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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0015話『最初の…』

 
前書き
更新します。 

 


とある演習が終わった日の事、雲龍が妹艦の天城と葛城に迫られていた。

「雲龍姉様、もうすぐ練度が99になりますね」
「うん、天城…」
「そうすれば提督と絆を結べるね!」
「うん、葛城。…これまで以上に強くもなれるし、少し、楽しみね…」

雲龍がマイペースに、だけどどこか嬉しそうにそんな話をしていて、それを迎えた私に葛城が近寄ってきて、

「提督!? 雲龍姉とも絆を結ぶつもりなんですよね?」
「あ、ああ。そのつもりだけど…」
「だったらなおの事言います。雲龍姉を泣かしたら承知しないんだからね!?」
「わかっているよ。大丈夫だ、葛城」
「だったらいいんです」

そう言って葛城は引き下がっていった。
まぁ、そうだよね。
本来大本営からもらえる指輪は一つだけ。
だけどもっと強くしてあげたいとか、経験値を貰えないのは勿体ないとか、他にも色々あるけどそんな感じで今では重婚していてケッコンカッコカリした艦娘の数は多いのがうちの現状であった。
そんな中で、執務室で任務の確認などをしている時だった。
扉がノックされて「入っていいよ」と言って招くと扉が開く。
そこには白露型二番艦の時雨の姿があった。

「…提督、ちょっといいかな?」
「どうした、時雨…? なにやら真剣な表情だが」
「うん。提督なら分かってくれると思って僕は今日ここに来たんだ」
「折りいった話か。話してごらん」
「うん。山城の事なんだけど…最近、といえばいいのかな? この世界に来てからどうにも調子が悪いみたいで…」
「山城が…?」
「うん。提督なら原因が分かるんじゃないかなと思って。扶桑に聞いても分からないらしくて…」
「ふむ…」

それで少し考え込む。
山城か…。そう言えば今朝考えた事であったがまだこの世界に来てから私の想いを彼女に伝えていない事に気づく。
それでなんとなく原因も解決できるんじゃないかと思い、

「わかった。なんとなくだけど原因は判明したから後で山城に話しかけてみるよ」
「本当かい!?」
「ああ。この世界でゲーム通りにではなく自由に感情が出せるようになったから山城は悩んでいるんだと思う。
私の思い違いじゃなければだけどな」

私のその言葉に時雨もなにかピンときたんだろう。

「…あ、そう言う事なんだね」
「時雨も気づいたか?」
「うん。これは提督じゃないと解決できない事だね。それじゃ山城の事、頼んでいいかな?」
「任せてくれ」

時雨とそう約束して私は本日の任務をすぐに終わらせて山城がいるであろう戦艦寮へと足を運んだ。
その際に扶桑が私が来ることを時雨に聞いたのだろう山城の部屋の前で待っていた。

「提督…。山城の事、よろしくお願いしますね…」
「ああ。わかったよ、扶桑」
「はい」

それで扶桑は笑顔を浮かべて自身の部屋へと戻っていった。
それと同時に榛名も姿を現す。

《提督、きっと山城さんは悩んでいるんだと思います。
最初のケッコンカッコカリの自分は本当に愛されているのかと…》
「ああ。だから今一度私は彼女に思いを伝えようと思う。辛かったら隠れていてもいいんだぞ、榛名?」
《いえ、大丈夫です。当時の事を思い出せば私は彼女に勝負に負けてしまったんですから》
「そうか」

それで私は山城の部屋の扉をノックする。
すると中から少し顔色が悪い山城が姿を現した。

「…提督? それに榛名も…なにかご用ですか?」
「ああ、山城。今日は君に今一度誓いたい事があってやってきたんだ」
「そうですか。まぁ、なんにもありませんが部屋に入ってください」
「ありがとう」

そして山城の部屋に入れてもらい椅子に腰かける。

「それで、ご用というのは…?」
「山城。最近君は調子が悪いそうじゃないか。時雨から聞いたよ」
「そうですか…。まったくあの子は」
「時雨の事を悪く思わないでくれ。君の事を心配しての相談だったんだから」
「わかっています」
「それで考えた末にまだ君にこの世界に来てから思いを伝えていない事を思い至ったものでな」
「提督の思いですか…?」
「うん。覚えているか…? まだ誰ともケッコンカッコカリしていなかった時に私は榛名と君の事をこうして口に出すと恥ずかしくなってくるけど…二人を好きになっていたんだ」
「提督…」
《提督…》

それで山城と榛名が同時に顔を赤くする。

「それでどちらに最初に指輪を贈るか迷った時に私はある事をした。
毎日朝と夜で旗艦を交換して演習を行って先に練度が達した方とケッコンするって」
「でも、私には扶桑姉様という心に決めた人が…」
「それはもう聞いたよ。でもいいんだ。それでも勝負に勝って最初に指輪を贈ったのは間違いなく君なんだから」
「………」

それで顔を赤くさせて無言で俯いてしまった山城。

「…なんで、こんな私を選んでくれたんですか? 榛名でもよかったでしょう? こんな不幸な私を選んでも何の得にもなりませんよ」
「不幸とかそんな事は関係なく好きになったんだ。山城が魅力的な女性だったから私も指輪を贈れたんだ」
「でも…」

まだなにかと理由付けをしようとする山城に榛名が話しかけた。

《山城さん。素直に提督の気持ちを受け取ってください。
そうじゃないと勝負に負けてしまった私が惨めじゃないですか》
「あ、榛名…そんなつもりは…」
《はい。わかっています。でも、私も提督の事が大好きです。ですから山城さんも素直になってもらいたいんです》

榛名も恥ずかしい事を言ってくれる。
一体化してしまっているからなんとなくだけど榛名の気持ちも流れ込んでくるから余計に恥ずかしいんだよな。

「…提督。私を最初に選んで後悔していないんですね?」
「ああ。それは断言できる」
「でしたら、でしたら…私の事も守ってくださいね?」
「うん。守るよ…約束する」
「ああ…安心しました」

そう言って山城はそこで初めて笑みを見せた。

「うん。やっぱり山城は笑顔を見せてると可愛いな」
「ばっ!? 調子に乗らないでください!…ああもう、こんな醜態を見せてしまうなんてやっぱり不幸だわ…」

そう言いながらももう山城からは気負いは感じられなかった。
それで一件落着して時雨にもその件で話したら「よかった」と笑顔を浮かべてくれたからよかった。


 
 

 
後書き
気になっていた人も何人かいたようですがうちの最初の嫁艦は山城です。

Twitterでよく練度上から六人で焼き肉に行くというお題がありますがギリギリ連れていけますね。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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