風魔の小次郎 風魔血風録
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67部分:第七話 力と力その三
第七話 力と力その三
「見たというのですか」
「はい、どうやら何処かの忍に雇われたようではありませんが」
陽炎がまた答える。
「ですが何かを探しているようです」
「そうですか。あの男が」
「姫様」
武蔵がここで夜叉姫に述べてきた。
「伊達は今のところ目立った動きはしていないようです」
「そうですか」
「今のところは放っておいていいでしょう。ですが」
「ですが?」
「問題は銀色の髪と目の男達です」
彼が言うのは彼等だった。
「どうにも気になります。少し調べておいた方がいいかも知れません」
「確かに」
「それはこの陽炎が」
陽炎が名乗り出て来た。
「やらせて頂きます」
「頼みますよ」
「はい、必ずやあの者達の正体を掴みます」
一礼してから夜叉姫に対して述べる。
「お任せあれ」
「では陽炎、貴方にはそれも頼みます」
「はい」
「黒獅子には今回の作戦に専念してもらい妖水は陽炎のサポートを」
彼女から次々と指示を出す。
「そして攻介」
「はっ」
壬生にも声をかける。じっと彼を見下ろし。
「怪我はもういいですね」
「御心配をおかけしました」
これが壬生の返事だった。
「ですがもう」
「それでは貴方には遊撃の任務を与えます」
「遊撃ですか」
「武蔵、壬生攻介をこれから全ての作戦に参加させなさい」
「全てのですか」
「そうです」
武蔵に対しても告げるのだった。
「夜叉八将軍の大半が負傷している今。壬生の剣がなくては戦えません」
「だからこそですね」
「そうです。いいですね」
「はい、確かに」
武蔵も夜叉姫のその言葉を受けた。そのうえで一礼して応えた。
「そのように。致します」
「貴方も全ての作戦に参加しなさい」
「わかりました。それでは」
「ですが姫様」
「何ですか陽炎」
そっと陽炎がまた進み出て夜叉姫に上奏してきた。彼女もそれに応える。
「柳生邸にあの風林火山があります」
「ええ」
白虎が見つけたあの巨大な木刀である。
「あれが風魔の手に渡れば。こちらは壬生と武蔵を以ってしても危険です」
「ではどうしろというのですか?」
「こちらも切り札を出すべきです」
「切り札!?ああ」
すぐにそれが何か察した妖水は楽しげな笑みを浮かべた。
「あれか」
「そうだ、あれだ」
陽炎も妖水に顔を向けて答える。不敵な笑みになっていた。
「あれならば風林火山にも対抗できるぞ」
「あれを出すのですか」
「如何でしょうか。既に八将軍のうち五人が負傷し」
この劣勢がまずあるのだった。
「しかも向こうに風林火山があります。ですから」
「確かに。怪しい者達の影もあります」
それもあった。今夜叉が置かれている状況は厳しい。それは頭領である夜叉姫自身が誰よりもよくわかっていることであった。
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