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風魔の小次郎 風魔血風録

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84部分:第八話 聖剣伝説その七


第八話 聖剣伝説その七

「それが風林火山か」
「風林火山・・・・・・」
「偶然とはいえそれが御前を救ったな」
「そうだな。しかしこの風林火山」
 小次郎はその風林火山を持ちながら述べる。
「何か持ってるだけで力がみなぎってくる。信じられねえ」
「力だと!?」
 壬生は今の小次郎の言葉を聞いてその流麗な顔を顰めさせた。
「まさか。力などと」
「どういうことなんだ、しかもこの風林火山」
「まだ何かあるのか?」
「俺に合っているみてえだ」
 こうも蘭子に答えるのだった。
「この風林火山はな」
「合っているかどうかは知らんが」
 壬生は苑子二郎に対して再び剣を構えながら言ってきた。
「この私に勝てるというのなら。来い」
「えらい自信だな」
 小次郎もそれに応えて構える。しかしその重さにてこずりもする。
「くっ、かなり重いな」
「風林火山は豪剣だ」
 蘭子はこう小次郎に告げた。
「扱える者は何百年もいなかった」
「何百年もか」
「かつていたらしい」
 そのうえでこうも小次郎に告げる。
「かつてはな」
「じゃあよ、俺がその何百年ぶりの人間になってやるさ」
 いつもの底抜けの明るさがこう言わせた。
「この風魔の小次郎様がな」
「では小次郎。聖剣には聖剣だ」
「おうよ」
 また壬生に対して応える。
「思う存分やってやる。覚悟しなよ」
「はあっ!」
 壬生は黄金剣を上から下に大きく振り下ろしてきた。
「受けよ!」
「何のっ!」 
 小次郎は風林火山でそれを受け止める。その時閃光と衝撃が場を支配した。
 この時竜魔は屋敷の門のところにいた。壬生の気配を察して外での修行から戻って来たのだがここでその閃光を見たのである。
「何だ、今のは」
「聖剣と聖剣が撃ち合ったようだな」
 彼の後ろから声が聞こえてきた。
「その結果だ」
「そうか。では誠士館も切り札を出してきたというわけだな」
「知っていたようだな」
「噂では聞いていた」
 こう後ろの声に対して答える。
「夜叉一族の家宝、伝説の黄金剣」
「そうか」
「だが。ここで出して来るとは思わなかった」
「それはこちらも同じことだ」
 声はその竜魔に対して答えてみせた。
「まさかそちらに伝説の風林火山があるとはな」
「それは俺も知らなかった」
 今度は竜魔が答えた。
「露程もな」
「そうか。知らなかったか」
「それでだ」
 声がここで言ってきた。
「風魔の独眼竜竜魔よ」
「うむ」
「貴様の命貰い受ける」
 声は言う。
「この飛鳥武蔵がな」
「嫌だと言えば?」
 竜魔は目を閉じて自分の真後ろに姿を現わした武蔵に対して問うた。既に彼はその手に剣を持っている。その長い剣を。
「こちらもこれが任務だ。退くつもりはない」
「そうか」
 武蔵のその言葉を聞いて静かに頷く。見ればどういうわけかその足が宙に浮かんでいる。
「ならわかった」
「前を向け」
 武蔵はまた竜魔に告げる。
「背中から狙う趣味はない」
「潔いと言うべきか」
「そう言うのなら言うといい。少なくとも今のままの貴様には剣を振るうことはない」
「そうか。ならば」
 竜魔はそれに応えて振り向いた。それと共に木刀を出してきていた。
「行くぞ。夜叉は貴様を倒せばその力が大きく落ちる」
「言っておくが俺もまたそう簡単にやられるわけにはいかない」
 二人は剣を手にしつつ対峙する。その中での言葉だった。
「事情があるのでな」
「事情か」
「そうだ」
 答える武蔵の脳裏にあることが思い出された。それは誠士館に雇われた時のことだった。
 彼はその時夜叉姫の前にいた。その傍には壬生が控えていた。
「飛鳥武蔵ですね」
「はい」
 武蔵はチェスが置かれた卓に座る夜叉姫の問いに答えていた。
 
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