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風魔の小次郎 風魔血風録

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74部分:第七話 力と力その十


第七話 力と力その十

「何もな」
「そうか」
「ただ。見せてもらうだけだ」
 こうも答える。
「黒獅子の勝利をな」
「互角ってのが一番面白いんだよ」
 妖水も手出しする気配はなかった。
「白熱するからな」
「そうか。それを聞いて安心した」
「暫くしたら不知火達も戻る」
 ここで陽炎はふと言った。
「黒獅子がここで離脱すればことだな」
「夜叉にはもう後がない」
 立ち上がった壬生の言葉は強張ったものになった。
「若し黒獅子が倒れれば」
「だが壬生よ」
 陽炎がまたその彼に言う。
「その為のあれだぞ」
「わかっている。ここは何としてもな」
 ここまで言って姿を消す。すると陽炎は正面を見て扇を使いながら武蔵に対して言ってきたのだった。まるで彼がいなくなるのを待っていたかのように。
「武蔵よ」
「何だ、陽炎」
「我等夜叉は夜叉だけで足りる」
「充分だというのか」
「そうだ。八将軍の他に壬生とあの剣もある」
 そのことをあえて武蔵に告げる。
「どれだけ劣勢でも。覆せる」
「そうか」
「御前は動く必要はない。それだけは言っておく」
「あいつ等ももうすぐ戻って来るしな」
 妖水も正面を見ている。その右手でヨーヨーを弄びながら陽炎に続いて武蔵に言ってきたのだった。
「これから挽回することもできるさ」
「だといいがな」
「確かに風魔は手強い」
 陽炎もそれは認める。
「だが我々も。そう簡単には投了せぬ」
 ここまで言ったうえで言葉を止めた。そうして試合に目を向ける。勝負は二勝二敗で大将同士の決戦となっていた。場にいるのは言うまでもなく劉鵬と黒獅子であった。お互い不敵な笑みで見合っている。
「やはりこうなったな」
「いい演出だ」
 そのうえで言葉を交えさせる。劉鵬の目が光り黒獅子の口の端が吊り上がっている。
「さて、ここで貴様を倒し夜叉の反撃のはじまりにするか」
「そう上手くいくかな」
「いく」
 劉鵬に対してはっきりと答えた。
「この俺の力でな」
「面白い。では俺も」
「来い、劉鵬!」
 黒獅子は言う。
「正面から叩き潰してやる!」
「それはこちらの台詞だ夜叉!」
「はじめ!」
 ここで試合のはじまりが告げられる。二人はそれぞれ礼をしたうえで向かい合う。構えまずは組み合う。最初に仕掛けたのは劉鵬だった。
「おりゃあああーーーーーっ!」
「おおっ!」
「やったか!?」
 観客席の林彪と小龍が今の劉鵬の一本背負いを見て思わず声をあげた。だがそれは。 
 
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