【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。
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0008話『幕間 提督の話し合い』
前書き
更新します。
今回は少し独断と偏見の内容が含まれます。
榛名提督が歓迎会という名の宴をしている頃、久保提督は柳葉大将へと電話で話をしていた。
「…―――という事がありまして、なんとか和平交渉はできそうです」
『そうか。それを聞いて安心した。
…しかし、異世界の提督で榛名に宿ってしまった、か。なかなか興味深い話だな…』
「はい。私も驚かされました。ですが悪い方ではないという事はしっかりと確認は取れました。
あんなに艦娘達の事を愛している提督も昨今では珍しいと思います」
『そうか…。それで色々と話を聞いたようだが、そのだな。大和型の練度はどれくらいかは聞いたかね?
私達の世界の常識では大和型は練度は十にも満たずにすり潰されることが多いからな…』
それで柳葉大将は少々声のトーンを落とす。
それは電話越しに聞いていた久保提督も分かったのだろう。
今のこの世界の情勢を嘆きながらも気持ちを入れ替えて、
「はい。聞き及んでいます」
『それで、どうなのだ…?』
「はい。大和、武蔵両名とも練度は90らしいです」
『なん、だと…? それは本当の事なのか…?』
「はい。あちらが嘘を言っていなければですが」
『それが本当なら大事だぞ、久保少佐。かの横須賀鎮守府の最高練度の艦娘は誰か聞き及んでいるかね?』
「い、いえ…聞いたことがありませんが、そこのところはどうなのですか?」
『はぁー…そうか』
柳葉大将は深い息を吐きながらも、
『ならば教えてあげよう。
必死に深海棲艦との戦いで海戦を潜り抜けて生き残ってきた武勲艦である戦艦長門はそれでも90だというらしい。
それ以外は激戦故に沈んでしまう事が多く、そこまで達したものはなかなかいないと聞く…。
過去に何度か99上限を超えて提督と絆を結んでさらに高みに進んだ艦娘も数人いるらしい。
だが、今は歳を取り提督業ができなくなった提督と一緒に引退して軍には所属しないで田舎で隠居しているという話だ』
「そうなのですか…。そうなると榛名提督は凄いのですね」
『凄い…? なにがだね?』
「はい。その大将の話を鵜呑みにするのならとても信じられませんが榛名提督の鎮守府の艦娘達は150人以上が練度が70を超えていて、さらには絆を結んで上限を突破した艦娘は約50人はいるとか…」
その久保提督の発言を聞いて受話器越しに息を呑む柳葉大将の声が聞こえてきたのを久保提督は感じた。
それほどに信じられないのだろうと久保提督は思った。
当然だ。
そこまで練度を上げるためにどれだけの年月と苦労と犠牲を払わなければいけないのか気が遠くなる話だ。
「あと、榛名提督が言うには自身よりもっと上級の提督が上にはたくさんいると聞きました。
なんの隠語か分かりませんがランカーや甲提督と呼ばれる提督達は絆を結ぶ結ばないにしても練度が上限に達しているのはざらではないという話です」
『まさか…。その榛名提督の世界の提督達は化け物か!?』
「まず普通ではないかと…」
二人は会話をしながらもかの世界では提督と呼ばれる集団は変態ぞろいなのだろうなという感想を抱いた。
実際は艦これというゲームはただのやりこみゲームだから資材が許す限りレベル上げをすればいいし、他にも廃課金者ならおそらくはそれくらい普通なのだろう。
だがこの世界では大破したら撤退すれば轟沈しないという概念はない。
大破ストッパーはあるにはあるが、当たりどころが悪ければ無傷状態からでも轟沈はありえるのだ。
そしてもし大破撤退できても帰りの航路で潜水艦に狙われるかもしれないからだ。
ここでゲームと現実のズレが起きている事などまだ気づいていない。
これはさて、まだこの世界の現実の常識を知らない榛名提督はどう感じるのか…。
『…まず話し合いが必要だろうな。あちらとこちらの常識がもしずれていたら榛名提督はきっと痛い目を見ることになる…』
「はい。それには私も同意します。榛名提督はこの世界の常識を多分ですがまるで知らない。だからゆえに現状は危険です」
『そしてそんな大勢力の鎮守府だからこそ闇の組織に狙われる可能性も視野に入れておいた方がいいだろう。
まだ今は情報は他の鎮守府には通達していないがこれが日本中に知れ渡れば大事になる事は間違いない。
この世界には榛名提督のように艦娘を愛している提督ばかりではない。
我々の窮地を助けてくれている艦娘をただの兵器として運用している所謂ブラック鎮守府とブラック提督という存在の噂があるという。
そんな輩どもにいざという時に協力しようと言われてそれを榛名提督が鵜呑みにして捨て駒などにされてしまったら異世界からという点も含めて我らは貴重で、そして大事な戦友を失うかもしれない』
「はい…」
『そして最悪な事態は榛名提督がもし暗殺や他にもやり様はいくらでもあるが殺されでもしてみろ…?
榛名提督が説得するまで大和型まで表に出て警戒していた艦娘達は一斉に我らに牙を向けるだろう』
久保提督はそれを想定してすぐに顔を青くしたのは言うまでもない。
断片的な情報からでも潜水艦の人数は40隻は超えているというから海の中から問答無用で魚雷で狙い撃たれたら確かに榛名提督の言うようにお陀仏だろう。
さらには確認はしなかったが他にも空母系の艦娘達もおそらく高練度だから空から空襲でもされたらそれこそ国の被害は甚大になってしまう。
それで久保提督は体を震わせながらも、
「…もし、よろしければ私が榛名提督にこの世界の常識を教える任を受けても構いませんでしょうか?
まだまだ提督としては新米の我が身ですが、これでも今年の海軍学校を男子を抜いて首席で卒業しましたから必ずお力になれると具申します」
『構わない。君の成績は私も知っているからな。安心できる。ただし、一回榛名提督との会談を設けようと思う。私も一回会わねば信用されないだろうからな』
「わかりました。早速明日か明後日にでも榛名提督のもとへと向かいましょう」
『うむ、そうだな』
「それに榛名提督が言うには燃料や弾薬と言った資材は十分にあるがそれでも数は有限だからいずれは枯渇してしまうだろうと言っていました。
そして他にもおそらく食料や水などの備蓄関係であちらの世界から着の身着のままで来てしまったのですから、ライフラインを確保するのも第一かと。
連絡をするだけで一々艦娘を派遣するなど非効率で原始的すぎますから」
『うむ…君は確かに優秀だな。そこまで考えているとは…。
あい分かった。
榛名提督と会談を設けた後は電気やガス、水と言った諸々の施設などを設ける工事でもするとしよう。
今頃はあちらもその問題に直面していると思うからな』
「おそらくは…」
久保提督と柳葉大将が想像しているのだろう二人して電話越しに唸っていた。
…二人の想像通りに翌朝、宴会の後始末をしながらも、
「…さて。ではこれからこの世界で暮らしていく上で大事な事がある」
私は今現状の鎮守府の状況を執務室で大淀に聞きながらも唸っていた。
「はい提督。現状は厳しいものがありますね。電気に関しては自家発電施設が存在しますが水やガス、他にも消耗品と言ったものがあらかた不足気味です」
「そうなんだよなぁ…昨夜は宴会とかやったけどあれですら厳しいものだったんだろう?」
「はい…それで主に駆逐艦の子達からトイレやお風呂などの施設がまともに使えなくて不満の声が上がっています」
「だろうな。これは早急に久保提督と話をしないとまずいかもしれないな」
「はい」
それで私と大淀は大きなため息を吐くのであった。
【工廠の妖精達と話し合って無断でライフラインを確保しましょうか? やろうとおもえば一日で整備できますが…】
「それだけはやめてください。せめて了承を得てからでお願いします」
「そうです。余計な火種を起こすのだけはやめてください」
妖精さんの発言は当然却下されたのは当然の事だった。
後書き
こうやってたまに提督達も絡ませていこうと思います。
それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
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