風魔の小次郎 風魔血風録
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95部分:第九話 夜叉の窮地その五
第九話 夜叉の窮地その五
「しかし言われたからには仕方がない。こちらは八将軍全員いなくなってもらう」
「そうなれば貴様等は両腕をもがれたも同じ」
小龍もまた前に出て来た。
「勝たせてもらうぞ」
「何かお互い台詞奪い合ってばかりなのが癪だがな」
妖水はその両手にヨーヨーを出してきた。
「まあいいさ。死ねよ」
「貴様等の首、夜叉姫様に献上するとしよう」
二人は身構え対峙に入る。その時だった。
「おい小龍」
「むっ!?」
ここで誰かの声がした。そちらに顔を向けると。
何とそこにいたのは。ここにはいない筈の男だった。
「なっ、馬鹿な」
「どうして御前がここに」
彼の姿を見て霧風も声をあげた。
「何時の間に戻って来た」
「どうしてだ」
「屋敷に戻る前にな。挨拶をしようと思ってな」
姿を現わしたのは項羽だった。彼は不敵に笑ってそこに立っていたのだ。
「それで来たのだがな。面白いことになっているみたいだな」
「項羽、もう復帰してきたか」
「ああ、そうさ」
今度は陽炎に対して答えた。
「少し時間がかかったがな」
「兄者、傷はもういいのか」
「小龍か、暫くだな」
「死んだと思っていたがしぶといな」
「おいおい、俺が何時死んだんだ」
今の小龍の言葉には苦笑いで応えるのだった。
「勝手に殺すな。残念だが俺は不死身だ」
「ふっ、そうだったな」
「風魔の忍は不死身だ。違うか」
「へえ、そりゃ初耳だな」
妖水は今の項羽の言葉を聞いて楽しそうに笑ってみせた。
「不死身かよ、風魔ってのは」
「では夜叉は不滅だな」
陽炎も笑って妖水の言葉に続く。
「こっちもそう簡単には倒れぬぞ」
「わかっている。だから俺は戻って来た」
「ほお、そうかい」
妖水はヨーヨーを操りながら項羽の言葉を笑いながら聞いていた。
「じゃあ誰と闘うんだい?」
「俺は誰とでもいいぞ」
陽炎は不気味な笑みを項羽に向けて言ってきた。
「闘いは何よりも好きなのだからな」
「俺もだ」
「そうだな。では兄者」
小龍が静かに笑って項羽に声をかけてきた。
「ここは俺が譲ろう。俺は既に白虎を退けているしな」
「それはあるがな」
「白虎の仇はな」
今の小龍の言葉に二人は目の色を剣呑なものにさせた。
「まあいいだろう。あいつも暫くしたら戻って来る」
「その時にあいつが御前の相手をするからな」
「そうか。では俺はこれでな」
小龍は二人の言葉も聞いて笑いながら一歩引いた。
「兄者、妖水が相手だ。それでいいな」
「わかった。では妖水よ」
項羽はあらためて妖水を見て言ってきた。
「俺が相手をする。いいな」
「白虎や紫炎とはまた違うぞ」
両手のヨーヨーを操りながら不敵に笑っていた。
「切り刻まれるのを楽しみにするんだな」
「それではだ。霧風」
陽炎はここで霧風に顔を向けてきた。
「俺の相手は御前だな」
「そうだな。では闘わせてもらう」
「闇鬼の傷のぶんは返させてもらう」
言いながら右手に扇を、左手に木刀を出していた。
「夜叉は同志への怨みは何があっても返すのだからな」
「そうか。では」
「来い」
態度には余裕があるが目には殺意が篭っている。
「二度と起き上がれないようにしてやる」
「待て」
しかしここでまた。もう一人戦場に姿を現わしたのだった。それは。
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