| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

風魔の小次郎 風魔血風録

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

72部分:第七話 力と力その八


第七話 力と力その八

「戻ったか」
「ああ」
「楽しそうだな」
 竜魔が劉鵬に微笑んできた。
「何かとな」
「入部祝いもされた」
「そうか」
「名前を聞かれてな」
 実際に楽しげに笑って聞かれてもいないことまで言うのだった。
「まあそれもあってな」
「そうか」
「そういえば俺達の名前ってどうなっていたんだっけな」
「姓が風魔だ」
「そうか」
「そうなる。だから御前は風魔劉鵬だ」
 そういうことになるのだった。今それがはじめてわかったのだった。
「わかったな」
「夜叉も同じか?」
「そうなる」
 これもわかったのだった。
「本来はな。俺達にも他に姓があるのだが」
「そういえば壬生がそれか」
 壬生についても気付いたのだった。
「あれは夜叉の名門壬生家の跡継ぎだったな」
「北条家の末弟としてな。入ったのだ」
「そうだったか」
「夜叉姫にしろだ」
 竜魔は言う。
「北条家の末娘だからな」
「夜叉は風魔に比べて血縁が強いようだな」
 劉鵬はそれを察した。
「また随分とな」
「そうだ。夜叉はそうした一面もある」
 また劉鵬に述べる。
「だから絆も強いのだ」
「そうか」
「仲間割れは期待できないぞ」
「わかった」
「それでだ。劉鵬」
「今度は何だ?」
「試合のことだが」
 彼が次に言ったのはそれだった。
「頑張るようにな」
「わかっているさ。柔道部は任せておけ」
「頼むぞ」
 話はこれで終わった。次の日の試合の後。練習を終えた部員達は劉鵬を交えて気合を入れた後で部員の一人が提案してきた。
「景気づけにステーキとカツ食いにいくか」
「おっ、いいな」
「皆でな」
「ああ、行こう」
 話はすぐに決まったのであった。実に早い。
「それじゃあすぐに」
「劉鵬君」
 マネージャーが劉鵬に声をかけてきた。
「一緒に行こう。席は取っておくからね」
「あ、ああ」
 劉鵬は少し呆然としながら彼女の言葉に頷く。部員達は先に行く。一人になった劉鵬のところにやって来たのは掃除人に化けている小次郎であった。
「劉鵬君、一緒に行こう」
「何で御前がここにいるんだ?」
「知らなかったのか?俺御前のサポートなんだぜ」
「何時決まったんだ、そんなこと」
「向こうも壬生がそうなったんだよ」
 実は劉鵬はこのことを知らなかった。柔道部の雰囲気に呑まれてしまっていたのだ。
「知らなかったのか?」
「知らないも何も初耳だぞ」
 目をしばたかせて小次郎に答える。
「そうだったのか」
「って御前知らなかったのかよ」
「ああ、初耳だ」
 本当に驚いているのが顔にでも出ていた。
「しかし。御前がサポートか」
「悪いのかよ」
「相手は壬生だぞ」
 劉鵬は壬生の名前を出す。
「それでどうして御前なんだよ」
「俺がそんなに不安なのかよ」
「不安っていうか怖いぞ」
 劉鵬も随分と言う。
「項羽とかならともかくな」
「近いうちに戻ってくるんだろ、そういえば」
「それはな。もうすぐだ」
「そうか」
「そうだ。それで全員揃う」
 劉鵬はそれが少し楽しそうだった。
「それに対して夜叉は残り五人だ」
「ああ」
「俺が黒獅子を倒せば残り四人だ。風魔の圧倒的優位になる」
「だったらこの勝負もらったな」
 小次郎はこう述べて笑顔になる。
「俺達の勝ちでな」
「ああ。何はともあれそのサポートを頼むぞ」
 何だかんだ小次郎を認めている劉鵬だった。こう述べてそれから道場を後にしてステーキとカツを食べるのだった。それが終わってから劉鵬は一人またあの神社の前を通った。するとそこで黒獅子が神社でお祈りをしていた。劉鵬はそれを見て楽しそうに笑って述べるのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧