世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
焦燥
さらにその翌日。
「EARTH」襲撃から、二日目。
巨木を撤去し、とりあえず形だけは見繕った地下訓練場。
そこで、数名の人間が訓練を行っていた。
その人物は、ハクオロや上条といった、さらわれた少女の仲間たちだ。
昨日
少女たちがさらわれたと聞いて、彼らは呼び出された。
そこで、どれだけの戦いがあったかを知ったのだ。
「俺たちもつれて行ってくれ」
今まで何があったのか、その説明を聞いて最初にそう言いだしたのは上条だった。
しかし、その思いはこの場にいる皆、同じだっただろう。
アンデットたちの居場所がわかり、そしてそこへの攻撃に向かう時には、自分たちも加えてくれと。
だが、全員を連れていくことはできない。
それに、彼ら自身のこともある。
「上条。お前はアンデットの肉体に対抗する術はない。お前を連れていくわけには・・・・」
と、上条には言い
「ハクオロさんも、自国のことがあるじゃないですか。それを放ってはいかないでしょう」
と、ハクオロに伝え
「圭一やレナは・・・・“輝志”出身とはいえ力は一般人に限りなく近んだ。危険すぎる」
と、圭一たちに話した。
だが
「だったら俺が強くなる。俺にだってサポートはできる。あいつら一発ぶん殴ってやる」
「これはもう国の話ではない。私の家族が連れ去られたのだ。私個人として参戦させてもらうぞ」
「梨花ちゃんと羽入ちゃんは俺たちの家族で仲間だ。力がないからって、引っ込んでられないぜ」
と、三者三様に返答し、絶対についていくと言って聞かないのだ。
確かに、戦力は多い方がいい。
あっちには上級アンデット五体に加え、さらには中級・・・つまりは普通にアンデットも多数いるのだ。
ゆえに、仮面ライダーたちにはすべて声をかけ、さらには武将や数名のサーヴァントにも、都合がつく限り協力を頼んだ。
相手は決して弱い相手ではない。
今回出てきた上級は、かつてブレイドたちが戦った上級よりも上の存在だ。
それらには翼人が当たるしかない。
そして、中級のアンデットもピンからキリまでいる。
その中に突入する可能性が高いというのに、ハクオロ等はともかくとして、圭一などは危険が多すぎる。
よって、ここでしっかりと訓練し、その結果を見て大丈夫かどうかを見ているのだ。
「瞬風のクルーとしては乗せられないのか?」
「乗せていくだけはできるけどな・・・・それでもやっぱり危ない」
その訓練の様子を見ながら、さっきまで参加し、今は休憩しているアーチャーと一刀がそうぼやく。
彼等だって、連れて行ってやりたいのはやまやまだ。
しかし、それができるほど簡単な相手ではないし、簡単な現実ではない。
「最終的に全員をふるいにかける。そこで連れていけないと判断したら・・・しょうがないけど」
「置いていくしかないな」
「・・・ああ」
そういって、時計を見る一刀。
そろそろ訓練の交代時間だ。
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瞬風の管制室。
そこの前部にある巨大なモニターには同じく巨大な地図が映っていた。
さらには各座席についた個別モニターにも同じような地図が浮かび、そこに向かって数十人があらゆる単語を打ち込んで検索をかけている。
即ち石版、またはアンデットたちの潜伏していそうな場所をサーチしているのだ。
だがいまだに引っかかる様子がない。
無理もないだろう。
わかっている正確なアンデットは五体。
さらには以下のアンデット達まで含めると、その数はいまだに把握しきれていない。
そんななか、どのようなワードで検索すれば引っかかるというのだろうか。
「アンデットと戦ってきたBOARDのデータからいろいろと調べているのですが・・・・」
「くそ・・・・一体どこにいるんだ・・・」
部屋にいるのは数名のオペレーターだ。
この体制で昨日からずっとやっているにもかかわらず、結果は散々なのだから、クラウドのイラつきもわかるというものだ。
こうしている間にも、あっちの準備は進んでいるのかもしれない。
しかも、この考えも推測にすぎないのだから余計に焦燥感を煽ってくる。
「・・・・どこにいようと、必ず見つけ出してやる」
そう、かならず、叩き潰して見せる。
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「おいおい、全然安定しないぞ」
「とてもじゃないがあと二日で安定するようには見えないんだが?」
「うーるっせぇ。じゃあオメーやってみろォ」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「出来たか?」
「十分理解した。こーりゃ駄目だ。あっちができたら今度はこっち、今度はあっち。キリがねぇやな」
石板の立つ洞窟の中で、ドーベルマンアンデットが他の四体のところに歩み寄って愚痴を吐いた。
どれだけ安定させようとあの輪を見てたり、少女にちょっかい出したりしたとしても、まったくもってきれいな円にならない。
これではいつまでたっても安定の見込みがない。
「本当に勘弁してほしいっての・・・・あの方たちを維持してくのもよ、そう長くできるものじゃないんですよね」
「ドーベル、お前はその口調いい加減・・・・いや、もういい」
「それよりもどうする。このままでは力を手に入れる以前の問題だぞ」
「・・・・・・まったく。どうしてそうお前らは自分から無理に変えようとするのか」
が、その言い合いを眺めていたブロッサムアンデットが、呆れたように溜息をついてそう一言いってきた。
「もし本人を弄って変わらないなら、周囲のものを変えればいい」
「周囲?」
「なんだ?景色でも変えるってか?」
その言葉にはてな、と首をかしげるドーベルマンアンデットにコックローチアンデット。
が、それに対してクロコダイルアンデットとエレクトリックエェルアンデットは気付いたようで、顎に手を当て一考していた。
「だがな・・・それは同時に危険だぞ?あっちは総力を挙げているだろうからな」
「安定から復活まではそうかからん。その間くらいの時間稼ぎに問題はないだろう?」
「そうだな・・・・最悪、復活したらその場で取り込んで殲滅させてしまってもいい」
くっくっくっく、と実にいい考えが浮かんだと笑う三体。
二体はわけがわからんと首をかしげるが、話を聞いてなるほど面白い、と同時に笑いながら拳を握った。
「EARTH」に、アンデット
両者とも進まぬ状況に焦り、そしてそこからの脱却を見つけたのはアンデットだった。
計画は実行される。
その夕方から夜にかけて
彼らのいる海辺の断崖絶壁の洞窟
その上に生い茂る森の木が、たった一晩ですべて桜に変わってしまっていた。
to be continued
後書き
と、いうわけッで本編には一切触れずにあとがき終了!!
次回、突撃しまーす
ではまた次回
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