真田十勇士
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巻ノ八十七 佐々木小次郎その一
巻ノ八十七 佐々木小次郎
その男佐々木小次郎は宮本と幸村そして根津の前に案内されるとだ、まずは宮本を見て不敵な笑みを浮かべて言った。
「ははは、やはりな」
「うむ、わしは今ここにおる」
「気配でわかったわ」
佐々木は宮本に笑って言うのだった。
「貴殿がおるとな」
「わしも貴殿が来ると思っておった」
宮本も佐々木に笑って言う。
「ここでも会うとな」
「それだけ我等の縁が強いということだな」
「そうだな、しかし」
「お互い会いたくて会っておる訳ではないしな」
「嬉しくはない」
「全くだ」
こう二人で言い合うのだった、だが二人は笑ったままだった。
そしてだ、宮本は佐々木を手で指し示しつつ幸村達に彼を紹介した。
「この者がです」
「佐々木小次郎殿ですな」
「それがしが先程お話した」
「そうなのですな」
「はい」
まさにというのだ。
「そうなのです」
「その背中の刀をですな」
「これがそれがしの得物です」
佐々木は幸村にも語った。
「この刀を使った剣術は天下一ですぞ」
「何を言う、わしの二刀流が天下一じゃ」
宮本は佐々木に対抗する様に言った。
「御主のその刀ではじゃ」
「勝てぬというのじゃな」
「最後に勝つのはわしじゃ」
「それはわしじゃ」
「ではここでそれを確かめるか」
「決着をつけるか」
「そうするか」
お互いに不敵な笑みを浮かべて言い合う、しかしだった。
その二人にだ、幸村は笑って言った。
「いやいや、ここで決着をつけてもいいでしょうが」
「よりよき場がある」
「我等がそうすべき場所は」
「そう思いまする、どうもお二人には決着をつけられる場所もです」
「そうした場があるので」
「今はですか」
「はい、自重されてはどうでしょうか」
こう二人に言うのだった。
「今は」
「ふむ、貴殿がそう言われるのら」
「それならば」
宮本も佐々木も幸村の穏やかだが威厳があり諭す様な口調を受けて矛を収めようと思った。不思議と幸村の言葉にそうしたものを感じてだ。
幸村にだ、こうそれぞれ言ったのだった。
「その様に致します」
「今は」
「その様にして頂けますと」
「それでなのですが」
今度は根津が佐々木に声をかけた。
「佐々木殿の剣は」
「はい、何か」
「一度見てみたいのですが」
「手合わせをですか」
「お願いしたいのですが」
「はい、それでは」
佐々木は笑って根津に応えた、そうしようとしたがここでだった。
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