしの回し蹴りを脳天に叩き込んで地面に顎から叩きつけて行った。
それを食らって、サラマンドラがフラフラと身体を揺らしながらも立ち上がろうとするが・・・・
ドォン!!
「ギィッッ!!」
「ゴギャァ!!」
先ほどの一撃を食らった迦楼羅がそこに落ちてきて、サラマンドラを叩き潰して完全に再起不能にする。
落ちてきた迦楼羅などは言わずもがなだ。
三体の使役獣を一気に殲滅し、そのすべてが剣に戻って「奴」の手に収まる。
その光景に、「奴」は少なからず驚いていた。
確かに相手は管理者だし、力も相当あったという予測は立てていた。
だが、まさかあの三体がここまで何もできずに負けるとは思ってもいなかったのだ。
眉をクイッ、と上げ、ひょうきんに驚く「奴」
その「奴」に、アリスが一気に走り込んで拳を放ち、それをパシッ、と「奴」が片手で受け止めた。
「やるね!!」
「どう、も!!」
そこからアリスが「奴」の頭を狙ってハイキック、「奴」はそれをしゃがんで回避し、アリスの軸足を狙って踵からの足払いをした。
アリスもまた、それを小さくジャンプして避けてから裏拳を「奴」の頭に叩きつけようとして、それを上腕で受け止められる。
「くっ・・・」
「フッ」
と、そこから「奴」がアリスのその腕を取り、曲げ、柔法の要領で地面に俯せに寝かせる。
さらには腕をがっちりつかみ、技までかけて抑え込む。
「強いな。だが、あんたが手に入れた力は俺だって手に入れてんだ。と、なれば後は大本のスペックの違いだろう?」
「ッッ!!!」
「せっ(グイッ)、ェアッッ!!」
「ガッは!!!」
「奴」が技をかけた腕を持ち上げ、アリスの全面をさらけ出してサッカーボールを蹴るかのように脚を動かした。
その蹴り一撃にアリスの体が地面スレスレを飛び、二、三回地面にこすり付けながら止まった。
「ふぅ、これで大方終わったかな?」
周囲を見渡す「奴」
そこに立ち上がろうとする者はいても、「奴」に向かってこれる者はいなかった。
一人残らず、倒されている。
無論、「EARTH」のビルにはまだ人はいる。
しかしそっちにいるのは戦う力のないメンバーだし、長門などといったメンバーはもしもの時にそちらを守っていてこちらにはこれない。
それも「奴」にはわかっているのだが・・・・
「・・・ま、当面は目の前の目標だな」
そういって、再び歩み、手を伸ばす。
そこにいるのは、やはりなのはだ。
襟を掴まれ、グイッと持ち上げられて、なのはが見たのは「奴」の拳。
大きく振り上げられて、おそらくこのまま振り下ろされる。
そうすればなのはの頭は、果物のようにつぶれて二度と元には戻らないだろう。
「・・・・てよ・・・」
「?」
そのなのはが、目に涙を溜め、胸に願いを抱え、ポツリと漏らす。
「助けてよ・・・そう言ったら・・・いつだって来てくれるんでしょう?・・・・・」
「・・・・」
その言葉に、「奴」の腕が振り上げの頂点で止まる。
見ると、周囲から光は上がっていた。
黄金の光
願いの光
希望の光
誰だって、いつだって望んでた。
でもそれは、彼をまた戦いに巻き込むことになる。
それはわかっている。
ああ、しかし人間はなんと残酷なんだろう。
このろくでもない世界に、自分たちはまた彼を求めてしまった。
生まれた瞬間、人間は泣く。
周囲は誕生したそれを祝っているがしかし・・・・
もしかしたら赤ん坊は、生まれたことを嘆いて生まれているのかもしれない。
こんなろくでもない世界にやってきてしまった、と
だけど、それでも
「それでも、いや、だからこそ、この世界は美しい」
「!?」
パァン!!と、「奴」の手が弾かれる。
そこを通過していったのは、一つの光の玉
皆の願いが集まってできた、バスケットボールほどの玉だ。
それが「奴」となのはの間を抜け、一気に上空へと上がっていき、見下ろすように滞空した。
「・・・・来たか」
そして、そこから金の粒子が波紋のように広がり、崩れたビルや、倒れたメンバーの傷を癒す。
が、傷が治っても体力の問題が解決されていない。
現に、なのはに向かって波動砲を放とうとする「奴」を誰一人として止められない。
誰も立てない。
しかし、誰一人として焦燥など抱いていなかった。
抱いていたのは、呼んでしまった罪悪感と
「来て・・・・くれた・・・・」
そして、これからも共に生きていける希望の喜びだった。
「・・・・!!!」
そこで、「奴」が無言でなのはに波動砲を叩き込もうとする。
しかし、再び光の玉が飛び、今度はなのはの体を掻っ攫っていった。
その光の玉は今や形を変え、確かな両腕で彼女の体を支え、確実に両足で地面に足を付けていた。
どこかへと散っていた銀白の羽根が「主を見つけた」と言わんばかりにその者の背中へと集まっていく。
「おいおい・・・確かに条件はそろってたさ。翼持ってかれて、お前がいて、みんなが願う」
「あ・・・・・・」
「だけどよ、この状況はないだろう?俺を呼びたかったら、テメェが一言、こう言やよかったんだ」
「帰って・・・・?本物?」
「オレは世界最強だぜ?誰かが名前を呼んでくれれば、そこに駆け付けんのが――――――」
「舜君!!!」
「主人公って・・・もんだろう!!!」
ド、バサァッ!!!!
蒔風舜、帰還す
幾多の希望と、数多の願いを背に受けて
「オレの仲間に凝り性もなく・・・・いや、これはまだ過程か?」
その男、敵を睨みて拳を握る。
相対するは、対にして同なる者。
「その通り。ようやく軌道に乗ったぞ主人公」
「奴」が言う。ここからなんだと。
蒔風も言う。ここで終わりだと。
世界を食らう男と、世界を護る男
感動的な帰還はともあれ、二人の因縁はここにて決着する。
to be continued
後書き
はーい!!帰ってきました第二弾!!
大復活の蒔風でっす!!!
わー!!ドンドンパフー!!!
蒔風
「よっしゃあ!!帰って来たぜ!!思えばここまで」
ハイカット!!ここまで!!復活の感動はここまで!!
蒔風
「えぇェェェエエええええええ!?本編の話してやれよ。アリス超強かったじゃん」
あ、それはまあね。
だって考えてみるとあの時に“ライクル”“輝志”“フォルス”“LOND”の力を取り込んで、半分を蒔風に流してたんだもん。
その分は「マイカゼ」つながりで「奴」に流れたけど、それでも十分に強いお!
蒔風
「お、っていうな。となるとホントに元のスペックか」
その点お前なら大丈夫。
復活した時点でお前にも力行ってイーブン!!
蒔風
「え?何それ怖い。てか結局大元のスペックで負けるじゃん」
は?この状況に持ってきた主人公が負けるわけないじゃんwwww
蒔風
「元も子もないこと言いやがったこいつ!?」
問題はどんな内容で勝つかだよ、明智君
蒔風
「明智じゃねーよ」
明風君
蒔風
「明智ファンに謝れ」
じっちゃんの?
蒔風
「名に懸けて!!」
真実は?
蒔風
「いつもひとつ!!・・・ハッ!?」
うむ、見事ノリに乗ったな。
流石は我が主人公。
蒔風
「真実はいつもひとつとは・・・・限らないじゃん?(キラッ)」
限るわーーーーーー!!!
次回、「奴」の行く先
蒔風
「ではまた次回」
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