風魔の小次郎 風魔血風録
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61部分:第六話 霧の中でその八
第六話 霧の中でその八
「それをかわすとはな。流石と言うべきか」
「俺も伊達に風魔九忍じゃないんでね」
兜丸は木刀を構えながら彼に応える。
「まあ当たればただじゃ済みそうにないがな」
「しかし闇鬼」
霧風は霧の中で闇鬼に対して声をかけてきた。
「私の気配を感じるか。噂以上だな」
「この闇鬼確かに目は見えぬ」
自分でもそれを言う。だからいつも目を閉じているのだ。
「しかしそれだけ他の感覚が発達していてな。耳でも空気でも感じるのだ」
「そうか」
「気配もな。これぞ夜叉心眼陣」
それをこう呼んだ。
「戦いにおいて負傷して身に着けてしまった技だが存外役に立つ」
「闇鬼」
雷電はその闇鬼に声をかける。好戦的な仕草で両手の鎖を弄んでいる。
「貴様は霧風をやれ」
「そうさせてもらおう」
「俺は同じ雷を使う者として兜丸をやらせてもらう」
「御指名ってわけか」
「そうだ。不服か?」
笑みまで好戦的なものにさせながらその兜丸に問うた。
「相手を変えるというのならいいが」
「いや、俺も貴様と闘いたいと思っていた」
兜丸も兜丸でそれを受けるのだった。
「夜叉を代表する雷使いの貴様とな」
「面白い。では行くぞ!」
雷電の姿が消えた。
「むっ!?」
「夜叉落雷撃。受けてみよ!」
四方八方から鎖が兜丸に迫る。それが地に着くと落雷が落ちる。それで兜丸を襲っていた。
「さあこれが貴様によけられるか!」
「よけるつもりはない」
「何っ!?」
「この兜丸、既に貴様の技は見切った」
「戯言を!この雷電の技が見切れるものか!」
さらに落雷が続く。それは次第に兜丸を追い詰めていっていた。しかし彼はその中で余裕を見せ続けていたのであった。平気な顔で。
「その証拠に貴様は次第に追い詰められているな!」
「そうか。じゃあ証拠を見せるぞ」
「証拠だと!?」
「行くぞ雷電!」
その手に持っている木刀を両手で逆手に持った。
「風魔蒼雷衝!」
「風魔蒼雷衝!?」
その木刀を地に突き刺す。するとそこから蒼い雷が四方八方に拡がり鎖を全て吹き飛ばした。
そして姿を消しつつ攻撃を仕掛けていた雷電も撃った。雷電の全身が雷に撃たれる。
「滅びろ雷電!」
「な、何のっ!」
しかし彼はここで鎖を宙に放った。そこに落雷を落としそれを己にも落とす。何とそれで兜丸の雷を相殺したのだった。雷電はあちこちを黒焦げにさせながらもまだ立っていた。
「この程度でこの雷電を倒せると思うなよ」
「己の雷で俺の雷を相殺したか」
「そうだ」
前によろめく。しかしそれでもまだ目の光は強いものだった。その目で兜丸を見据えていた。
「兜丸、勝負はまだだ」
そう言いながらまた鎖を出してきた。
「この程度で俺は」
「よせ、雷電」
しかしここで闇鬼が彼に言う。
「それ以上の闘いは命を落とすことになるぞ」
「止めるというのか闇鬼」
「そうだ。ここは下がれ」
はっきりと雷電に告げた。
「よいな」
「くっ、ここで兜丸を倒しておかなければ後々厄介なことになるぞ」
「少なくとも今の貴様の身体では無理だ」
闇鬼の言葉は変わらない。
「機会はある。下がれ」
「・・・・・・くっ、わかった」
ようやく彼もそれに頷くのだった。闇鬼の言葉に。
「ここは任せる。それでいいのだな」
「そういうことだ」
「兜丸・・・・・・・」
また兜丸に顔を向けて言ってきた。
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